健康ア・ラ・カルト

【16)耳・鼻・のど】  4)慢性中耳炎

質問

51歳の女性です。昨年11月、総合病院で慢性中耳炎と診断されました。「長くかかるが、手術をしなくてもよくなるでしょう」といわれ、約1カ月間治療を受けたあと、個人医院に通院しております。

しかし、通院9カ月になりますが、いまだに耳だれが出たり止まったりする状態がつづいています。なぜこんなに治りにくいのか、また、内部への影響はないのか、このまま治療を続けていればよいのか、教えて下さい。

回答

◎慢性化の要因を明らかに

慢性中耳炎の病態は千差万別で、その対応の仕方にも違いがあります。一般的には鼓室内に炎症性破壊性病変を伴い、鼓膜には穿孔(せんこう)があって、それを通して鼓室内の分泌物や膿(のう)汁が外耳道に流れ出ている状態をいい、その分泌物を耳漏(じろう)といいます。

慢性中耳炎の中には、耳漏が絶えず出ているものから、ほとんど自覚しない程度のものまで種々あります。耳漏が存続するということは、鼓室内や乳突洞に炎症病変が存在することを意味し、中耳内病変の性質を判別するのに大きな役割を果たしています。

慢性炎症の発生における大きな原因の一つに、含気蜂(ほう)巣の発育が悪いことがあげられます(図1)。また、中耳腔(くう)粘膜からは分泌がおこっており、乳突洞、上鼓室、鼓室、耳管、上咽頭(いんとう)と粘液が流れています(図2)。

細菌感染などで炎症病変がおこると、その流れが途中で遮断されたり、流れがゆるくなったりします。この時期に適切な治療を施さないと、炎症は長期化し、局所は乾燥せず、表皮化が遅れ、一部に肉芽を発生させ病変は進行して行きます。

炎症が慢性化、難治化する因子としては、耐性菌の出現、混合性感染(2種類以上の細菌の感染)、真菌の感染、免疫アレルギーによる体質的なものなどが考えられます。

慢性中耳炎から合併症をひきおこす例は過去には多く見受けられましたが、近年では抗生剤の進歩で非常に少なくなりました。単純性慢性中耳炎は軽快、増悪をくり返すことが多く、生命の危険は少ないのですが、真珠腫(しゅ)性中耳炎では、いまだに種々の合併症の危険があります。

治療上基本的なことは、細菌検査および薬剤感受性検査成績に従って有効な薬剤を選択し、全身的、局所的投与を行い、乾燥耳にすることです。保存的治療で完全に治癒し、通院を必要としなくなる例は多くありません。

結論的には感染の慢性化の要因を明らかにし、乾燥耳にして病態を非活動化させる保存的治療が先決で、再発再燃を繰り返すもの、悪化するものは手術的治療が必要となります。9カ月にも及ぶ長い経過ですので、今一度、総合病院で精査を受けられることをお勧めします。

(鳥取県立中央病院耳鼻咽喉科・太田原舜一)