平成15年8月1日

平成15年度 No.2

 

目   次

 

 

 生保個別指導における指摘事項について

 

Ⅱ 会計検査院の指摘に係る調査結果について

 

    Ⅲ 感染症の診断におけるHBs抗原キットについて

 

 

 

 生保個別指導における指摘事項について

 

去る7月17日、鳥取県医師会館において「平成15年度生活保護法による指定医療機関個別指導打合せ会」が開催されました。その席上、平成14年度の個別指導実施結果に係る指摘事項の概要について福祉保健課の嘱託医から説明がありました。指摘された事項を掲載しますので、日常診療の参考にして下さい。

 

 

1.診療録の記載に係る事項(一般科)

 

(1)初診月日の記載漏れ。

(2)処置、投薬の根拠となる症状経過の記載漏れ。

(3)主訴、現病歴、現症の記載漏れ(白紙)が昨年の3倍強であった。記入しないならカルテから取り外しておくこと。

(4)既往歴の記載漏れ。

(5)同一病名の複数記載。

 

2.診療報酬請求に係る事項(一般科)

 

(1)病名整理。

(2)同一病名の複数記載。

(3)カルテにない病名の記載。

(4)初診月日の転記ミス。

(5)カルテからの病名転記漏れ。

(6)治癒した病名の記載。

 

3.精神科に係る事項

 

(1)入院形態の変遷などがまとめられていない。

(2)任意入院・医療保護入院の告知に関する記載が診療録に無い。

(3)隔離したときの告知内容の記載が診療録に無い。

(この項目は努力義務であり、行われていなくても問題はない。)

(4)医療保護入院の定期病状報告が診療録に綴られていない。

(5)診療報酬明細書と診療録の病名に違いが多い。

(6)精神療法の要点の記載が無い。

 

 

(参考)平成14年度生活保護法による指定医療機関個別指導実施結果表

 

14施設実施

 

病院14施設(一般8/精神5/一般・精神1)

 


診療所0施設

 


平成15年度生活保護法による指定医療機関個別指導実施計画

鳥取県福祉保健部福祉保健課

1 目的

被保護者の処遇の向上と自立助長に資するため、法による医療の給付が適正に行われるよう制度の趣旨、医療扶助に関する事務取扱等の周知徹底を図ることを目的とする。

2 対象医療機関

病院:14施設(一般10/精神3/一般・精神1)

3 対象医療機関の選定基準

(1)委託患者が比較的多い病院及び診療所

(2)個別指導未実施又は前回の実施から一定期間経過している病院及び診療所

(3)長期に渡る委託患者が比較的多い病院及び診療所

(4)診療報酬の知事審査結果及び福祉事務所の業務において、指導の必要があると認めた病院及び診療所

4 検査及び指導事項

(1)生活保護制度の趣旨及び医療扶助に関する事務等の理解の状況

(2)診療報酬請求の適否

(3)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、結核予防法等他法活用の状況

(4)保護の実施機関に対する協力の状況

(5)診療録の記載及び保存の状況

(6)診療内容からみた診療報酬明細書と医療要否意見書の適否

(7)長期入院、長期外来患者に対する療養指導の状況

(8)入院患者日用品費の状況

5 指導の方法

(1)原則として、病院は実地指導とし、診療所は集合指導とする。

(2)事務及び診療の状況については、診療録により懇談指導する。

(3)患者処遇については、事前に福祉事務所から医療機関に連絡の上、別添検討票により福祉事務所職員も加えて問題点の解決を図るよう懇談協議する。

6 個別指導に従事する職員

福祉保健課に勤務する生活保護指導職員、嘱託医及び診療報酬明細書審査事務担当者とする。また、必要に応じて郡部福祉事務所嘱託医も従事し、各福祉事務所職員の協力を得て行うものとする。

7 その他

(1)各月の実施予定医療機関は、その都度県医師会と調整の上決定する。

(2)個別指導は、県医師会及び福祉事務所の協力を得て行う。


Ⅱ 会計検査院の指摘に係る調査結果について

 

 

 平成14年度の医療費に関する会計検査院の検査が平成15年7月、市町村に対して実施され、その結果の概要が示されました。

 その指摘事項は次のとおりですので、適正な保険医療にご留意下さい。

 

(1)特別養護老人ホーム等の入所者に対して、配置医師が診療を行った場合に老人再診料・老人慢性疾患生活指導料等を算定できない。

 

(2)日常生活障害加算及び痴呆加算について、算定根拠となる評価及び評価日の記載がないもの又は、評価日が毎月一律1日と記載し算定に疑義。

 

(3)医療従事者の数が医療法に定める基準を満たしていないのに、療養環境加算を算定できない。

 

(4)一般病棟に入院している老人患者に対して、超重症児(者)入院診療加算、準超重症児(者)入院診療加算を算定できない。

 

(5)手術前(後)医学管理料を算定した月に、生化学的検査(Ⅰ)判断料、尿・糞便等検査判断料及び血液学的検査判断料を別途算定できない。

 

(6)術後創傷処置のうち42点を算定するものについて、術後14日を超えて算定できない。

 

(7)人工腎臓を実施した際に使用した透析液について、一律1瓶分の費用を算定し疑義。

 

(8)特別養護老人ホーム等の入所者に対して、配置医師が契約日数を超えて膀胱洗浄を行い処置料を算定し疑義。

 

(9)届出を行っていない経皮的冠動脈形成術の手技料について、70%に減じることなく算定できない。

 

10)別に厚生労働大臣が定める患者以外の患者に対して行った理学療法(個別療法)について、11単位以降を70%に減じることなく算定できない。

 

11)理学療法(集団療法)について、1月に8単位を超えて算定できない。


Ⅲ 感染症の診断におけるHBs抗原キットについて

 

 既に御承知の会員の方が多いことと思いますが、凝集法やイムノクロマト法のように簡便な検査方法によるHBs抗原測定は、下記の資料の如く、その感度が低いという問題点が指摘されております。当医師会としましては、去る4月の時点でスクリーニング検査の場合でも、感度の高い方法での検査を認めて頂けないか、との要望を支払基金および国保連合会の審査委員会に提出致しましたが、審査機関側では現時点で結論が得られず、正式な回答は医師会には届いておりません。

 下記の通達は、審査機関からの回答を得てから皆様に周知する予定でしたが、回答が遅くなりそうですので、とりあえず下記の如く資料として、お知らせ致します。

 

 

 

感染症の診断におけるHBs抗原キットについて

地Ⅱ165 15.3.27

日本医師会常任理事  西 島 英 利

 

 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 日本医師会では、臨床検査精度管理調査を毎年実施しておりますが、その調査結果から、感染症の診断におけるHBs抗原キットの低感度に関する問題点が明らかになりました。それは、多くの施設が弱陽性検体を「陽性」と判定しているにもかかわらず、簡便ではあるが感度が低い検査方法では、「陰性」を判定されているキットが多いことです。

 HBs抗原測定法に関しては、平成12年度の臨床検査精度管理調査結果において、多くの試薬キットが達成している検出感度からかけ離れている感度の低い測定キットが多数報告され、検出感度に問題点が浮き彫りにされました。

 こうした結果を踏まえて、国立感染症研究所体外診断薬委員会での再点検が行われ、平成13年度に厚生労働省から「医薬品安全性情報」として一部のHBsAg検出試薬キット、“特に凝集法やイムノクロマト法のように、簡便ではあるが感度の低い検査方法については適正な使用を行うよう注意すべきである”との通達がありました。(日医雑誌 第126巻・第7号 平成13年10月1日号参照)

 しかしながら、平成14年度の臨床検査精度管理調査結果からは、大きな改善の傾向はみられませんでした。

 患者または被検者ならびに診療責任者(医師、医療機関等)としては、陽性である筈の検体が“陰性”と判定されること、とくにそれがスクリーニング検査として使用される場合には、HBウイルス感染の診断に誤診を招く危険があります。

 したがって、HBs抗原検査の診療上の意義を考慮いただき、医療機関が感染症の診断を実施されます場合には、十分にご留意いただきますよう周知方よろしくお願い申し上げます。


 

 

HBs抗原検査の測定法別結果(14年度)

 

 

 

 

試料14

 

 

試料15

 

測定法

総数

陽性

判定保留

陰性

陽性

判定保留

陰性

RIA

0

0

0

0

0

0

0

EIA

987

2

1

984

939

37

10

FIA

128

0

0

128

111

17

0

CLIA

166

0

0

166

165

0

1

ECLIA

24

0

0

24

24

0

0

ラテックス免疫測定法

174

0

0

174

109

29

35

RPHA

6

0

0

6

3

0

3

粒子凝集法

22

0

0

22

7

1

14

イムノクロマトグラフィ法

752

3

0

749

341

34

376

その他

1

0

0

1

1

0

0

総数

2260

5

1

2254

1700

118

439