健康なんでも相談室

書痙(しょけい)

回答者:  鳥取県西部医師会員 佐久間研司

質問

 70代男性。60歳頃から文字を書こうとすると手が震えて書きづらく苦労をしています。神経内科を受診し服薬していますがあまり良くなりません。他に何か良い治療法はないでしょうか。

 

 

回答

 書字時のふるえで悩む

 

 書字の時に症状が出て書字が妨げられる病気を書痙といいます。書痙は動作特異性ジストニアに分類されます。ジストニアという病気は、筋肉の緊張が異常に持続することで様々な運動異常症を引き起こすものです。内服治療では抗コリン薬、バクロフェン、ベンゾジアゼピンのほかにドパミン受容体という脳の中のスイッチをオン/オフする薬を用います。他には体内に電気刺激装置を埋め込んで症状を緩和させる定位・機能神経外科手術があります。手術であり体への負担も大きいことから慎重に適応を決定する必要があります。さまざまな治療法を組み合わせても治療効果が不十分な患者さんもいらっしゃいます。書痙は大脳基底核の機能異常で生じるとされていますが、大脳基底核は情動と関連する扁桃核との密な線維連絡があります。すなわち心身のストレスからの解放が症状緩和に役立つというわけです。症状をことさらに気にするのではなく、ワープロなどの現代機器で代用しつつ「付き合っていく」という心持ちで過ごされることをお勧めします。