Joy!しろうさぎ通信『ワークライフバランスに必要なもの』

山陰労災病院 腎臓内科 花田日向子

 米子市の山陰労災病院で腎臓内科医として働いております、花田日向子と申します。
 腎臓内科は外来業務・入院業務・透析業務と幅広い領域を担っており、また慢性疾患の患者さん
が多いため継続的な関係性構築と丁寧な診療が必要とされます。急変対応は他科に比べると少ない
印象がありますが、緊急透析や電解質異常への対応など、急ぎの判断が求められる場面は決して少
なくありません。また透析患者は週3回の定期治療を必要とするため、曜日感覚が固定されがちで
家族との予定に柔軟に合わせにくい側面もあります。
 一方の夫は消化器内科医であり、日々私よりも忙しそうにしています。そして今年4歳の子ども
です。赤ちゃんの時ほど手はかからないですが、毎日の保育園の送迎から始まり、突発的な発熱で
保育園から呼び出されたり、朝の急な不機嫌なども日常茶飯事です。
 医師として患者を待たせるわけにはいかない、でも子どもの側に居たい気持ちも強い。この葛藤
は働く私たちの心に重くのしかかります。夫も医師であるため、互いに「今日どちらが動けるの
か」を短時間で相談し、時には双方が急患を抱えておりどうにもならず、近所に住む祖父母に連絡
するという言葉通り『綱渡り』のような毎日です。

 こうした状況で重要になるのが職場の柔軟性です。職場で育児中の医師が少ない場合などは特に
ですが、勤務調整を願い出ること自体に心理的ハードルがあると思います。しかし最近では多く
の病院が働き方改革を推進し、時短勤務や当直免除、リモートでのカンファレンス参加など、比較
的柔軟な体制を整えるようになってきているところも多いと聞きます。それでも実際には使いにく
い「雰囲気」が残っていることも多いのは事実で、制度と実態の乖離は依然として課題となってい
ます。

 幸いなことに、私が働く山陰労災病院腎臓内科はそういった点でとても柔軟です。他の先生へ負
担がかかるのは事実ですが、言い出しにくい雰囲気は全くありません。そのような環境に日頃から
助けられているからこそ、他の先生(男女問わず)が家庭の事情で遅刻・早退する際は、私が代わ
りに仕事を請け負ってあげたい・助けてあげたいという考え方になっているのだと思います。

 そしてもう一つ幸いなことは、夫の協力がしっかりあることです。夫も医師のため多忙であるこ
とに変わりないですが、お互い仕事の大変さを理解しているためか譲り合いの精神があります。例
えば朝の保育園への送迎ひとつとっても、お互いのその日の業務内容を大体把握しているため、
「私は今日は大丈夫」、「今日は早く行かせてほしい」などその日その日で連携を取っています。
もちろん突然の発熱で早退する場合などでどちらも迎えが難しく親へ頼ることもありますが、それ
も相談が早いです。

 ワークライフバランスを整えるうえで鍵となるのは「完璧を目指さない」「無理をしない」姿勢
だと思います。家庭でも職場でもすべてを完璧にこなそうとすると心身が疲れ果ててしまいます。
できないことがあっても責めない、頼れるところには頼る、効率的に動くための仕組みを作る、こ
うした姿勢が長期的に医師としても母としても持続可能な働き方につながるのではないかと思いま
す。

 腎臓内科医としてのキャリアも育児期を乗り越えるとサブスペシャリティの追求、研究や教育、
地域医療、透析管理の専門性などさまざまなステージが用意されています。大切なのは、短期的に
見てペースダウンしていても長い目で見ればキャリアは続いていくということを忘れないことなの
ではないでしょうか。

ワークライフバランスとは仕事と家庭をどちらも均等に配分することではなく、その時々の状況に
応じて柔軟に優先順位を変えながら自分らしい生活を維持していくバランス感覚のことだと思いま
す。4歳児を育てながら腎臓内科医として働くには、そのしなやかさが最も重要だと考えます。