Joy!しろうさぎ通信『男性こそ育児休業、育児時間取得を!』

鳥取大学医学部附属病院小児科  宮 原 史 子
 私は平成17年に鳥取大学を卒業し、鳥取大学医学部附属病院で初期臨床研修を受け、以後鳥取大学医学部
周産期・小児医学部分野に入局して大学病院や関連病院で働いてきました。書いてみると、どっぷり鳥取に
浸かっているなあと実感します。
 生まれは米子市ですが、家は転勤族であったため、中学・高校と広島で過ごし、現在実家は北九州市にあ
ります。生粋の鳥取人というわけではないですが、大山をこよなく愛し、鳥取の人も味覚も大好きです。1
年間、東京に国内留学していた頃は、近くのスーパーで白バラ牛乳を見つけて、ちょっと割高でしたが売り
上げ実績を伸ばしていました。
 私は小児科の中で新生児を専門にしていて、大学病院のNICUで働いています。NICUというと、小さい赤
ちゃんの集中治療……と激務なイメージがあるかもしれませんが、比較的On/Offがはっきりとした職場な
ので、子育て中の医師には合っている職場だと思います。
 このしろうさぎ通信では、これまで様々な先輩が投稿されてきました。私も5歳の子どもを育てながら仕
事をしていますので、育児と仕事の両立や体験談などいつも興味深く読ませていただいています。私自身は
職場の理解や子育て環境に助けられ、当直や待機もなんとかこなせています。また、2020年12月からは小
児科の統括医長を拝命し、医局の運営に携わり、医局員の働き方や考えに触れる機会が増えましたので、み
んなが気持ちよく働けるにはどうしたらよいかということを考えるようになりました。女性医師に限らず、
みんながライフスタイル(育児や介護、自身の病気など)に合わせて勤務形態を変えられること、他の医師
はサポートをすることに対して損をしていると感じないようにすることを心掛けています。
 ワークライフバランスセンターが設置されていることもあり、大学病院は比較的サポートが充実している
と思います。育児については、大学病院には365日開所している院内保育所があり、月・水・土は夜間保育
もしているので、非常にありがたいです。日曜日に預けられることで、学会や研究会に参加しやすくなりま
すし、夜間保育のおかげで当直もできます。病児保育室もあり、定員6名で親が大学病院に勤務していれば
誰でも預けられます。病児保育などの育児サービスを利用した時には、かかった費用の2/3を病院が負担
してくれる「仕事と育児の両立支援事業」も助かります。また、当直や時間外勤務を免除する制度や30分単
位で調整できる短時間勤務の育児時間や介護時間も取得することができます。これらの制度は、女性でも男
性でも利用することができます。当院小児科では、女性医師だけではなく男性医師も育児休業(育休)や育
児時間(時短勤務)を取得するように勧めており、この1年間では1人の男性医師が1ヶ月間の育休、2人
の男性医師が1~2ヶ月間の育児時間を選択しました。女性医師と比べれば期間は短いですが、生後間もな
い時期の赤ちゃんを夫婦2人で協力して育児をする意義は大変大きいものと思います。
 私が男性医師の育休や育児時間の大切さを痛感したのは、後輩医師の奥様が第2子を当院で出産された時
でした。後輩医師は大変優秀で、毎日遅くまで診療を頑張っていて、子どもをあやすのもとても上手で、家
では良いお父さんなんだろうなと思っていました。しかし出産後、奥様は助産師に対して「これから2人の
子の育児を1人でやることは大変だろうなと思います」と不安な気持ちを吐露していました。それを聞いた
時、こんなに優秀な小児科医が家では育児戦力になっていないのか!とショックを受けました。後輩医師に
話を聞くと、できるなら育児も頑張りたいという気持ちだったので、育児時間の取得を勧めました。育児時
間を取得することで、基本給は短縮した時間の分減りますし、超過勤務や当直、外勤ができなくなるので収
入は減ってしまうのはデメリットですが、彼は時間内に仕事を終わらせるように工夫し、重症患者の主治医
も担当しました。他のスタッフは、当直の回数が少し増えたりしましたが、普段の彼の働きをよく知ってい
るので、誰も文句を言うことなく残った業務を受け取ったり、退勤時間になったら彼に帰宅を促したりして
いました。育児時間を終了した後も、彼は積極的に育児や家事に参加し、診療にも磨きがかかっています。
 特に若手医師は、女性や男性に限らず、医師として研鑽を積む時間も家庭の時間も大切にしたいという気
持ちが強いように感じます。女性も男性も育休や育児時間を取得することで育児や家事の分担が進み、男性
が家事や育児をできるようになると女性医師は復職しやすく、早期に当直や待機ができるようになるのでは
ないかと思います。また、女性医師が早期に復職できるようになると、育休や時短勤務を取得する人が増え
てもサポートできる人員を確保できます。ただ、男性医師が家計を1人で担っている家庭も少なくないと思
いますし、大学では外勤からの収入も大きいので、給与面で育休や育児時間の取得を躊躇する人もいます。
育休や時短勤務を取得する医師への給与面の待遇改善、サポートする側の待遇改善、そもそもの基本給のア
ップが望めたらいいのにと思います。
 共助の気持ちで働けるように、私は男性こそ育休、時短勤務を積極的に取得してほしいと思っています。