肺炎は年齢とともに急激に増加し、85 歳以上の男性では死因の第2位,90 歳以上の男性では死因の第1位を占めます。高齢者に肺炎が多く、しかも重症化し易い理由として、並存症が多いこと、咳反射や嚥下(えんげ)反射が弱いこと、免疫能が低下していること、自覚症状が軽いため受診が遅れがちになることなどが挙げられています。
一般に肺炎は市中肺炎(普通に社会生活を送っている人に起こった肺炎)と院内肺炎(入院後48~72時間以後に起こった肺炎)に分けられます。高齢者の場合、市中肺炎の原因菌としては、細菌では肺炎球菌、細菌以外では肺炎クラミジアが重要です。インフルエンザ・ウィルスが感染すると、これらの菌による肺炎がより起こり易くなります。このような通常の肺炎以外にも、高齢者では誤嚥(ごえん)性肺炎(食物、胃内容物、唾液などを誤って飲み込むことにより起こった肺炎)がしばしば問題となります。
肺炎の予防には、毎年のインフルエンザ・ワクチン接種が必須です。また、最近、日本でも再投与が認められた肺炎球菌ワクチンも有効です。誤嚥性肺炎の予防には口腔内を清潔に保つために、歯磨きや口腔ケアが重要になります。
高齢者ではインフルエンザなどのウイルス感染に続発して細菌性肺炎が起こる頻度が高いとされています。従って、肺炎の予防にインフルエンザ・ワクチン接種は必須です。インフルエンザ・ワクチンは毎年接種しなければなりません。有効率は60%程度とされていますが,接種すると肺炎による入院や死亡を減らすことが出来ます。
高齢者の細菌性肺炎で一番頻度が高い原因菌は肺炎球菌ですので、肺炎球菌ワクチンの接種も考慮する必要があります。1回の接種で5~8年間予防効果が持続します。このワクチンは高齢者の肺炎の死亡率や入院リスクを20~40%減らし、インフルエンザ・ワクチンと併用すると60~80%減少させると言われています。
口腔機能の向上による誤嚥(ごえん)の予防も重要です。正しい歯磨きの習得と就寝前の口腔ケアによる口やノドの清掃は、万一唾液や食物が肺にはいっても炎症(誤嚥性肺炎)を起こりにくくさせます。歯と歯肉に当てた歯磨きは脳を活性化させ嚥下(えんげ)反射を向上させるという報告があります。食物を気道に入りにくくさせるためには、口腔体操(食物を良い状態でノドに送る)が有効とされています。