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『医療機関における労働時間の状況等の調査結果をご存じですか?』
2014年10月に改正医療法が施行され、医師を含めた医療従事者の勤務環境改善が医療機関の努力義務とされて以降、医療勤務環境改善マネジメントシステムの導入等による勤務環境改善の取り組みが進められ、2017年3月には働き方改革関連法の施行により、時間外労働の上限規制(医師は当面適用猶予)、有給休暇の取得促進制度等が導入されたところです。その後、2024年4月の医師への時間外労働の上限規制の導入開始に向け、特例水準適用医療機関(労働時間短縮計画作成)の指定や面接指導等の追加的健康確保措置の設定等が行われてきました。
このような取組みのもとに、令和5年度(2023年)に厚生労働省が委託実施した「医療勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組みに対する支援の充実を図るための調査・研究事業」の結果概要について、コメントとデータ等を紹介させていただきます。(全国調査であり、相当数の調査客体が確保されています)。
<労働時間の客観的な把握方法>
医師、看護職とも「タイムカード等の客観的な記録」により労働時間を把握している割合が増加している。
・医師(R3)59.4%⇒(R5)74.2% ・看護師(R3)61.5%⇒(R5)69.6%
<副業、兼業先の把握状況>
病院、診療所ともに職員の副業、兼業先を把握していない医療機関の割合が減少している。
・把握していない病院(R3)12.4%⇒(R5)6.5%
・把握していない有床診療所(R3)20.3%⇒(R5)14.8%
<勤務環境改善に向けた取組み>
病院における補助職の配置、チーム医療や多職種連携、複数主治医制、ICT・IOT活用の取組み割合が増加している。
・補助職の配置(H29)72.9%⇒(R5)82.8%
・チーム医療や多職種連携(H29)57.4%⇒(R5)63.1%
・複数主治医制(H29)12.4%⇒(R5)19.8%
・ICT、IOTの活用(H29)27.6%⇒(R5)62.8%
<時間外・休日労働時間数の状況>
医師については、月80時間を超える医師の割合が減少するとともに、看護職については、月45時間以下の職員の割合が8割以上の状況が継続している。
・80時間越え医師(R3)13.2%⇒(R5)9.3%
・45時間以下看護職(R3)81.6%⇒(R5)81.4%
<年次有給休暇の取得状況>
医師、看護職とも、令和2年度以降年次有給休暇取得率が向上している。
・5日以上取得医師(R1)54.5%⇒(R5)74.9%
・5日以上取得看護職(R1)76.8%⇒(R5)90.5%
<勤務環境全般に対する満足度>
医師、看護職とも満足度は令和3年以降大きく変化しておらず、医療機関と現場の職員の認識にギャップがある可能性がある(満足度にはどちらかというと満足を、不満度にはどちらかというと不満を含む)。
・医師の満足度(R2)49.5%⇒(R5)50.6%
・医師の不満度(R2)14.8%⇒(R5)13.3%
・看護職の満足度(R2)27.2%⇒(R5)28.4%
・看護職の不満度(R2)27.4%⇒(R5)22.9%
このような調査結果を踏まえ、次のような勤務環境改善に向けた提言が行われています。
<医療機関に望まれる対応>
令和6年度以降においても、医療機関の状況に応じた必要な勤務環境の改善の取組を実施する必要がある。
職員のニーズに応じた取組を経営層が計画・実践し、進捗状況を随時共有する必要がある。
<医療従事者に望まれる取組>
一人一人が当事者意識をもって勤務環境改善の取組に積極的に参加する。
医療法の改正による医療機関の勤務環境改善の取組が開始され10年が経過し、全国的に見て一定程度の改善が図られているところですが、提言にあるように、引き続き、医療従事者の参加のもとに医療機関の状況に応じた取組みを実施していくことが重要と考えられます。
(今回の担当:医療労務管理アドバイザー 長谷川 誠 社会保険労務士)