健康ア・ラ・カルト

【1)加齢と病気】  7)入浴時、体をゴシゴシこすってはダメ?

質問

数年来、おふろの時ナイロンタオルを愛用しています。これだと垢(あか)がよくおちるような気がして、気分がよいのです。しかし、先日ナイロンタオルを使って体をゴシゴシするのはよくないと聞きました。本当でしょうか。

回答

◎体の洗い方

ナイロンタオルは約20年前に一般市場で発売されて以来、その使用感のよさから現在でも多くの家庭で愛用されています。しかし、ナイロンタオルは皮膚科の立場からは決してお勧めできません。

いまから十数年前、全国的に鎖骨、ろっ骨、肩甲骨、頚項(けいこう)、脊椎(せきつい)、四肢外側などの骨の突出部位が黒ずんでくる人が多発しました。当初は原因がよくわからず診療に苦慮しました。現在ではナイロンタオル黒皮症または摩擦黒皮症と呼ばれ、ナイロンタオル、タワシなどの慢性の機械的刺激が原因であることがはっきりしています。統計的にみると20歳~50歳、やせ形、6~10年くらいの使用期間の方に多いようです。現在でもきわめてよく見る皮膚疾患のひとつです。

もう一つ大きな問題があります。皮膚は皮脂膜と呼ばれる脂肪の膜で覆われています。水分の蒸発を防ぎ、皮膚に水分を保つ働きがあります。この皮脂膜がうまく作られなかったり、取り除かれたりすると、水分が蒸発し皮膚は乾燥してきます。もともと子供や高齢者、アトピー体質の方は皮脂の分泌が十分でないため皮膚は乾燥しやすいのです。皮膚は乾燥するとかゆくなりますし、色々な皮膚疾患が誘発されます。ナイロンタオル、タワシ、ボディブラシ、織り目のあらいタオルなどでゴシゴシするとこの皮脂膜が簡単にとれてしまいます。このような理由で皮膚の乾燥しやすい人はナイロンタオル等は顔、体には使わないで、使うとすれば足の裏、かかとなどに限られるほうがいでしょう。手のひら、ガーゼ、柔らかいタオル、スポンジ(バイ菌が増殖しやすいので使用後はよく乾燥させること)などでやさしく洗ってください。皮膚の汚れはこれで十分落とせます。ほかにも気をつけたいことは、石けん分をしっかり洗い流すこと、体をふくときは、軽くおさえるようにしてください。また乾燥した部位には、乳液、保湿クリームなどをうすく塗っておくといいでしょう。

(東部医師会員・神戸直登)