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「労働基準関係法制研究会報告書」(2025年1月)の論点~医療機関への影響を中心に、早期に取り組むべき事項を解説~
2025年1月に公表された「労働基準関係法制研究会報告書」は、労働基準法の抜本的見直しに向けた中間的な方向性を示した重要な報告書です。報告書では、働き方改革関連法施行後の課題を踏まえ、「労働者の健康確保」と「多様な働き方への対応」を基本理念として制度改正の方向性が示されました。特に医療機関は、医師の働き方改革や看護師等の人材不足を背景として、今後の法改正の影響を大きく受ける業種と考えられます。以下では、報告書の中でも比較的早期に制度改正が検討される可能性が高い事項について、医療関係者にも分かりやすく解説します。
1 長時間労働の規制に関する論点
報告書では、過重労働防止をさらに強化する方向性が示されています。
(1)勤務間インターバル制度の義務化
現行制度では企業の努力義務ですが、将来的には法的義務化を視野に検討するとされています。勤務終了から次の勤務開始まで一定時間(例:11時間)を確保する制度です。
<医療機関への影響>
医師、看護師では夜勤や宿日直勤務が多く、勤務終了後すぐに次の勤務となるケースがあります。
例えば、
などは見直しが必要になる可能性があります。
(2)14日以上の連続勤務の防止
報告書では、労働者が長期間連続勤務となることを防ぐ制度整備を提案しています。
現在でも週1日の休日付与義務がありますが、「休日の配置」によっては長期間連続勤務となる場合があります。今後は、連続勤務日数そのものを規制する方向が示されています。
<医療機関への影響>
医療機関では、年末年始 、感染症流行期 、人員不足 などで連続勤務が発生しやすいため、勤務シフトの見直しが必要になる可能性があります。
(3)36協定・労働時間情報の開示
企業が、時間外労働時間 、健康管理状況 などをより積極的に公表・把握する制度も検討課題となっています。
医療機関では、医師、 看護師 、コメディカル ごとの労働時間管理の精度向上が求められるでしょう。
2 法定労働時間44時間特例の見直し
現在、常時10人未満の一部業種では週44時間制が認められています。報告書では、この特例措置について廃止を含め検討するとされています。
<医療機関への影響>
小規模診療所では、週44時間勤務、 土曜半日診療 などが多く採用されています。特例が廃止された場合、週40時間制への対応が必要となり、人員増加 、シフト変更、 人件費の増加 が予想されます。
3 副業・兼業時の割増賃金
現在は、複数事業場の労働時間を通算して割増賃金を計算する制度となっています。
しかし、医療現場では、医師の非常勤勤務、看護師のダブルワークなどが多く、実務上極めて複雑です。報告書では、企業側の管理負担を軽減する方向で制度見直しを検討するとしています。
<医療機関への影響>
例えば、常勤病院勤務後に夜間アルバイトを行う医師では、労働時間通算の問題が簡素化される可能性があります。
4 年次有給休暇取得時の賃金算定方法
現在、有給休暇取得日の賃金は、通常賃金、平均賃金、健康保険標準報酬日額など複数の方法があります。報告書では、制度の分かりにくさを解消するため、算定方法の整理・簡素化が検討されています。
<医療機関への影響>
医療機関では、夜勤手当や各種手当が多いため、給与計算実務が簡素化される可能性があります。
5 テレワーク・つながらない権利
ICT化が進み、医師や管理職が休日でもメール・チャット対応するケースが増えています。
報告書では、勤務時間外の業務指示や連絡について「つながらない権利」の考え方を整理すべきとしています。
<医療機関への影響>
例えば、LINEでの勤務依頼、夜間メール確認、休日のオンライン会議などについて、労働時間該当性の整理が進む可能性があります。
6 過半数代表制度の見直し
報告書では、36協定などを締結する過半数代表者について、選出方法、独立性、使用者からの支援を法的に整理する必要性が示されています。
医療機関でも、労働組合がない病院では代表者選出方法を見直す必要が生じる可能性があります。
医療機関が今から準備すべきこと
医療機関では、次の対応を進めることが望まれます。
まとめ
今回の研究会報告書は、直ちに法改正を行うものではありませんが、今後の労働政策審議会での具体的な制度設計の土台となる重要な文書です。特に、長時間労働対策(勤務間インターバル、連続勤務規制)、44時間特例の見直し、副業・兼業時の労働時間管理、有給休暇制度の整理は、比較的早期に制度化が検討される可能性が高い論点です。医療機関は24時間365日体制という特性から、これらの改正による影響が他業種よりも大きくなることが予想されます。そのため、人員配置や勤務シフト、勤怠管理、給与計算の各制度をあらかじめ点検し、将来の法改正に備えておくことが重要です。
根拠資料(公式)
(今回の担当 医療労務管理アドバイザー 安木淳一 社会保険労務士)