健康なんでも相談室

夜間および早朝の下肢有痛性筋痙攣(こむら返り)を主訴とする症例のQ&A

回答者:  鳥取大学脳神経内科 佐久間研司

質問

去年10月に腰椎すべり症の手術を受けました.手術の前から両足のこむら返りがとてもひどく痛みで声を上げます.整形外科から漢方薬や筋肉をやわらかくする薬(抗痙縮薬)を処方され飲んでいますがまったく効きません.医者からは「汗をかくな,水やスポーツ飲料を飲め,歩け」といわれ,守っていますが良くなりません.これ以外に治療法はないのでしょうか.毎日のことで困っています.

回答

こむら返りのことを医学用語では「有痛性筋痙攣」と呼びます.有痛性筋痙攣はごく健康人にもみられる症状で一般人にアンケートをとったところ59.7%の人が経験があったとのことです.私も経験がありますがひどく足が痛み不愉快な症状です.そうした痛みが毎日生じる状態は想像できないほどの苦痛でしょう.

私どもではあなたのような症状を聞いた場合,まず良くお話を聞いて本当にこむら返りかどうかを明らかにします.まれに「むずむず脚症候群」のようなほかの病気が含まれる場合があるためです.そして足を含めた全身の神経診察を行い,血算,カルシウム,マグネシウム,血糖,甲状腺機能などの血液検査を行います.なぜなら,有痛性筋痙攣の原因には,アルコール多飲,糖尿病,甲状腺の病気,肝臓の病気,背骨の病気,特殊な神経疾患などのようにさまざまな原因があるためです.利尿剤などのほかの病院で出されている薬が原因のこともあり注意が必要です.原因がわからないこともあります.あなたの場合には腰椎の病気がもともとあったとのことで,腰椎の変性に伴う椎間板の狭小化や椎間関節の肥大による神経根の圧迫が足の痛みを起こしているものと考えられます.

有痛性筋痙攣に対してはストレッチ体操,糖尿病などの基礎疾患の治療,痛い部分を温める,湿布薬などのほかに内服治療を行います.内服治療は抗痙縮薬,安定剤、てんかんに用いるお薬,漢方薬などを用います.あなたに出されている薬は抗痙縮薬の中でも,比較的副作用が少ない分,効き目もやわらかいお薬です.いきなり強いお薬を何種類も出すようなことはいたしません.徐々に,症状や副作用の程度を診ながら,変更や増量をされていきますので,主治医の先生と相談されながら根気強く治療に取り組んでください.症状を日記につけて持って行くと役に立ちます.それでもなお,治らない患者さんに対しては仙骨部硬膜外ブロックや深腓骨神経ブロックなどの局所に麻酔薬を注射する方法がとられます.これらの治療については整形外科やペインクリニックといった痛み専門の科で受けられますが侵襲的な治療であり,かかりつけの先生とよく相談して行ってください.