Joy!しろうさぎ通信『ある女医の諸事情』

鳥取県立厚生病院 整形外科 福本優子

 三十路半ばの女医、非医師の夫と2歳の長男、最近生まれた次男の4人暮らしである。
 2年前長男が生まれた時、私の育休に並行して夫も休暇を一時いただいた。一通りの育児は夫婦
2人ともできるようになり、その苦労も2人で味わった。2人で「親」というものになれたと思う。
産後1か月は新生児黄疸で4回入退院を繰り返し、産後の疲れがなかなか楽にならなかった。生後
3か月頃にも感染症で3週間入院した。その入院中は朝から晩、晩から朝の12時間交代で夫と私で
付き添いをした。付き添いで病院にいても家に帰っている時間も休まることはなく、病気と闘う息
子だけでなく我々両親も相当疲弊した。家事、育児の分担という点以外でも、夫婦揃ってでなけれ
ば考えられなかった乳児期だった。夫婦いずれの育休も不可欠でありがたいものだった。
 育休が明けて仕事復帰後、私は通勤に1時間かかるため、保育園の送迎も発熱時などの対応も基
本的に夫が担った。私が待機の日はホテル泊で、月3分の1程度家にいなかった。そのため長男は
ママよりパパに懐いている。イヤイヤ期真っ只中で、何がいやってママがいやなのである。遊ぶの
も食事も食事の準備さえも「ママだめ!パパがいいの!」になっている。普段関わっていない人間
がちょっと代わろうとしてもお呼びでないのだ。私としては十月身重になり、腹痛めて産み、乳痛
めて授乳して育ててきた息子である。見返りを求めるものではないが、嫌がられるのは悲しく寂し
い。仕方なくパパがするが、あまりそちらの負担が大きくなっても今度はパパが体調を崩したりし
てしまう。現在は次男の出産のために産休・育休をいただいており、私が家にいる時間がとれて、
ようやく長男も私に懐くように少し戻ってきた。家庭内のバランスがとれてきたように思うが、ま
た復職後に家庭と仕事のバランスをどう保つか。
 私の現在(今回の次男産前)の働き方は大変融通いただいている。周囲に皺寄せは生じているし、
大変有難いことだと感謝しており、申し訳なくも感じている。ただ現状で働き続けていけるかとい
えば自信がない。自分の家庭の状態を顧みて、もう少し家庭に割く時間が欲しいと思う。仕事を辞
めてしまうまでは、医師になるために勉強してきた高校・大学時代、医師になってからご指導いた
だいてきたことや経験がすべて無になるようで、もったいなく虚しいので現実味がない。しかし、
このまま働き続けるにしては医師として何と頼りないことか。もっと勉強していきたい。家庭のた
めの時間を取ろうと思えば勉強といっても細々になりそう。そんな働き方を許してくださる場所が
あるだろうか。一方で、私だけが女医だから、母だからという枠組みで、働き方の希望を言って良
いわけではないとも思う。他にもご自身の働き方について考えをお持ちの方もたくさんいらっしゃ
るでしょう。私の夫は医師ではなく、育休をいただいて、働き方も色々制限している。我が家で夫
婦の職業が逆だったらと時々考える。男性医師だったら考えられないが、その環境も如何なものか。
そういう仕事を選んだのだからといえばその通りだが、私自身就業してから価値観、考え方が変わ
ったところがある。時代も変わっていく。仕事を選んだ時点のまま働き続けていくしかないのか。
医師ももっと柔軟な働き方ができないものだろうか。
 なんて言えた立場でもない。最早ここに記してしまったが。結局、家族にも職場にも、周りにご
理解いただきながら自身が努力して切り開いていくしかないか。