健康ア・ラ・カルト

【2)脳と神経】  8)パーキンソン病

質問

72歳の女性。4年前から右手がふるえだし、パーキンソン病といわれて薬をのんでいます。しかし、ふるえがなかなか止まらず困っています。手術する方法もあるそうですがパーキンソン病の治療について教えて下さい。

回答

◎治療の主体は薬物療法

パーキンソン病は中高年者の病気ですが、まれな病気ではなく、鳥取大学脳神経内科の最近の調査では、患者は人口10万人あたり約100 人程度で、 鳥取県下には約500人以上の患者さんがおられるものと推定されます。病気の原因は不明ですが、今のところパーキンソン病になりやすい体質をもった人が、神経系に有害な物質にさらされると発病するのではないかとの説が有力です。遺伝したり伝染したりする病気ではありません。

パーキンソン病は脳の病気です。脳の深部に中脳というところがありますが、そこの神経細胞が減少、消失していき、ドパミンという神経伝達物質(神経の命令を伝える物質)が欠乏してさまざまな症状を引き起こします。

主な症状は、手足のふるえ、動作が鈍くなり表情が乏しくなる、筋肉がこわばる、歩くときの姿勢が前かがみで、手の振りが少なくなり歩幅が小さくなるなどです。

治療の主体は薬物療法で、欠乏したドパミンを補給するためレボドパという、服用すると体内でドパミンに変化する薬が治療の中心です。その他、レボドパの働きを強めたり、他の神経伝達物質を調節する薬が補助的に用いられます。薬の効きかたには個人差があり、副作用が出ることもありますので上手に薬のさじ加減することが私たちの神経内科医の仕事です。

大多数の患者さんは薬で何とかなりますが、あなたのように薬があまり効かず、ふるえがあまりにもひどいときには手術を考慮します。脳定位手術といって頭蓋骨に小さな穴を開け、そこから細長い針を入れ、ふるえを引き起こす脳のごく小さな部分を電気で凝固したり、電気刺激を加える方法がありますが、しばしば劇的な効果があります。この脳定位手術は県下では鳥取大学脳神経外科が手掛けており、よい成績をあげています。

この他、脳移植といって患者の脳に患者自身の副腎(ふくじん)組織や頚(けい)部交感神経節の組織、胎児の脳組織などを注入する方法もありますが、まだ効果が十分確かめられていませんし、倫理的な問題もあり、一般的な方法ではありません。近い将来、遺伝子工学を用いてドパミンを産生する細胞を作って培養し、患者の脳に注入する方法が開発されるかもしれません。

(山陰労災病院神経内科・原田英昭)