Joy!しろうさぎ通信『絵本製作を経験して』

安来市立病院 乗本道子

 私は古稀を過ぎましたが、未だに公立病院で週2回糖尿病診療を担当し、院内外のスタッフや患
者さんとの繋がりを大切に、寄り添って診療してきました。
 大学病院のご支援で、一昨年から2年間の期限付きではありましたが、素晴らしい常勤医を迎え
る事ができ、少し息抜きができました。しかしこの4月からは非常勤医のバトンリレーで糖尿病診
療を担うことになり、頭をいためております。
 安来市は20年以上前から保健所の支援のもと安来市糖尿病管理協議会を立ち上げ、専門医不在の
中で学び合い連携し合って質を担保した糖尿病診療を続けてまいりました。その中で当院は協議会
を支える基幹病院の役割を果たしてきましたので、今後を案じております。
 しかし大学病院のご支援でいただけた2年間は、自らを振り返ったり、視野を広げたりする豊か
な時間でしたので、新たな分野に足を踏み入れる事ができました。
 思い返せば我が子育ては、ずさんなものでした。一方で息子達からしばしば送られてくる動画や
リアルなやり取りが目に留まり、息子夫婦の面白い子育てを絵本にできないかしらと思いつき、一
昨年秋の文芸社の絵本大賞に応募してみました。
 “あおいちゃんとカエルちゃん” と題してストーリー部門に応募しましたところ、選考にはもれた
もののご評価いただき、絵本制作を勧められましたので、家族の了解を得て制作に至りました。
 文芸社からイラストレーターさんを何名かご紹介いただき、家族と相談して選び、イラストレー
ターさんに動画を送り、イメージを作っていただいた上で、メールでのやり取りを繰り返して作り
上げていきました。
 文面についても細かくアドバイスをいただき、オリジナルを活かしながら、わかりやすい言葉に
修正したり、字体やレイアウトを工夫したり、表紙の絵やタイトル文字、配色、帯にいたるまで、
数ヶ月にわたり編集者とメールとレターパックで検討を続け、完成にこぎつけました。
 昨年12月2日、出来上がった絵本を手にした時にはこれまでに感じたことのない喜びがありまし
た。年賀状には早速表紙をスキャンして貼り付け、新年の挨拶と共に送りました。
 正月早々に小学校時代からの親友がネットで絵本を求めて感想を送って下さり、40年余り年賀状
一本の付き合いから繋がりが復活しました。
 また足腰の衰えから認知機能が怪しくなり寝たきりになっている姑に絵本をみせたところ、声を
出して全ページを読んでくれたことには正直驚き、絵本の力に感謝しました。
 絵本のあとがきに書きましたが、我が子育ての時代は社会の支援体制が乏しく厳しいものでした。
夫が内地留学中に1歳半の娘を連れて、当院に奉職しましたが、母としても医師としても半人前で
したので、家族や地域の皆様に支援をいただきながら、必死で駆けずり回る毎日でした。
 その中で娘がどんなに寂しかったか辛かったか、一つも思いやる余裕もなくひた走ってきました。
長じて精神科医になった娘から縷々聴いてやっと気付いた次第ですので、息子夫婦の豊かな子育て
は私の目にとても興味深く映りました。
 そんなわけで、絵本制作に至り、同門会の細田庸夫先生が送って下さる通信にご紹介しました所、
ご評価下さり、医師会報への掲載となりました。
 幼稚な絵本ですが、制作に至った思いと喜びをお伝えしたくて、書かせていただきました。
 “あおいちゃんとカエルちゃん”(文芸社刊、30頁、1,200円)は一人っ子のあおいちゃんがパペ
ットのカエルちゃんと切磋琢磨しながら、色々なものに挑戦して成長していくお話です。
 今井書店でもネットでも求められますし、3月には電子図書化もされるそうです。
 米子市児童文化センターにもおいていただきましたので、よろしかったらご一読下さい。
 最後に安来市立病院で糖尿病診療を担って下さる医師を求めています。
 私は当地に骨を埋めるつもりで、屋台骨を支えてまいりましたので、病院の行く末を心配してい
ます。
 心ある方はどうか私までご連絡下さいますよう、お待ちしております。