健康ア・ラ・カルト

【8)内分泌疾患】  5)橋本病の治療後多汗に

質問

60代の主婦ですが、40代のころに慢性甲状腺(せん)炎(橋本病)と診断され、通院治療でよくなりました。その後、驚くほど汗が出るようになりました。医師からは副作用ではないといわれています。最近血圧は正常ですが、多汗は相変わらず続いています。多汗症は甲状腺ホルモンのバランスが崩れることと関係すると聞いています。どのような治療をすればよいのでしょうか。

回答

◎甲状腺ホルモン剤は適量か

多汗は多少体質によるところもありますが、どうき、息切れ、手指振戦、やせ、口渇、軟便、微熱などとともに甲状腺ホルモン過剰症(甲状腺機能亢(こう)進症)による症状の一つでもあります。40代のころ、橋本病の治療開始後の多汗ということですから、いくつかの原因が考えられます。

最も考えやすいのは、橋本病による甲状腺機能低下症治療あるいは甲状腺腫(しゅ)縮小を目的として用いられている甲状腺ホルモン剤の投与量が多い可能性です。その場合は減量が必要です。

次いで、まれな現象ですが、慢性甲状腺炎の急性増悪が周期的に発症し、その都度甲状腺中毒症をきたしている可能性、あるいはバセドウ病による甲状腺機能亢進症に移行した可能性などが考えられますが、これらは特殊な治療が必要です。

その他、多汗の原因として自律神経異常、感情不安、興奮、微熱(感染症など)、褐色細胞腫などを考える必要があり、いずれにしても、まずは内科、特に内分泌科の受診をお勧めします。

(鳥取大学医学部第一内科・重政千秋)