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第85回勤改センター通信『医療現場における職員募集時のトラブルとSNSリスク』

 『医療現場における職員募集時のトラブルとSNSリスク』

 

近年、医療機関においても人材確保が一層困難となっており、職員募集に際しては、スピード感と柔軟な対応が求められる時代となっています。しかしその一方で、「採用したものの期待していた業務遂行能力が見られなかった」「SNSで職場の内情が拡散され、トラブルに発展した」など、採用後に新たな問題が生じるケースが増加しています。今回は、医療現場における採用時のトラブル事例と、近年深刻化しているSNSリスクについて考えてみたいと思います。
 特に多いのが、「経歴詐称」や「ミスマッチによる早期退職」です。たとえば、履歴書上では「看護師経験10年」と記載されていても、実際には介護施設や外来のみの勤務経験で、病棟での実務には不慣れだったというケースがあります。また、面接時には人当たりがよく問題ないと思われたが、実際の勤務では協調性に欠け、トラブルを引き起こすといった事例も見受けられます。

これらの背景には、慢性的な人手不足から採用が優先され、人物評価やスキル確認が不十分なまま採用に至っていることが原因として挙げられます。こうしたトラブルを防ぐためには、以下のような対策が有効です。

 

次に、近年特に顕在化しているのが「SNSリスク」です。たとえば、求職者が施設見学や面接時に無断で施設内を撮影し、写真付きでSNSに投稿するケースや、採用後に「SNSで問題発言をしていたことが判明」し、後からトラブルとなる事例もあります。

また、職員が勤務先に関する情報(業務内容や内部事情、患者の状況など)を、名前を伏せていてもSNSに投稿した場合、それが拡散されれば施設全体の信用問題に発展するリスクがあります。過去には、SNS上の不適切投稿が大きな問題となり、施設が謝罪と信頼回復に多大な労力を要した事例もあります。

これらのSNSリスクを防ぐためには、まず就業規則にSNSの利用に関するルールを明文化することが重要です。以下のようなポイントを明記し、入職時に書面での周知・同意を得ておくことが望まれます。


 人手不足の今だからこそ、採用時の信頼構築と、入職後の安心感のある職場づくりが人材の定着につながります。医療機関は公共性の高い業種であり、職員一人ひとりの行動が患者や地域社会に大きな影響を及ぼします。採用段階から慎重な対応を心がけるとともに、SNSリスクなど現代的な課題にも対応した人事・労務管理体制の構築が、今後ますます重要になってくると言えるでしょう。

 

(今回の担当:医療労務管理アドバイザー 田中 伸一 社会保険労務士)

 

▶鳥取県医師会報2025年7月号(No.841)掲載記事はこちら