Joy!しろうさぎ通信『第5回天晴れおかやま女性医師リーダー養成ワークショップ “ゆっくりでも良い、指導医になろう” 参加報告』

鳥取県医師会理事 男女共同参画推進委員会委員 來間美帆

 去る令和4年12月11日(日)、『第5回天晴れおかやま女性医師リーダー養成ワークショップ
“ゆっくりでも良い、指導医になろう”』が、岡山県医師会館を主会場にハイブリッド開催されました。
 この会は、岡山県医師会が岡山県・岡山大学・川崎医科大学と共に、県内で活躍されている女性指
導医や次世代の女性指導医を顕彰し、また指導医となるべき若い世代とその指導者で指導方法を検討
する女性指導医育成セミナーとして、平成30年度より執り行われているものです。昨年に引き続き、
本年もWebで参加させていただきました。
 岡山県医師会 松山正春会長、岡山県保健福祉部 徳本史郎部長、岡山大学病院 前田嘉信病院長、
川崎医科大学附属病院 永井 敦病院長による開会挨拶につづいて、前日に行われた第5回天晴れジョ
イボスアワード受賞者(大賞・奨励賞)の表彰式の模様も動画で紹介されました。奨励賞については、
昨年度までの1名から本年度より3名に増え、より聞きごたえのある天晴ジョイボスアワード受賞の
先生方による講演を拝聴いたしました。

1.大賞
「私が行う患者支援~泌尿器科医師と総合患者支援センター医師の立場から~」
岡山大学病院総合患者支援センター准教授 石井亜矢乃先生
(座長:岡山大学病院ダイバーシティ推進センター 教授 片岡仁美先生)
 女性泌尿器科領域(岡山大学病院泌尿器科女性専門外来)の泌尿器科女性医師として、また、総合
患者支援センター(患者さんへ医療・看護・福祉の点から、包括的で継続的なサービスを提供するた
めに設置。種々の相談に応じ、多職種スタッフが相談患者支援・入退院支援・地域医療連携など院内
外の医療連携を支援)の専任医師として活躍されています。二つの立場を持ちながら仕事が継続でき
ている理由は、①院内だけでなく院外での活動の場が確保でき新たな人との出会いが楽しく、刺激と
なったり、仕事貢献がやりがいに繋がったりしている ②自らが仕事を考え自分のアイデアを実現で
きる楽しさがやりがいとなっている ③泌尿器科と総合支援センターは別物でなく、ともに支えあっ
ている ④上司、同僚、家族など相談できる人がいる ということを挙げておられました。多職種か
らなる部署をまとめる難しさに直面した際、「自分を磨きながらこれをやりたいという覚悟を持って
新しい仕事を考える」、「覚悟をもってやりたいことを伝え反対されても別の方法を相談したり、ど
こまでならできるかを検討して進めていく」、「考える時間は沢山あるので、焦らず進める」、「み
んなの心が変われば行動も変わる」、「みんなの心を変えられるよう、無理せずコツコツとできるこ
とから行うしかない」といった上司からの言葉が助けとなったそうです。経験を通じ、多職種のメン
バーから意見を聴取して一方的なものの見方をしないようにしたり、誰のために仕事をしているのか
(患者支援)を再確認したり、組織人として何が求められているのかを伝達したり、スタッフの行動
に対して専門職としての敬意を払いつつ良かった点や修正が必要な点を伝えて今後の改善を促したり、
積極的にご自身が頑張っている姿を見せたりするということを、多職種が務める部署の専任医師と
して気を付けて、工夫されているとのことでした。また、今後は院内で多職種チームの一員として患
者支援を行うだけでなく、患者さんを地域に戻すために「治し支える医療」を見据え、自立の力と地
域の力を高めるような患者支援を行っていきたいとおっしゃっていました。

2.奨励賞
・「女性における働き方の多様性」
川崎医科大学消化器外科講師 窪田寿子先生
(座長:岡山県医師会副会長 神﨑寛子先生)
 消化器外科医として研鑽を積まれ、妊娠・出産を経て現在3歳のお子様の育児をしながら仕事復帰
をされている現状について、「出産・育児はとても素晴らしいことであり、育児をする期間は限られ
ている。院内保育所や市のファミリーサポート・病児保育などの使えるサポートを最大限に利用しつ
つ、“仕事時間にできることはする”、“できないことでなくできることは何かという視点の元、助けて
くれる同僚や子供・家族に感謝をしながら、これからご自分自身が外科医を継続していく”ということ
で、女性学生や研修医にひとつの働き方のパターンを提示できるのではないかと考えている」と話さ
れました。

・「医師人生を振り返って─人材育成を考える─」
倉敷中央病院循環器内科部長 山本裕美先生
(座長:岡山県医師会常任理事 山田 斉先生)
 「様々な指導者との出会いや助言が次への道を切り開いてくれたし、やりたいと思うことを口に出さ
ないと何事も始まらない。吉凶結果はわからないものの見守ってもらえるありがたい環境があった。意
味がないのでは?と思う事も真摯に取り組んでおけばその後どこかで役に立った」と、これまでを振り
返られました。これからは、人材育成の観点から、“ジュニアレジデントへの教育体制の見直しと構築”
“循環器内科医師のキャリア支援(産後復帰後の勤務体制、チーム診療体制、遠隔診療の活用)” を整
えて、なるべくキャリアへの希望を叶えられるよう、後進の育成に重点をおいた指導者になりたいと語
られました。

・「女性外科医としてのこれまでとdiversity時代における展望」
津山中央病院救急外科主任部長兼外傷センター長 繁光 薫先生
(座長:岡山県医師会女医部会長 渡邉恭子先生)
 救急科医長、救急外科医として現場のみならず、初期研修医の指導やACLSコース立ち上げ・普及、医
学生臨床実習など後進の育成にもあたっていらっしゃる繁光先生。D&I(Diversity&Inclusion:多様
な人材がお互いを認め、各々の能力や個性を伸ばしつつ一体感をもって活躍している状態)の実現に向
けて、“職場環境の整備:勤務形態や勤務時間の変化(チーム制、短時間勤務、オンライン会議等)”、
“個人の技術向上:Web等での手術学習やoff the job trainingの利用”、“個々の意識改革:現場偏重主
義からの脱却や多様性の受容、しかたがない から なぜできないかを考え問題意識を持つこと” という
取り組みなどにより、リーダーとして活躍する女性医師の育成にご尽力されているそうです。「いろい
ろな外科医がいていい、みんなが居場所を持っている」というメッセージも下さいました。

 鳥取県医師会においても、第4回となる「鳥取県女性医師の会」を令和5年1月29日(日)14時より、
実に3年ぶりに今回はオンラインで開催致します。女性医師のみならず、男性医師、研修医、医学生の
皆様のご参加も大歓迎です。お待ちしております。