Joy!しろうさぎ通信『第2の人生』

倉吉市 おはだのことクリニック  本 田 聡 子
 平素より大変お世話になっております。
 このたび、原稿の依頼をいただき、恐縮しております。
 2011年に鳥取大学を卒業後、厚生病院で初期研修を行い、「帰って来いよ」と送り出していただいて、鳥取
市立病院、岡山大学を経て、2020年11月12日「いい皮膚の日」に皮膚科クリニックを開院させていただき、あ
っという間に半年たちました。
 当初は、2020年がこのようなコロナ禍となるとは夢にも思わず、緊急事態宣言が発令され、移動や行動が制
限される中で、建物の建築をはじめ、さまざまな準備に時間がかかり、本当に開院できるのか、と思ったことも
何度かありました。
 おかげさまで、なんとか開院にこぎつけ、ご挨拶もそこそこで大変失礼をしておりましたのに、鳥取大学や
厚生病院はじめ多くの先生方に次から次にお世話になり、本当にありがたく思っております。
 倉吉出身で、教員として社会人を経由してから医師となったこともあり、初期研修では、高校のときの同級
生が指導医となってくださったり、当時の生徒がすでに看護師や救急救命士として勤務していたり、など、思
いがけない再会があるたびに、一気に時が戻りました。
 また、開院したある日、患者さんの名前と年齢をみて、担任だった生徒かなと思いましたが、当時の校区と
現住所が異なり、長い年月とマスクのため確信が持てず、「A小学校でしたか?」と聞くと怪訝そうに「はい」。
「4年生のときBくんとかCちゃんとか同じクラスでしたか?」と聞くとさらに怪訝そうに名札をみて「!」。
 またある日は、「せんせーい! お母さんから聞きましたー! 今日は、子どもに湿疹ができてしまって」
 生徒も驚きますが、みんないいお父さんやお母さんになっていて、こちらもびっくりします。
 かなり強い自閉的傾向があった男の子(今はいいおじさんですが)が、お母さんに連れられてやってきたと
きは、事前に、お母さんが、彼の記憶を塗り替える努力をしてきてくださったのですが、彼はどうしても理解
が難しかったようで、「先生は今は音楽の先生じゃない。」と独り言で繰り返しながら診察室の隅で固まって
しまったり。
 毎日、何かしら、面白いことが起こります。
 それにしても、やはり、これまでのすぐ隣の診察室に先輩の先生がいてくださる環境は貴重だった、と実感
する日々で、多くのcommon diseaseに紛れて稀な疾患を見落とさないように、また、腫瘍が悪性かどうか悩
ましかったり、さまざまな情報に遅れないように、など、以前に増して緊張感があります。
 仕事がないときは体力作りで始めたフラメンコができるかな、と思っていましたが、毎日夕方は、緊張感か
ら解放されるのだと思いますが、遠足から帰ったような感じで、おそらく、コロナがなくても直帰していたな
あと思います。
 最後になりましたが、まだまだ精進の日々ですが、この地域に、少しでもお役に立てれば幸いと存じます。
 先生方にはお世話になったりご迷惑をおかけすることも多々あるかと思いますが、なにとぞよろしくお願い
申し上げます。