Joy!しろうさぎ通信『女性医師の立場』

鳥取大学医学部脳神経内科学  花 島 律 子

私が鳥取県に参りまして、早いものでもう2年半が過ぎました。この間、私の専門分野ではまだ女性教授は珍しいということもあって、女性医師のキャリア形成に関する講演に呼んでいただいたり、このような女性医師の立場からの記事を書かせていただく機会をいただいたり、女性であるということで取り上げられることが多くなりました。講演などでも、“女性の教授で、、”と、ご紹介いただくことがよくあるのですが、実は私自身としては少々面映ゆく、申し訳なくも感じてしまいます。といいいますのは、働く女性がかかえる大きな問題である家庭、特に子育てと、忙しい医師の仕事との両立をどうするかという問題を、私が上手に乗り越えて仕事を続けてアカデミックポストを得てきたという訳ではなく、男性と同じような時間の使い方をしてきたからです。ですので、女性ならではの苦労や、仕事と子育ての両立のための知恵などは残念ながら、ここでは申せないことをお断りいたします。

ただ、女性が男性主体の社会で仕事を続けていくにはどうしたらいいのだろうとは、昔からずっと考えていたようには思います。私が将来の進路を選んだときは、医学部入試時には同じ点数だったら男子が受かるから2割増しの点数をとれるようにしておかないといけないと囁かれたり、入学試験の面接では女子は結婚したらどうせやめるのでしょうといわれたり、あの医局は女性を採用しないと公言していると伝え聞いたりした頃でしたので、やはり少し心配したものです。脳神経内科に魅力を感じたため入局を決めましたが、丁度、医学部の学生の女性の割合がだんだんと増えてきて、女性医師の入局も増えてきたときでしたので、断られることもなく希望を通せたことは幸運だったと思います。

最近、私立医学部の入試時の男女差別が大きなニュースとして取り上げられ、恐らく暗黙の了解とされていたのだろうと思われる事柄が公のもと強く非難されるのをみると、男女雇用平等法ができてから20年以上の時間が経ち、政府がワークライフバランスを大きく取り上げたりすると、こういう風に少しずつ世の中の正論が変わっていくのかと感慨深く思いました。実際、この頃では若い世代の医師が、女性も自然に結婚しても仕事を続けようとし、男性も自然に育児に参加するようになってきたようで喜ばしいことと思います。

それでも、まだまだお子さんのいる女性医師が忙しい診療科を継続することには困難があり、アカデミックポストをあきらめることも多いのが現状です。時短など色々な働き方が提唱されるようになったにも関わらず、それだけではまだ充分ではないのは、ワークライフバランスやキャリア形成は、お子さんのいる女性医師だけのことと切り取って考えるのでなく、他の立場の医師のワークライフバランスも考え、職場全体で考えないと成り立たないということだろうと思います。結局は職場全体の業務の効率を良くするしかないのかな、などと思ったりしていますが、まだまだ、どうやったらみんなが消耗しないで医師を続けられるか、思いあぐねながらこれからも考え続けることになりそうです。