Joy!しろうさぎ通信『乳がん検診について』
米子医療センター 胸部・乳腺外科 引野 愛莉香
鳥取県医師会の皆様、お初にお目にかかります。米子医療センター 胸部・乳腺外科医師の引
野愛莉香と申します。
出身は松江市で、鳥取大学を卒業したのち松江赤十字病院で初期研修を修了、鳥取大学の胸部
外科へ入局、現在は医師3年目で今の病院に勤務しております。
外科医としてはまさに駆け出しで、至らぬ点ばかりですが周りの先生の助けを得て日々診療に
取り組んでおります。
今回は、乳がん検診についてお話をしようかと思います。
乳がん検診は、40歳から2年に1回マンモグラフィを行うことが推奨されています。マンモグ
ラフィは、より正確な診断のため乳房をしっかりと圧迫し乳腺を広げて撮影することが必要です。
乳腺を広げることで、病変と正常乳腺が重なって検出できなくなってしまうことを防げます。一
方で、圧迫時に人によっては痛みが強く足が遠のいてしまう方もいらっしゃるのが現状です。
マンモグラフィは、腫瘤もですが石灰化を検出する能力が特に優れており、この点に関しては
超音波検査やMRI検査より感度が高い検査です。我々乳腺外科医にとっては欠かすことのできな
い検査ですが、その苦痛から忌避され、日本では検診の受診率も欧米等に比べると低くなってし
まっています。
苦痛が少なく、診断能に優れた検査が開発されることを一女性としても望むばかりですが、現
状ではコスト面や検査にかかる時間等を考慮してもマンモグラフィは乳がん診療に不可欠なもの
です。
少しでも疼痛を軽減するために、検診を受ける時期を調整可能な場合には、乳房が張りやすい
月経前を避けると疼痛を軽減できることがあります。
皆様の周りにも、もしかすると会員の先生方ご自身でも、乳がん検診から足が遠のいている方
がいらっしゃるかもしれません。SNSなどでは、検査時の疼痛の面で一朝一夕には改善が進まな
いこと、なかには無痛分娩がなかなか普及しないことなどへの不安も合わさって医療不信のよう
になってしまっている方も時折見かけます。苦痛を取り除きたい気持ち、すぐにそれができない
歯痒さはもちろんありますが、そのために病気の発見が遅れ根治できたはずの乳がんが患者さん
の命を脅かすことは絶対にあってほしくないと感じます。
人によっては負担を感じてしまうこともある乳がん検診ですが、乳がんは多くのがん種同様、
早期で見つかれば根治を目指した治療ができます。我々乳腺外科医師も、検診で少しでも早く病
気を発見できるよう日々研鑽を積んでいます。もし身の回り、あるいはご自身で最近乳がん検診
を受けていないな、という方がいらしたら、検診の話をしてみてください。もし乗り気でない方
がいらしたら、有用性についてお伝えいただけると大変幸甚に存じます。我々はいつでも、みな
さまが検診にいらっしゃるのを待っています。