Joy!しろうさぎ通信『キャリアアップって?』
米子市 辻田耳鼻咽喉科医院 辻田哲朗
女性医師の場合、出産や育児で時間がとられてしまって医師としてのキャリアアップにはどうし
てもマイナスになると言われていますが、実際に医師としてのキャリアアップだけをみると確かに
そうでしょうが、人生をトータルに見たら果たしてそうなんだろうか?と常々疑問に思っていまし
た。我々男性医師は当然出産という人生の一大事業の経験はできません。女性は男性が絶対にでき
ない出産という人生においてのキャリアアップを経験できているのかもしれません。男性の場合は
それができない代わりに仕事に打ち込んで医師としてのキャリアアップに自分の価値を見出そうと
している。そんな気持ちにもなってしまいます。
ここで自己紹介を少しだけしておきます。ボクの妻は薬剤師をしていて、定年まで薬局で働いて
いました。娘が二人いて結婚して今は家を出ています。共働きのために丁度子どもが育児で手が掛
かる時が、医師として一番忙しくて、ガツガツと勉強や仕事に打ち込みたい時でした。ところがそ
んな時にこそ子どものために時間を割かないといけなくて、思いっきり仕事や勉強がしたいのにで
きなくて、おまけに同僚に置いていかれるのではと一抹不安になりながらも、育児や家事を妻と一
緒に行ってきました。ボクの両親も共働きでカギッ子だったから、自然と小さいころから料理をし
ていましたから、妻の代わりに食事の準備をするのはそれほど苦痛ではなかったです。ただし、夜
は外に出にくいため、上司や同僚との夜の付き合いがどうしても疎かになりがちになり、これも一
人置いていかれるのではと不安を覚えていました。しかしそんな経験は些細なことだったと今にな
っては思えます。
その後、平成元年に米子市河崎で開業しましたが、そこは通称ホスピタウンという医療集合体の
場所で、開業何年か後に施設内保育園を作ろうという話が持ち上がり、小さいながらも保育園の園
長をすることになりました。そこではボク自身は少し離れた位置から保育士さんたちの仕事を見守
る立場でしたが、身近に子どもたちの成長と関わることが出来て貴重な経験をさせていただきまし
た。保育園という狭い社会ですが、その中で子どもたちはケンカしたり、泣いたり、笑ったりを毎
日経験しながら逞しく育っていってくれていました。そしてそんな子どもたちと一緒に親も育って
いくのも知りました。「子育て」じゃなくて「子に育てられ」です。育児はその人の人生において
の大切なキャリアアップの場であり、親も子どもと共に成長する。そんなことを学びました。
今になってわかりますが、仕事だけでなく結婚、出産、育児そして遊びでさえも「医師」として
ではなく「人」としてのキャリアアップになり得ます。今丁度出産や育児で真っ最中の女性医師の
皆さん、もしかしたら今が一番人生で輝いている時かもしれませんね。