62歳男性、職業は大工です。以前から右肘関節痛が時々痛み、2年前から右薬指、小指のしびれもあります。手の細かい動作が困難になり、整形外科を受診しました。X線で変形性肘関節症が認められ、手の筋肉がやせていたため、右肘部管症候群の疑いで総合病院を紹介されました。精密検査の結果、神経伝導速度が低下しており、同症候群と診断され手術を勧められましたが、手術への不安が強く、仕事も休めないので悩んでいます。手術を受けなかった場合、症状はどの程度進行するのでしょうか。
回答
早期に手術を
肘部管症候群は、肘の内側の肘部管と呼ばれるトンネルを通過する尺骨神経が何らかの原因で圧迫され発症する疾患です。原因は、神経を固定している靭帯やガングリオンなどの腫瘤による圧迫、変形性肘関節症、子供のときの骨折による肘の変形、野球や柔道などのスポーツなどがあります。
今回は変形性肘関節症が原因で発症したと考えられます。変形性肘関節症が原因の場合進行性であり、運動まひ、筋委縮(筋肉がやせている状態)、神経伝導速度の低下のうち一つでも明らかであれば早期に手術を行います。手術は神経を圧迫している靭帯を切り離します。神経の緊張が強い場合は骨を削ったり、神経を前方に移動させる手術を行います。
この方の場合、筋委縮や神経伝導速度の低下が認められた進行例であり、早期に手術されることを勧めます。ビタミンB12の内服や神経幹内注射といった保存的治療は軽症例に有効ですが、進行例には効果が望めません。
手術を受けなかった場合、薬指や小指が折れ曲がってくるかぎ爪変形を生じたり、握力が回復せず今後の仕事や日常生活に支障が出る可能性があります。職場の理解を得るとともに、医師から十分に説明を受けた上で意思決定をされてはいかがでしょうか。