Joy!しろうさぎ通信『日々の過ごし方と思うこと』

鳥取市 石田医院 大津千晴

 子供が自立した、50代後半の女医。私の一日。
 朝隣に寝ている、認知症全介助老犬ブルドッグ雄から、飲水の希望の頭突きを受け、水分を与え
る。犬のおむつ交換を行った後、犬をリビングに移動する。毎朝決まった番組を観ながら朝食を食
べる。同時にライン、メールの確認、返信。その後自宅隣の職場に出勤。院外院内の見回り、電子
カルテのログイン作業等して1日が始まる。
 休憩時間内、昼食後に土手の草抜き。セイヨウタンポポは、草刈り機で刈っても3日程度で成長
開花するため、抜くしかない。外来に呼ばれるまで草を抜く。土手は公共の土地。年3回程度、老
人会やご近所さんがボランティアで草刈りをしている。3年程度、感染症外来のドタバタで時々の
草刈りに参加できなかったので、今年は草刈りと草抜きを勝手に強化。閉院後、講習会がなく、雨
が降らない日は、日没まで草抜きをする。日没後帰宅、老犬を全介助で入浴させる。犬は痙攣重積
を繰り返し、ベッド上の生活となった。犬を自室に移動。自身の夕食、洗濯、掃除、残務をこなし、
時に無料動画を観て就寝。
 友人の多くは、メディアやSNSに登場する華やかな女医とは大きく違う。私も華やかでは無い。
自宅時間が増えてきてからは、趣味は庭木の剪定となった。以前、同期が、「将来はそば打ちをし
て蕎麦屋を営みたい」と言っていた。その時、私は大笑いしてしまったが、今や私は、「バカボン
のパパの様だと」友人から笑われる。晴れた日の休日は庭を整える。大きな喜びも、大きな悲しみ
も無い平凡な1日。平坦な感情の日は心地よいと、ここ数年思うようになった。子供が小学生の頃
は、学校行事や運動活動に振り回され、我が子には他者と同じように習い事を、職業を持たない母
親と同じ送迎環境をと、勝手に思い込み、その調整に振り回され、結果、我が子は周囲のいろいろ
に振り回され続けて成長した。その最中は、それが正解なのか考える余裕がなかった。日々私の気
持ちは大きく揺れた。子供が巣立ってしまうと、子育てのいろいろが、どうだったか考えてしまう。
その感情は朝方目が覚めそうで覚めない時に沸き上がってくる。今までいろいろな朝がやってきた。
学生の頃、朝まで呑んで迎えたフラフラの朝、同期と迎えた当直明けの朝、子連れ当直明けで申し
訳ない気持ち一杯で食べるカフェでの母子朝食、大切な人が旅立った後、眼を開けたら現実が変わ
っていてほしかったけど、変わらなかった朝。私は今のところ、どんな朝でも、仕事には向かえる。
向かえ続けたのは、先輩から「歩みを止めてはだめ、どのようなペースでも続けなさい」という言
葉をいただいたから。パワフルに仕事を続ける先輩方の背中を見てきた。周囲の支えがあっての人
生であることは以前も今も痛感している。いつまで働けるかわからないが、私は微力ながら、地域
医療に関わり、お役に立てる間は、医療の道を歩み続けたいと思う。それを生まれ育った過疎地へ
の恩返しにしたい。