健康ア・ラ・カルト

【6)消化器疾患】  4)慢性の下痢

質問

平成7年2月ごろから、3~4日おきに下痢便が2~3日続き、ある病院で飲み薬を頂き飲んでいるのですが、なかなか回復しません。どのように生活をしていけばよいのでしょうか。なお、その病院で4月~5月に胃の内視鏡検査、大腸内視鏡検査、腹部超音波検査、いろいろな血液検査などを受け、特に異常ないと言われております。また10年来、ほかの病院の精神科に、自分の健康状態が大変気になる症状で通院し、現在、精神安定剤を内服中です。最近は腸の働きを良くする薬も頂くようになっております。

回答

◎過敏性腸症候群

慢性の下痢をきたす病気には、腸や胃の炎症を伴う疾患(種々の感染症、特発性炎症性腸疾患、食物アレルギーなど)や腫瘍(しゅよう)、膵臓、肝臓の炎症や腫瘍、骨盤腔内の疾患、甲状腺や消化管のホルモン分泌異常をきたす疾患、その他、たくさんの疾患があります。

しかし、一方でこのような特別な異常を認めないにもかかわらず、大腸・小腸の機能的障害により、下痢や腹部のさまざまな症状をきたす疾患があります。その代表的なものに過敏性腸症候群があります。

お手紙だけでは断定しかねますが、病気でいろいろな検査を受けられ、異常ないとのことであり、また長期間下痢が続いている割に全身状態が良さそうなこと、少し繊細そうな方であると思われる点などから、過敏性腸症候群が一番考えられます。

この症候群は、ストレスをはじめとする心因的要因により自律神経の失調をきたし、主に腸管の機能亢(こう)進による便通異常(下痢、便秘、腹痛など)をおこす疾患です。治療は、(1)食事療法(刺激物や消化の悪い物を避け、豆・芋などのガス産生食品も控えめにする)(2)薬物療法(精神安定剤や消化管運動を調節する薬など)(3)精神療法などが併せて行われます。

お手紙を拝見しますと、主治医の先生もこの疾患を考えられ、すでに投薬も行われているようです。この疾患の場合、精神療法も治療の中心となりますが、前で述べさせて頂いたように、下痢をきたす疾患はほかにもありますので、通院しておられる内科の先生と精神科の先生との間でよく連絡をとって頂きながら、治療を受けてください。いずれにしても、あまり心配なさらずに治療を続けられるのが良いと思います。

(鳥取市立病院内科・松下公紀)