Joy!しろうさぎ通信『10年間の振り返り、理想の二刀流を目指して』

鳥取県立中央病院 心臓内科 高見亜衣子

 鳥取県立中央病院で2年間の初期臨床研修を終えた後に鳥取大学循環器内科に入局し、不整脈グ
ループに在籍しております。医師10年目になり、お世話になった中央病院に戻りました。自分が担
当するカテーテル検査、治療の件数は大学時代と比べて大きく増えましたが、ありがたくゼログラ
ビティ(被爆低減システム)を私物化しています。
 節目となる10年を振り返ると、循環器内科に対しては、緊急手術が多く、体力が必要なイメージ
であり、被爆もするし、女性でも大丈夫かと心配もありましたが、正直若さで乗り切れました。循
環器内科の女性医師の先生は徐々に増えてきていますが、不整脈医はまだまだ少ない実情です。そ
の中でも第一線で活躍される女性医師の先生に憧れ、学会や情報交換会など、刺激を受ける機会も
多くあり、不整脈の道を選んだこと、本当に良かったと思っています。
 初期臨床研修制度の変革時期にあたり、若手の時期の大半を大学病院で過ごすことになりました。
その最大の良かった点は、早期に研究に取り組む機会をいただけたことだと思っています。研究の
場はどこにでもある、今はそう思えますが、やはり開始時のハードルが高いのです。循環器内科医
局は問答無用にそのハードルを越えさせてくださり、不整脈臨床にとどまらず心不全、基礎領域ま
で研究の機会を与えてくださいました。多くの先生方にご指導いただき、それぞれの先生方の手法
を吸収して論文も書かせていただきました。徐々に自分の生涯の研究テーマを考えながら、掘り下
げていきたいと思っています。我々が向き合う病気の多くは、まだ治せない病が多いように思いま
す。なぜ病気になるのか、現在の治療は本当に最良なのか。研究が進めば、よりよい治療法の確立
にもつながると信じています。臨床と研究の両立、目指すは二刀流医師です。残念ながらまだ二刀
流を使えるだけの筋力はありませんが、今後も理想に向かって邁進したいと思います。
 女性医師であること、いつまで今の働き方ができるのか分からない不安や焦りもあり、この10年
間自分の描く理想からはずっと遅れていると思い続けてきました。「ワークライフバランス」で何
かを諦める選択を、私はしてきませんでした。その結果後悔する時が来るのかもしれないと思う時
もよくありますが、結局そのようにしか選択できないのです。次の10年も、やれることよりもやり
たいことを選び続けられる医師生活であればと思います。