健康ア・ラ・カルト

【13)がん】  6)肝がんの診断と治療の最前線

◎肝臓病のこころ

日本人の平均寿命は世界一となり、長寿社会が時々刻々と進んでいます。

日本人の三大死因は、がん、心臓病、脳血管病であり、がんの死亡数は年間27万人(男16万人、女11万人)に上っています。そのうち、肝がんは胃がん、肺がんに次いで3番目であり、年間32,000人が亡くなっています。

◎今なぜ肝がんか

肝がんの特徴は、胃がん、大腸がん、肺がん、膵(すい)がん等が原因不明であるのに対して、原因がはっきりしている点が挙げられます。肝がんの原因はウイルスによるものであり、B型肝炎ウイルス(20%)、およびC型肝炎ウイルス(70%)、合わせて90%を占めています。したがって、慢性肝炎を治療することは、肝硬変の進展を防止するのみならず、長期的には肝がんの発生をおさえるための治療ということになります。

肝がんの原因の主体を占めるC型肝炎ウイルスの治療法の横綱は、インターフェロン療法であり、インターフェロンが使用開始されて10年経過して、その成績が少しずつ出始めています。それによるとインターフェロンが著効または一過性に有効であった例では、明らかに肝がんの発生および肝硬変への進展が阻止されている成績が得られています。

◎くじけぬように

肝臓病外来は慢性肝臓病の患者さんとの、ことによると20年から30年にもおよぶ長いつきあいの場でもあります。

肝臓病外来も、肝機能(GOT、GPTなどの検査値)が上がって落胆し、下がって喜ぶ肝炎外来から、最近では腹部エコーやα蛋(たん)白(AFP)を使っての肝がん外来に変わってきました。慢性肝炎から肝硬変、肝がんを一つの線として把握して肝がん早期診断治療の実をあげようとするものです。

ウイルス性肝臓病のひとは、定期的な診断を年に1~2回は受けることが必要ですが、肝がんという言葉があしかせになり、受診しなかったり、受診してもこころ慰まない状態の患者さんが多いことにびっくりします。坂道を押し上げて元気づけて帰っていただくのに30分もかかることがあります。

内科的にうつ状態の患者さんの訴えは、易疲労感、食欲低下、何もする気がしない、夜眠れないなどですが、私は眠れぬ夜はラジオの深夜放送を聴くことを勧めています。

古くからの言い伝えに、困った時は原点に立ち返れと言う言葉があります。自分が若かった時、元気で飛び回っていた時などのイメージを思い起こし、過ぎ去った英雄豪傑、今様にいえばスターとの時間をラジオ深夜便で持たれることを勧めています。

(日野病院院長・堀江 裕)