平成16年7月1日 平成16年度 No.2
目 次
Ⅰ 指導における指摘事項について
|
Ⅰ 保険指導における指摘事項について
平成15年度、鳥取社会保険事務局が実施した「保険医療機関個別指導」において指摘された
事項をまとめてみましたので、今後の診療の参考にして下さい。
なお、末尾に 返還 と記した事項は、1年間の全患者について自主点検を行い、自主的に保険
者に返還することが命じられたものです。
Ⅰ 診療に係る事項
1 診 療 録
(1)診療内容を記載するに当たっては、具体的に記載すること。
・ 具体的項目が記載されていない甲状腺検査
(2)必要事項の記載が乏しい診療録が認められた。診療録は、保険請求の根拠となるものであり、医師は診療の都度、必要事項の記載を十分に行うこと。
(3)必要事項の記載が希薄な診療録が認められた。診療録は、保険請求の根拠となるものなので、医師は診療の都度、症状、所見等必要事項の記載を十分に行うこと。
(4)必要事項の記載について、看護師が医師の名のもとに診療録に記載している例が認められた。診療録は、保険請求の根拠となるものなので、医師は診療の都度、必要事項の記載を十分に行うこと。
(5)記載内容が判読困難な診療録が認められたので、第三者にも判読できるよう丁寧に記載すること。
(6)医師の診察に関する記載がなく、理学療法が行われている例が認められた。
(7)複数の医師が一人の患者の診療に当たる場合は、診療の都度、署名又は記名押印するなどにより、責任の所在を明確にすること。
(8)訂正は、訂正内容が判読できるよう、修正液等を使用することなく、また塗りつぶすことなく二本線で抹消のうえ行うこと。
(9)手術記事の記載がない例が認められたので、記載漏れがないよう留意すること。
(10)保険診療と保険外診療の診療録は区別すること。
(11)診療録を更新するときは、以後の診療の参考になるよう主症状及び経過所見等を転記すること。
(12)傷病名の「転帰」欄の記載漏れが多数例認められたので、傷病名の転記を適宜記載し、傷病名の整理に努めること。
(13)資格関係欄が記入漏れの診療録が散見された。受給資格の確認は的確に行い、記載すること。
(14)受給資格の確認漏れが散見された。受給資格は、初診時のほか随時確認すること。
(15)投薬・注射処方について、診療録のページが変わった場合には、「do」表示ではなく、処方内容を改めて記載すること。
また、「do」の番号と処方内容が一致しない例が認められたので改めること。
2 投薬・注射
(1)薬剤の使用について、不適切な投与が認められた。保険診療において、薬剤を使用するに当たっては、薬事法承認事項を遵守すること。
(2)薬剤の投与に当たっては、症状の経過や検査結果等に応じて行うこと。
・ ビタミン剤
・ 総合消化酵素製剤
・ ニチファーゲンC
(3)投薬に当たっては、同一の薬剤を漫然と継続することなく、症状の経過等に応じて行うように留意すること。
・ アリナミンF糖衣錠25mgの長期投与
(4)適応外の投与例が認められた。 返還
・ 診療録に病名の記載がないアロフト20mg、ピーエイ錠、フロモックス錠、オイラックスH20g、アトニン0及びレスカルミン注20S
・ 診療録及びレセプトに投与の必要性が記載されていない、経口摂取可能な患者に投与されたビタファント注
・ 慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善以外の目的で投与したプロスナー錠
・ 定められた疾患における血栓・塞栓形成の抑制以外の目的で投与したバファリン81mg錠
・ 定められた場合の呼吸障害・循環機能低下以外の目的で投与したテラプチク静注及びエホチール注射液
・ 診療録に投与の必要性が記載されていない、経口摂取可能な患者に投与されたビタミンC剤
・ 診療録に投与の必要性が記載されていない院外処方せんに係るハルナールカプセル
・ 診療録に投与の必要性が記載されていない院外処方に係るサジテンドライシロップ0.1%
(5)過量投与の例が認められた。
・ 慢性胃炎に対し1日2錠を越えて投与したチーカプト錠 返還
・ 入院患者に対し、オキサロール軟膏を1回40g投与
(6)重複投与の例が認められた。 返還
・
ビタメジンカプセルとメチコバール錠の併用投与
・ オメプラール注とパリエット錠の併用投与
(7)倍量投与の例が認められた。
・ ハルシオン錠を不眠症の患者に対し、1回0.25mgを超えて投与 返還
(8)点滴の必要性の記載がない例が認められたので点滴を実施した場合は、その必要性を診療録に記載すること。
(9)薬剤の必要性が診療録に記載されていない例が認められたので留意すること。
・ 食事摂取可能な患者に対するビタミン剤B群の投与
(10)注射に当たっては、同一の注射を漫然と継続することなく、症状の経過等に応じて行うよう留意すること。
・ ビタミン剤の長期投与
・ ザルソロン5%10ml長期投与
(11)注射に当たっては、経口投与の可能性を考慮し、また同一の注射を漫然と継続することなく、症状の経過等に応じて行うよう留意すること。
(12)ザルチロン注射に当たっては、漫然と継続することなく、症状の経過等に応じて行うよう留意すること。
(13)特定疾患処方管理加算について、治療実態がないにもかかわらず算定している例が認められたので留意すること。 返還
(14)慢性疾患の患者に対し、毎回同じ薬剤を投与するにもかかわらず、頻回に処方している例が認められたので、処方に当たっては、投与日数に留意すること。
3 指導管理
(1)特定疾患療養指導料について、必要事項の診療録への記載が乏しい例が認められたので改めること。
(2)特定疾患療養指導料について、指導内容の要点の記載が乏しいものが認められたので留意すること。
(3)特定疾患療養指導料及び老人慢性疾患生活指導料について、治療実態がないにもかかわらず算定している例が認められた。 返還
(4)特定疾患療養指導料及び老人慢性疾患生活指導料について、指導内容の要点の記載が画一的であるので改めること。
(5)特定疾患療養指導料及び老人慢性疾患生活指導料について、指導内容の要点の記載が一律となっていたり、疾患と指導内容の整合性がないものが認められた。
(6)薬剤情報提供料について、算定した旨が診療録に記載していない例が認められたので留意すること。
(7)算定要件を満たしていない例が認められた。返還
・ 小児科医が診察していることが診療録上認められないにもかかわらず算定された小児科療養指導料
・ 診療録に指導内容の要点の記載がないにも関わらず算定された小児科療養指導料
・ 初診月に算定された小児科療養指導料
・ 患者に対し、処方に係る効能等の情報を記載した文書の交付がなく、また診療録に薬剤情報を提供した旨の記載がないにもかかわらず算定された薬剤情報提供料
・ 受診に対する単なる返事による診療情報提供料(B・C)
・ 療養上の指導の要点の記載が主病と異なる特定疾患療養指導料
・ 別に厚生労働大臣が定める疾患以外の疾患を主病とする患者に対し算定された特定疾患療養指導料
(8)入院栄養食事指導料について、実施時間が確認できないので改めること。
4 傷 病 名
(1)傷病名の記載漏れが認められたので留意すること。
(2)疑い病名については長期にわたり継続することなく、傷病名の整理に努めること。
・ 糖尿病の疑い
(3)疑い病名について、確定病名がつけられている例が認められたので、医学的に妥当適切な傷病名をつけること。
(4)検査、投薬等の査定を防ぐ目的でつけられた医学的根拠の乏しい傷病名、いわゆるレセプト病名が多数認められた。また、傷病名の記載漏れ、診療録とレセプトの傷病名が異なる例が認められた。
書面審査を基本とする現行の医療保険システムにおいて、レセプト病名について保険請求することは不適切なので改めること。
(5)傷病名は、必要に応じて、急性・慢性の区別を付けること。
(6)傷病名の記載のみでは診療内容の説明が足りないと思われる場合には、傷病詳記(病状説明)を記載すること
(7)多数の傷病名が付けられている傾向が認められたので、病名の整理に留意すること。
5 検 査
(1)適応病名のない検査の実施例が認められた。 返還
・ インターロイキン2受容体
・ クリプトコッカス・ネオフォルマンス抗体
・ 抗酸菌群核酸同定精密検査
(2)血液生化学検査について、一律に実施されたセット検査が認められたので、治療上必要な項目を選択して実施すること。
(3)必要性の乏しい実施例が認められた。 返還
・ 慢性C型肝炎に対し、連月に実施された超音波検査
・ 鉄欠乏性貧血に対する連続して実施した血液化学検査 8項目
(4)算定要件を満たしていない例が認められた。
・ 必要性が診療録に記載されていない精密眼底検査 返還
(5)検査は、自覚症状・他覚所見から必要な検査項目を選択して実施すること。
・ 生化学検査
・ B型肝炎に対するHBs抗体価
6 基本診療料等
(1)入院診療計画書の作成について、主治医以外の担当者の記載漏れがないよう留意すること。
(2)入院診療計画書の作成にあたっては、主治医以外の担当者名は、所定欄に記載すること。
(3)入院診療計画未実施減算について、入院診療計画が作成されていないにもかかわらず減算していない例が認められたので留意すること。
返還
(4)入院中の患者の他医療機関への受診は、転医又は対診を求めることを原則とすること。
7 リハビリテーション
(1)入院生活リハビリテーション管理指導料の算定にあたっては、指導を行った日時、実施者名及びその内容の記録を別保管することなく、診療録に記載すること。
(2)無診察治療と疑われる例が認められた。返還
・ 診療録に診察の記録がない日に実施された再診料及び理学療法(Ⅰ)
(3)退院時リハビリテーション指導料について、指導内容の要点の診療録等への記載が希薄であるので改めること。
8 在宅医療
(1)算定要件を満たしていない例が認められた。 返還
・ 診療録に往診した事実及びその必要性の記載がない往診料
・ 診療録に、指示した根拠、指示事項及び指導内容の要点の記載がない在宅自己注射指導管理料
(2)皮膚科軟膏処置に対する在宅寝たきり患者処置指導管理料の算定が認められたので留意すること。
・ 背部湿疹
9 理学療法(Ⅲ)
(1)訓練の記録について不適切な例が認められた。 返還
・ 訓練内容の要点の記載がないにもかかわらず算定
・ 医師の指示がないにもかかわらず算定
(2)実施計画の説明について不適切な例が認められた。
・ 開始時及び3ヶ月に1回以上の説明の要点が診療録に記載されていない
10 麻 酔
算定要件を満たしていない例が認められた。返還
・ トリガーポイント注射で算定すべき筋肉内注射
11 精神科専門療法
通院精神療法について、その要点の診療録への記載が希薄なものが認められたので留意すること。
Ⅱ 請求事務に係る事項
1 基本診療料等
(1)不適切な時間外加算が認められた。 返還
・社会保険事務局に届けていない、当該医療機関独自の休診日に算定された時間外加算
(2)休日加算は、急病等やむを得ない理由により受診した患者に算定できるが、その算定条件に疑義があるので改善すること。
(3)算定要件を満たしていない例が認められた。 返還
・ 保育を行っている日に算定された再診料
2 届出事項等
(1)施設基準の院内掲示について、一部掲示もれが認められたので留意すること。
・ 有床診療所入院基本料(Ⅰ群入院基本料3)
(2)施設基準について未掲示のものが認められたので留意すること。
・ 在宅時医学管理料
・ 在宅末期医療総合診療料
(3)保険医療機関の届出事項に変更があった場合には、速やかに異動届出を社会保険事務局へ提出すること。
・ 標榜診療時間の変更
・ 標榜診療日の変更
・ 標榜診療科
・ 保険医の異動(採用)
3 診 療 録
(1)診療録に、療養担当規則に定められた様式が添付されていないので改めること。
・「診療の点数等」欄(様式第1号(1)の3)
(2)診療録とレセプトの病名が一致していない例が認められた。レセプトは、審査支払機関への提出前に診療録等と照合し、記載事項に誤りや不備がないか等について、十分に点検を行うこと。
4 注 射
(1)不適切な精密持続点滴加算が認められた。 返還
・ 注入速度が30㍉㍑/時以下、以外の例について請求された精密持続点滴加算
(2)キシロカイン注射液を投与するに当たり、トリガーポイント注射に該当する場合には、トリガーポイント注射として請求すること。
5 傷 病 名
(1)診療録とレセプトの病名が一致していない例が認められたので、レセプトは、審査支払機関への提出前に診療録等と照合し、記載事項に誤りや不備がないか等について、十分に点検を行うこと。
(2)レセプトへの病名の記載漏れが認められた。レセプトの提出に当たっては、記載事項に誤りや不備がないか等について、十分に点検を行うこと。
6 指導管理料
(1)算定要件を満たしていない例が認められた。 返還
・ 主病ではない疾病に対する特定疾患処方管理加算
(2)算定要件が誤っている例が認められた。 返還
・
寝たきり老人在宅総合診療科に係る24時間連携体制加算を算定している患者について、連携医療機関に対し診療情報を提供した場合に算定された診療情報提供料(B)
7 処 方
同じ処方番号で違う処方が記載されている。処方内容を変更した場合は新しい番号で記載すること。
8 手 術
不適切な輸血が認められた。 返還
・ 輸血の説明に用いた文章の写が、診療録へ貼付されていない輸血
9 検 査
算定条件の乏しい患者に対する腫瘍マーカー検査が認められたので改めること。
10 その他
保険外負担について不適切な例が認められたので改めること。
・ 診察券の実費徴収