健康ア・ラ・カルト

【9)血液の病気】  2)胃潰瘍後の貧血

質問

60歳の男性。便が黒いことに気づき、胃カメラを受けたところ、胃潰瘍(かいよう)であることが分かりました。治療を受けて、潰瘍のほうは良くなったのですが、潰瘍からの出血が原因と思われる貧血が、治療にもかかわらず、ある程度までしか改善しません。どうして貧血が良くならないのでしょうか?

回答

◎なおりにくい貧血の裏には重大な病気

鉄欠乏性貧血は、貧血のなかで最も頻度の高いものです。そして成人において、鉄欠乏性貧血の原因として最も重要であるのは、消化管(潰瘍、がん、ポリープなど)、子宮(筋腫、がん、ポリープなど)などからの出血です。ご質問の場合は、胃潰瘍からの出血が原因の鉄欠乏性貧血であると考えられます。

貧血の治療としては、鉄剤が投与されたものと思われます。通常ですと、潰瘍が治って出血がなくなった後に、十分な鉄が補充されれば貧血は順調に回復するはずです。しかし、貧血の改善が遅延する場合には以下のようなことも考慮しなくてはいけません。

(1)胃のほかにも、体外に鉄が失われるような病気(たとえば大腸の病気、痔=じ、など)が存在する(2)何らかの原因で、消化管からの鉄の吸収が著しく不良である場合(3)骨髄(骨の中心部で、血液を造る工場)に異常があり、血液中に入ってきた鉄を有効に利用して血液を造ることができない、などです。

(1)、(2)の場合は、消化器の精密検査が必要です。また(3)の場合は、血液の専門の先生に相談してみる必要があろうかと思います。いずれにしても、〝なおりにくい貧血〟の裏には重大な病気が隠れている場合がありますので、注意が必要です。

(鳥取県立中央病院内科・田中孝幸)