Joy!しろうさぎ通信『鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部のコロナ対策』

鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部・リハビリテーション科  尾﨑まり

 Joy! しろうさぎ通信の原稿依頼をいただき、恐縮しております。
 どうやら2016年8月にも投稿していたようですが、PCも変わり、HPからも引くことができず、もはや何を
書いたのかも思い出せず……原稿依頼のお手紙には『卒後20年の経験~出産・育児を経て思うこと~』の投稿
を頂き……と書いてありましたので、おそらく子供が小さい時に割と無茶して仕事と育児を両立していた時期
のことを書いていたと思います。その後は子供たちも大きくなってきたため、あまり皆さんにお伝えすること
もなく、さて困った……と思っていた時に、ちょうどコロナの第6波がものすごい勢いで拡大しておりますの
で、鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部のコロナ対策についてお伝えしようと思います。
 2020年1月に国内で最初のコロナウイルス感染症患者が報告され、2年が経過しました。2020年にリハビ
リテーション部ではBCP(事業計画書)を作成し、控室の利用に時間割を作成したり、いたるところにパーテ
ーションを設置したり、一般的に皆さんが行っている対策を粛々と行っておりました。2020年には『来年に
なればリハビリテーション室も以前のような賑わいがとり戻せる』と思い、いろいろと我慢してきましたが、
その淡い期待は見事裏切られ、2021年には2020年よりさらに大きな波がやってきました。そして2020年冬か
ら始まった新型コロナウイルス感染の第3波では、鳥取県でも次々とクラスターが発生し、多数の患者さんが
当院にも入院してきました。2021年1月初めに高齢者施設でクラスターが発生したことで、1月8日から新型
コロナ感染症患者さんへのリハビリテーション介入が開始となりました。
 リハビリテーション部の作成したBCPでは、県内で多数の感染者が発生した場合、療法士は病棟配置制とし、
外来リハビリは中止と決めておりました。1月4日の仕事始めから、患者数の増加と重症患者さんが入院した
ことにより、病棟配置にシフトし、予防着の着方の再学習、介入した療法士の隔離場所の確保、などあわただ
しく準備しました。
 また、当院では《コロナ病棟 重症度別介入手順》というものを作成しております。挿管・深鎮静されてい
る状態では看護師さん主体でポジショニングや腹臥位療法を実施してもらい、鎮静を浅くしていく段階で理学
療法士が介入し、座位、立位訓練を開始することにしておりました。介入前には麻酔科Dr、感染症内科Dr、病
棟Nsとカンファレンスを実施し、協力し合いながら介入を開始したので、初めての経験でしたが比較的スムー
ズに介入を開始することができたと思います。介入する療法士は1週間交代とし、希望を募ってローテーショ
ンを組みました。昼過ぎまでは通常通り病棟でのリハビリを実施し、15時以降をコロナ病棟介入時間にしまし
た。コロナ患者への介入は、最初、全く経験のなかったことでしたので、二次感染予防のため、介入した療法
士は2週間、大学の用意してくれた宿泊施設で自主隔離生活を送りました。この隔離生活が何よりもつらい経
験だったと後々聞きました。その後、医療従事者への感染リスクは極めて低い、ということがわかり、自主隔
離も不要となり、安心して自宅に帰ることもできるようになりました。
 また、その後の第4波からは、介入患者さんの増加に伴い、重症病棟担当療法士(PT)とコロナ一般病棟担
当療法士(PTとOT)の2つの班を作成してローテーションを組むようにしました。第5波も含め、2022年1
月末までにのべ78人の患者さんに介入しておりますが、いつも危険と隣り合わせであるという緊張感は多数介
入しても解消されることはなく、療法士さんは大変なストレスを感じていると思います。
 さらに第6波では今までとは全く異なる事態が起こってしまいました。それは毎日テレビでも話題になって
おりますが、人手不足です。療法士さんの子供が通う幼稚園・保育園・小学校で感染者が出ると休校・休園措
置⇒療法士が出勤できないという事態が多発しております。さらに濃厚接触者となれば、長期間自宅待機を余
儀なくされ、そのため介入できない病棟が出てきました。リハビリテーション医として、患者さんに対するト
リアージをしないといけなくなってきております。当院は『依頼はすべて断らない。入院している限りすべて
の患者さんがリハビリテーション適応』という考えで行ってきたため、非常に心苦しく思っております。ただ、
そんな時に批判を受けるのは療法士さんとなってしまうので、リハビリテーション医が不満のはけ口となって、
療法士さんを守らなければいけないのも事実です。コロナ患者さんに介入する療法士さんたちの不安を少しで
も取り除き、安心して働けるようリハビリテーション医としてフォローを続けていきたいと考えます。

 国内で最初の新型コロナウイルス感染者が報告されてから約2年が経過しましたが、依然として、コロナ感
染症は収まる気配がありません。一日も早く収束することを願ってやみません。