Joy!しろうさぎ通信『一人の産婦人科医としてできること』

鳥取県立厚生病院 産婦人科 森山真亜子

 厚生病院産婦人科の森山真亜子と申します。産婦人科医になって、早いもので丸8年が経過しま
した。私が産婦人科医を志すきっかけは、月並みですがやはり「出産」に感動し、関わりたいと思
ったからです。しかし、実際に産婦人科医になるとさらに魅力的な診療科であると感じています。
今回は、魅力のひとつである「女性の一生を診る診療科」としての産婦人科の役割について考えて
みました。
 患者さんは、月経不順や月経痛など月経に関わる症状、不妊も含めた妊娠・出産に関わること、
更年期の症状、婦人科腫瘍のことなど、さまざまな症状をもって産婦人科を受診されます。私は産
婦人科医として、女性の味方でありたいと考えています。女性であるがために、特有の症状で悩ん
だり人生を変えてしまったりすることがないようにサポートしたいと思っています。
 月経痛は、薬物治療が可能なものです。適切な治療をせず我慢を続けていると、子宮内膜症など
将来的に不妊の原因となる疾患につながる可能性があります。
 更年期に関わる症状についても、月経痛と同じように「みなが経験しているから病院にかかるも
のではない」と思っている人が多いと思います。しかし、症状には個人差が大きく、中には治療が
必要な人もいます。月経痛も更年期症状も、症状の強さによってはQOLを大きく損なうものです。
内膜症による月経痛などの症状による生産性の損失は、1人当たり年間約18万円という数字が報告
されています。産婦人科を受診するハードルを下げることは女性のためだけでなく、社会のために
もなるのです。
 また、妊娠は男女が平等に責任をもって考えるべきものです。望まない妊娠を避けて、望んだと
きに妊娠できるようにするためにはカップルで取り組む必要があります。避妊には男性の協力が不
可欠であるし、また不妊治療も女性だけでできるものではありません。不妊の原因は、男性因子24
%、女性因子が41%、男性・女性ともに原因がある場合が24%とされています。治療方針に夫婦の
思いが大きく関与する分野であるからこそ、一緒に取り組むべきものです。
 婦人科腫瘍は、産婦人科診療を行う上で非常に重要な分野です。特に子宮頸癌は、発症のピーク
が30−50代と若い年代にあるのが特徴です。子宮頸癌の原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)
への感染を予防するHPVワクチン接種の積極的勧奨が2021年11月に約9年ぶりに再開され、話題と
なっています。ワクチン接種と癌検診とを組み合わせることにより、将来的に子宮頸癌を撲滅する
ことができるとされています。このワクチンを広めることも、産婦人科医としての役割だと思って
います。
 今のところ、産婦人科を受診された方にしか情報提供ができていないのが現状ですが、このよう
な産婦人科の役割を意識して日々の診療にあたりたいと思います。
 女性の役に立てるよう、引き続き頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。