七十八歳の男性。本年六月に尿が出にくくなり、総合病院の泌尿器科を受診したところ、前立腺の組織検査で四カ所から癌がみつかりました。癌は中間型だとのことで、骨転移はありませんでした。年齢を考慮して、根治手術は行わずに内分泌療法を受けています。 しかし、内分泌療法は五年しか効かないと言われ、不安な毎日を過ごしています。内分泌療法の効果と今後のことについて、教えてください。
前立腺癌の治療効果は、前立腺腫瘍抗原(PSA)の値と、前立腺癌組織の悪性度で推定できます、PSA値は癌の拡がりの程度と関係があり、骨に転移がなければ50以下と思われます。転移がない状態を局所癌といい、どのような治療をおこなっても、効果は良好です。
一方、癌組織の悪性度は、高分化型、中間型、未分化型の三段階に分類されます。高分化型は悪性度が低く、内分泌療法の効果も良好です。未分化型は悪性度が高く、内分泌療法では、満足な効果が得られないこともあります。中間型は、言葉どおりで、内分泌療法の効果は比較的良好と言えます。
前立腺癌の治療効果は、癌の拡がり(PSA値)と癌組織の悪性度を総合して推測するのですが、転移のない局所癌で中間型の組織であれば、悲観する必要はないと思います。また、たとえ内分泌治療法が効かなくなっても、“次の手”があります。放射線の外照射や他の抗腫瘍薬剤などです。
前立腺癌が内分泌療法に効かなくなった場合を再燃癌といいます。現在、全世界で、この再燃癌の治療法を確立する研究が進行中です。五年、十年先には、その研究が実を結び、身近な治療になると予測できます。他の癌に比べて、進行が遅い前立腺癌だからこそ言えるのですが、“次の次の手”にも期待できます。