Joy!しろうさぎ通信『女性医師の意識調査結果と女性医師活躍への期待』

鳥取県医師会理事 女性医師支援委員会委員 松田隆子

 2019年12月、中国から世界中に伝播したコロナウイルス感染症により世界の人々が文化的、経済的
などいろいろな形で多くの影響を受け、今も続いています。日本でも多くの人々が集まる学会、集会が
中止になりました。2018(平成30)年女性医師の活躍に向けて中部で開催された第1回鳥取県女性医
師の会も、第2回米子で、3回目を鳥取で開催後、2年間中止を余儀なくされました。そこで、女性医
師支援委員会は鳥取県の女性医師に対して以下の問1~9の意識調査を行いました。回答期間は2021年
10月29日より12月24日まで、配布数425部、本調査に回答していただいた女性医師155名(回答率36.5
%)でした。

 問1から3 あなたの年代、専門科目、勤務先について教えて下さい。
 問4から6 日頃の家事、育児、介護についてお尋ねします(複数回答可)。
 問7 コロナ禍でご自身の医師の仕事に影響を受けましたか?
 問8 別紙は日医ニュースの記事です。読後の感想・ご意見はありますか?
 日医ニュース『勤務医のひろば』(令和2年9月20日第1417号)から、東京女子医科大学放射線腫瘍
学講座教授・講座主任、全国医学部長病院長会議男女共同参画推進委員会委員長 唐澤久美子氏の“医師
は育児や介護を中心になって担うべきではない”というテーマの約700字の記事です。その一部を紹介す
ると『……ずっと勤務医を続けている。私の母は小児科医で、家には住み込みのお手伝いさんがいて、家
事と育児を行っていた、私も子供ができてから保母さんを頼み、家事と育児をお任せしていた。……仕事
を減らそうとか、やめようとか考えたことは1度もなかった……仕事がしたかったからである。……平成
30年度に「女性医師等のキャリア支援策に関する実態調査」で……調査から見て取れたのは、仕事を持っ
ていても、女性が家事や育児の中心的担い手とされる、いわゆる固定的性別役割分担意識が強いことで
あった。高度プロフェッショナルである医師が、家事や育児を中心となって担うことは医師不足につな
がり、それは結局、社会の損失となる。女性医師が医業に専念できる社会基盤整備の、家事などの外注
を可能にさせる収入増加が、日本の医療発展の鍵の1つであると思えてならない。』と結ばれています。
 問9 普段女性医師として仕事をして悩んでいることはありますか?
 問9−2 悩んでいることを誰かに、またはどこかに相談しましたか?
 最後に、女性医師として日頃思っていること、考えていること、医師会へのご意見などありましたら
、自由にお書きください、という内容の調査でした。

 結果です。
 【問1~3】本調査での年齢内訳は、30歳台、40歳台が各々30%で、次いで20歳台が15%、50歳台が
13%、60歳台以上10%で、20歳台から40歳台までが7.5割と若い世代である。専門科は内科系42人、小
児科19人、産婦人科15人、眼科及び研修医各々11人、皮膚科、精神科各々10人、整形外科・リハビリ9
人、外科系6人、麻酔科5人で、内科系、小児科が多く、外科系が少ない。勤務先は、病院が81%、診
療所17%、その他2%で、病院勤務が約8割を超えている。
 【問4~6 家事について】どちらかといえば大変である・大変であるが104人と最も多いが、大変で
ないが32人、配偶者・家族のサポートがあるが72人と同様に多い。家事サービスを利用しているが8人、
楽しいが12人であった。育児について:未経験が70人と多く、配偶者・家族のサポートがあるが58人、ど
ちらかといえば大変であるが54人、楽しいが22人であった。大変だった、大変である、子供は成長したと
書き込みもあった。介護について:若い年代が多いためか、未経験が120人で最も多く、介護施設や介護
サービス等を利用したが19人であった。
 【問7】コロナ禍での影響は、少し影響を受けた81人、変わらない56人、すごく受けた18人であった。
記述では、“普段少ししか行けない学会がWeb開催になったため、フル参加して単位を取得し、セミナーを
たくさん受けることができた”、“発熱外来棟を診療所の外に造った”とコロナ禍での影響は少なく、むし
ろ勉強する時間ができたようである。
 【問8】67人の方にさまざまな感想・意見をいただいた。“興味深い”、“共感できる”、“男女関係なく
キャリアを目指すのは素晴らしいし、パートタイム勤務、家事をしてもよいと思う。どちらも受け入れら
れやすい社会であって欲しい”、“地方では保母さんを雇えない”という感想がある一方で、タイトルや内
容が“衝撃的”、“扇動的”と反発された方もあった。“医師として頑張りたい気持ちがあるが、家庭ができ
たら家庭を大切にしたい”“ロールモデルとして挙がる先生は、優秀で熱心で努力家で素晴らしいと思うが
、もっと平均的で家庭を大切にした先生のモデルを知りたい”、“わが子の成長を自分でしっかり見ていき
たいので、子育てを優先したい”、“立派なキャリアをお持ちで尊敬できるが、働き方の1つだと感じた。
私自身は3人の子育てをし……子ども達の成長を近くで見れてよかった”など、育児や家事に参画する意見が
やや多いように思いました。
 【問9】悩んでいることがある91人(59%)、ないが63人でした。悩んでいることを誰かに、どこかに
相談しましたかに対し、同僚・同期40人、家族・親族36人、友人33人、職場の先輩・上司29人、相談して
いない7人でした。相談の相手はいるようですが、是非医師会ホームページの女性医師支援相談窓口にも
ご相談下さい。

 最後に、女性医師として日頃思っていることに対し64人の方から書き込みがありました。“出産を機に非
常勤の勤務となり、キャリア形成が大きな問題になる。仕事量は男性と同じで多いが家事がある”“子育て
とキャリアの両立が難しい”“妊娠中、子育て中の、待機、当直などの夜間勤務の免除”“女性医師が第一線
でのキャリア継続ができるようなシステムや教育をもっと普及させて欲しい”これらに対しては、保育所や
病児保育のさらなる充実や女性の待遇改善や、男女ともに働き方改革が必要と思われます。
 2009(平成21)年、日本医師会では勤務環境の現況を調査し、女性医師としての悩みとして、「家事と仕
事の両立の困難」、「プライベートな時間や勉強時間の不足」が多く掲げられました。医師会や行政も協力
し、保育の充実や、職場改善に努めました。鳥取県医師会でも2017(平成29)年同様の調査を行いました。
奇しくも40歳台以下が7.5割と若い世代が多く、専門科も内科、小児科が多く、病院勤務医が大多数で今回の
調査と同様の対象でした。今回の調査でも、時短や育児休暇など職場環境の改善の要望が多かったですが、
配偶者・家族のサポートがあるが増加しており、“家事や育児も楽しみたい”との意見もありました。鳥取県は
待機児童ゼロ、小児科や産科が日本一多い。男性の育児参加も高い、などが関係しているのでしょうか。問8
は、医療や医学の分野に果敢に進まれ、育児や家事への時間配分を少なくした一人の女性医師の働き方・取り
組み方です。令和3年の医師国家試験の女性の合格率も昨年と同様33.7%で、今後も女性医師は増加し注目さ
れると思います。女性医師の活躍にはまだまだ環境的、人材的支援や理解が必要ですが、女性の聡明さ、聞く
力、多面的判断能力を生かし、キャリアアップし前進して欲しいと思います。