鳥取県医療勤務環境改善支援センター

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第87回勤改センター通信「最低賃金引上げ動向と持続的な賃金引上げ対策のすすめ」

 

「最低賃金引上げ動向と持続的な賃金引上げ対策のすすめ」

1.はじめに

近年、医療現場では人材確保が大きな課題となっています。全国的に最低賃金の引上げが進められる中、人材の定着を図りつつ経営を安定させるための賃金対策の重要性が増しています。今回は、最低賃金引上げの動向とともに、医療現場で実践されている具体的な賃上げ対策を紹介し、持続的な対策の検討を提案します。

2.最低賃金引上げの現状

2025年の最低賃金審議は本格化しており、2020年代に全国平均で時給1,500円を目標とする政府方針のもと、地方でも相当な引上げが見込まれます。鳥取県の2024年度最低賃金は957円(前年比+57円)で、今年の10月からは、73円アップの1,030円に改正される見込みです(9月時点)。

3.病院経営と賃金引上げの必要性

医療機関では慢性的な人手不足が続いており、賃金水準の引上げは人材の確保・離職防止のために不可欠です。賃金の維持・向上は、経営の安定と医療サービスの質向上にも直結します。特に医療現場では、職員の定着が患者ケア・安全にも大きく影響するため、計画的な賃上げが求められます。また、病院経営においても大きな経営課題と考えられます。

4.実際に病院が実践している賃金引上げ対策例

病院経営における具体的な賃金引上げ策として、以下のような実践が広がっています。

① 診療報酬改定を活用した賃上げ

2024年度以降新設された「ベースアップ評価料」などを活用し、看護職員や薬剤師など多職種の月額賃金を2~2.5%程度引き上げている事例が多くみられます。診療報酬増加分を原資に、ベースアップや特別手当の充実も可。

② 業務改善助成金などの活用

国の助成金制度を活用し、賃上げ原資の確保と職場環境の整備を同時に進めている現場が増加しています。賃上げの助成金としては、「業務改善助成金」「働き方改革推進支援助成金」「キャリアアップ助成金」などがあります。

③ 賃金制度・評価制度の見直し

キャリアや技能に応じた賃金体系への転換、評価制度の見直しによる職員処遇の公平化とモチベーション向上が進んでいます。従来型の年功的賃金で定期的に昇給する方式では実情に合わなくなっており、職務給を取り入れ評価制度を導入することが求められます。

④ IT導入・業務効率化による原資確保

電子カルテ等のIT活用も賃上げ財源の確保、残業削減、業務効率化に寄与しています。活用できる制度として、IT補助金(常時雇用する従業員が300人以下が対象)などがあります。

5.持続的な賃金引上げに向けて

一時的な賃上げや手当支給だけではなく、経営努力や職場環境の改善を重ね、将来にわたって持続可能な対策を検討することが重要です。各医療機関が自院の実情に合わせた多角的な取組を行うことで、安定した人材確保と医療サービスの質向上が期待できます。

6.おわりに

最低賃金の引上げは今後も継続が見込まれます。鳥取県内の各医療機関でも、計画的な賃金対策と職場環境の見直しにより、職員と患者双方にとって良好な医療現場の維持を目指しましょう。賃金引上げや労務管理に関するご相談は、ぜひ勤務環境改善支援センターまでお気軽にお問い合わせください。

(今回の担当:医療労務管理アドバイザー 影山知也 社会保険労務士)

 

▶鳥取県医師会報2025年9月号(No.843)掲載記事はこちら