健康ア・ラ・カルト

【3)心臓と血管】  5)農作業中の胸の痛み

質問

83歳、男性。最近農作業中に激しい胸の痛みを感じるようになりました。ゆっくりと軽い作業では痛みは起こらないのですが、急いだり、重い物を持ったりすると激しい痛みが生じます。痛みは、この世の別れかと思うほど激しいもので呼吸も困難になりますが、休んでいると次第におさまってきます。おさまってしまえば、全く何事もなかったような気持ちになり、医療機関を受診したことはありません。

回答

◎狭心症の疑い

胸の痛みを生じる疾患は、心臓血管系、呼吸器系など少なくないのですが、ご質問の症状は、狭心症が疑われます。心臓は全身に向けて血液を送り出すポンプの働きをする臓器で、その大部分は筋肉で構成されています。心臓の筋肉に酸素やエネルギーを供給しているのは冠動脈です。狭心症は冠動脈に動脈硬化が生じて内腔が狭くなり血液の流れが不十分になって、心臓の筋肉への酸素の供給が不足し胸の痛みを生じる病気です。

安静や軽い作業では症状が出なくても、重労働で心臓の仕事量が増え必要な酸素の量が増加すると、十分な血液を供給できず酸素が不足して痛みがおきます。安静にして必要な酸素の量が元に戻ると痛みもおさまります。動脈硬化の程度については、その内腔が75%以上せまくなると狭心症が起こるとされています。さらに動脈硬化が進行したり、血栓と言われる血液の塊ができて、内腔を完全に閉塞すると心臓の筋肉に壊死が起こり、急性心筋梗塞を発症します。しばしば、生命に危険を及ぼす病気です。

狭心症の治療の進歩は近年めざましいものがあり、カテーテルという細い管を使って細くなった冠動脈を再建したり、外科的に冠動脈を再建するバイパス手術なども高齢の方にもより安全に行うことができるようになりました。ご質問では、かなり強い典型的な症状があるようですので、循環器科または内科をご受診ください。

(鳥取県立中央病院循環器科・吉田泰之)