健康ア・ラ・カルト

【16)耳・鼻・のど】  3)鼓膜穿孔

質問

60年前穿孔(せんこう)性中耳炎と診断されました。人工鼓膜は装着可能でしょうか。手術に何日ぐらいかかりますか。手術後の不都合はありませんか。また、年齢的制限はありませんか。

回答

◎人工鼓膜は装着可能か

結論から申しますと、人工鼓膜はゴムのような膜を用いて鼓膜の穿孔部を閉鎖するもので、簡単に装着できますから手術の必要も年齢制限もありません。しかし、人工鼓膜を時々交換する必要がありますし、水泳は勧められません。一方、鼓膜穿孔を閉鎖する手術は、最近では入院をせず、外来手術も可能となりました。しかし、鼓膜穿孔が大きい場合には入院手術が確実で、10日前後の入院が必要です。体に負担のかかる手術ではありませんので、特に年齢制限はありませんが、全身的な病気をお持ちの場合は主治医とよく相談して下さい。水泳も可能となります。ただし耳漏(ろう)がある場合、人工鼓膜を入れてはいけませんし、鼓膜のみを閉鎖する手術とは別の手術法が必要です。

さて、鼓膜穿孔を閉鎖すれば聴力が改善するかというと、必ずしもそうはいきません。人は年齢と共に聴力低下を起こします。内耳にある「音の振動→電気信号への変換器」である蝸牛(かぎゅう)という器官が年齢的変化を起こし弱ってしまうためです。個人差はありますが、だれにでも起こります。また騒音、全身的な病気、ある種の薬物などの原因や、突発的に原因不明で起こることもあります。鼓膜に穿孔があるとその大きさに比例して聴こえが悪くなりますが、蝸牛の能力が正常なら鼓膜穿孔を閉鎖すれば聴力は正常になります。蝸牛に年齢的変化が起こっている場合、鼓膜穿孔があればさらに聴力が低下しますが、鼓膜穿孔を閉鎖すれば蝸牛の能力までは聴力改善の可能性があります。蝸牛の年齢的変化が大きい場合や、鼓膜の振動を伝える耳小骨の連鎖に問題がある場合には鼓膜穿孔を閉鎖しても実用的な聴力が得られない場合もありますので、満足できる聴力改善が得られるかどうか耳鼻咽喉科で検査をする必要があります。

(山陰労災病院耳鼻咽喉科・杉原三郎)