健康ア・ラ・カルト

【2)脳と神経】  7)半身不随

質問

半身不随について、原因、治療法をお聞かせ下さい。この症状は治らないものでしょうか。

症状にかかってしまった場合の食事や日ごろ心がけるべきことがらについて、また、回復方法をお教え下さい。

回答

◎原因の多くは神経内科疾患

左右どちらか一方の上肢(手と腕)と下肢(足)が動かなくなることを一般的に半身不随、専門用語としては片麻痺(まひ)と表現します。その原因としては脳出血と脳梗塞(こうそく)があげられます。脳梗塞は、さらに脳血栓と脳塞栓(そくせん)に分けることができます。動脈硬化のため脳の血管そのものが詰まるのが脳血栓で、心房細動などの不整脈が原因で、心臓に生じた血の塊(血栓)が脳へ流れて詰まるのが脳塞栓です。神経細胞が障害され、結果として麻痺を生じます。通常、右の脳が障害されると反対の左半身の麻痺を生じます。発症直後には、神経障害の広がりを防ぐ治療が主体となりますが、その後は機能訓練(リハビリテーション)を行います。つまり、内服薬や注射などによって麻痺がなくなるというわけではないのです。訓練によって生き残った神経細胞を刺激し、麻痺の改善を期待するわけです。われわれ神経内科医は患者さんの麻痺の程度とその後のリハビリテーションの結果より、麻痺の回復予想を行います。しかし回復は少しずつ続きますので、あきらめずに訓練を続けることをお勧めします。

脳血管障害の原因となる要因をわれわれは危険因子(リスクファクター)と呼んでいます。その一つである年齢はどうすることもできませんが、例えば高血圧は降圧剤の内服によりコントロール可能です。糖尿病、高脂血症(血中のコレステロールが高い)、不整脈などの危険因子も治療可能です。肥満、喫煙も当然危険因子です。いずれもすでに病気になった人でも必要な予防です。なぜなら脳梗塞も脳出血も再発の可能性があるからです。脳梗塞の場合には、さらに積極的な予防薬として抗血小板剤の投与を行います。最後に半身不随の原因は、他にもたくさんありますので、一度は神経内科専門医の診察を受けられ、今後の予防および治療を相談してみてください。

(鳥取大学医学部脳神経内科・荒賀 茂)