肺気腫(しゅ)、慢性気管支炎などによる呼吸不全に対するリハビリテーションのひとつとして、腹式呼吸などの肺理学療法が有効であるとのことですが、この肺理学療法について具体的にお教え下さい。また、指導を受けたいと思いますが、どのような手続きが必要でしょうか。
◎腹式呼吸などの肺理学療法
慢性呼吸器疾患のリハビリテーションは、原疾患の進展悪化の阻止と残された呼吸機能の効果的な活用、衰えた体力と気力の改善、家庭生活や社会生活への復帰とその維持などを目標として、患者さん及び家族に対する教育と指導、肺理学療法、在宅酸素療法、運動療法、外来での継続管理などをその内容とします。
このなかの肺理学療法には、腹式呼吸や口すぼめ呼吸などの呼吸訓練と、気道クリーニング法があります。
まず呼吸訓練についてですが、肺気腫などの気道閉塞(へいそく)の強い疾患では肺の過膨張が起こり、呼吸をするために最も重要な筋肉である横隔膜が腹側に押し下げられ、その動きが制限されます。そのために、浅い呼吸を頻回に行うようになります。この浅くて速い呼吸は体内への酸素の取り込みから見れば、非常に効果の悪い呼吸の仕方です。腹式呼吸は腹をふくらませることによって横隔膜を下方に下げて息を吸い、ついで腹筋の緊張をゆるめてゆっくり横隔膜を挙上させながら息を吐き出すことによって、効率の良い呼吸パターンとするものです。
また、口すぼめ呼吸は、口をすぼめてゆっくり息を吐き出すことにより口腔(くう)内に抵抗を作り、気管支の虚脱を少なくし、息を吐き出しやすくする呼吸法です。
つぎに痰(たん)の多い患者さんの場合には、ねばい痰の気管支内での貯留は気管支の閉塞を引き起こし、体内への酸素の取り込みを悪くしたり、二次的な細菌感染を引き起こしたりします。これを防止するために薬剤の吸入を行ったり、体位変換や体の外から肺に振動を与えることによって痰を効率良く出し、気道をきれいにしておくことが必要です。これを気道クリーニングと言います。
以上の肺理学療法は原疾患やその重症度によって若干の適応の違いがありますので、かかりつけの主治医に良く相談され、必要があれば病院の内科呼吸器外来や理学療法部に紹介してもらうことをお勧めします。
(鳥取赤十字病院内科・山本光信)