Joy!しろうさぎ通信『食育とわたし』

鳥取大学医学部健康政策医学 森田明美

 私の専門は、衛生・公衆衛生学で、生活習慣病予防について、栄養のお話をする機会も少なくあ
りません。さりながら、自他ともに認めるくいしん坊・いやしん坊であり、自分はメタボリックシ
ンドロームそのものです。新任教員紹介の大学広報では、①趣味②好きな食べ物、を書くように言
われるのですが、さすがに、①食べること②食べられるものすべて、と書くのは恥ずかしく、①に
は無難な趣味を書き、②は「食べることが好き」と書いて笑いを誘いました。ふと、何故これほど
に食い意地が張っているのだろうと考え、幼少期からの食に関する環境や「教育」も関係している
のではと、自己弁護に走っています。
 「食育」という言葉も、かなり浸透してきたかと思われますが、食育基本法という法律が出来た
のは2005年、21世紀に入ってからです。この法律では、食育とは『生きる上での基本であって、
知育・徳育・体育の基礎となるものであり、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選
択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てる』こと、としています。
1898年に石塚左玄(医師・薬剤師)が「食物養生法」などの中で、『躰育智育才育は即ち食育なり』
と書いたのが食育の始まりだと言われています。ただ、あまりこの言葉は一般には広まらず、1990
年代に入って、現代の食に関する課題を背景にその重要性が再認識されるようになりました。2002
年に文部科学省・厚生労働省・農林水産省合同で「食育推進連絡会議」が設置され、食育基本法成
立、食育推進会議(会長は内閣総理大臣→農林水産大臣)設置、食育推進基本計画作成と続き、現
在まで国の食育推進政策が実施されています。
 2006年からは食育推進全国大会という、2日間で2~3万人が集まるイベントも毎年開催されて
います。勤務先のブース出店で第2回大会に参加した折には、来場者の多さ、出店の多彩さ、有名
人の登場と、その派手さに圧倒され「やはり農水が入るイベントは違う」と感じたことを今でも覚
えています。現在は、食育推進のメインは農水省になっており、文科省には専用のホームページも
なく、食>>育のイメージが強い状況です。
 食の安全にも少し関わっている手前、「食」「育」ともに知識だけでなく実践も行い、医者の不
養生そのものを解消せねばならないのですが、この「食パラダイス」鳥取県においてどこまで摂生
できるのか、さて、はて……。