平成15年5月20日
                                                                平成15年度 No.1

     目   次


Ⅰ 指導における指摘事項について




Ⅰ 保険指導における指摘事項について

平成14年度、鳥取社会保険事務局が実施した「保険医療機関個別指導」において指摘された
事項をまとめてみましたので、今後の診療の参考にして下さい。
なお、末尾に返還と記した事項は、1年間の全患者について自主点検を行い、自主的に保険
者に返還することが命じられたものです。


Ⅰ 診療に係る事項

1 診 療 録 
(1)診療開始日及び終了日の記載がない入院診療録が認められたので留意すること。
 
(2)独自の略語が使用されている例が認められたので、具体的に記載すること。
・ 生化学検査項目を「肝機能」
 
(3)真正性が疑われる診療録が認められたので留意すること。
・ 指導料の項目の自動印字

(4)保険診療の診療録と自費診療の診療録が区別されていない例が認められたので留意する
こと。

(5)記載内容が判読困難な診療録が認められた。また、独自の略語(生化S2)が使用されている例が認められた。診療録は、保険請求の根拠となるものであり、第三者にも判読できるよう丁寧に記載すること。

(6)転帰及び終了年月日が記載されていない例が認められたので留意すること。
 
(7)傾向的に多数の傷病名が付けられていると認められたので、病名の整理に留意すること。

(8)必要事項の記載がない診療録が認められた。診療録は、保険請求の根拠となるものであり、医師は診療の都度、必要事項の記載を十分に行うこと。
   ・ 保険者の名称、所在地

(9)記載内容が判読困難な診療録が認められたので、第三者にも判読できるよう丁寧に記載すること。

(10)複数の医師が一人の患者の診療に当たる場合は、診療の都度、署名又は記名押印するなどにより、責任の所在を明確にすること。

(11)鉛筆書きが認められたので、必ずボールペン、万年筆等を使用すること。
 
(12)訂正は、訂正内容が判読できるよう、塗りつぶすことなく二本線で抹消のうえ行うこと。 
 
(13)一部負担金の記載漏れが見受けられたので留意すること。

2 傷 病 名
 (1)疑い病名については長期にわたり継続することなく、傷病名の整理に努めること。
・ 胃癌疑い、肝癌疑い及び肺癌疑い
 
(2)医学的に妥当適切でない傷病名が認められたので留意すること。
・ 食欲不振
・ 嘔吐
・ 部位の記載がない筋肉痛
・ 高アンモニア血症疑い
・ 胃けいれん
・ 胃部不快感
・ こむらがえり 

(3)「転帰」欄に一部記載もれが認められたので留意すること。また、傷病名の記載もれが認められたので留意すること。

(4)傾向的に多数の傷病名が付けられていると認められたので、病名の整理に留意すること。

3 投薬・注射
 (1)必要以上の短期間分に分けた薬剤投与の傾向が認められたので、処方せんの発行に当たっては、投薬日数に留意すること。
 
(2)薬剤の投与に当たっては、症状の経過や検査結果等に応じて、その内容を検討すること。
   ・ ビタミンB群の注射
・ セルベックスカプセル、アプレース錠及びガスター錠の3剤同時投与
・ ブミネート
 
(3)薬剤の重複投与の例が認められた。
・ 内服薬の複合ビタミンB剤(ビタメジン)と注射によるビタミンB1製剤(ビタファント注)の併用 【返還】
 
(4)検査による確認がないまま、タンパク分解酵素阻害剤が投与されている例が認められたので留意すること。
・ 慢性膵炎に対するフオイパン錠
 
(5)検査による確認がないまま、鉄剤が継続投与されている例が認められたので留意すること。
・ フェロミア錠50mg
・ 慢性疾患に対するダイビタミックス注
 
(6)長期漫然投与の例が認められた。
   ・ 胃潰瘍に対して8週間を超えて投与されたPPI 【返還】
 
(7)過量投与の例が認められた。
・ 急性循環不全又はショック様状態以外の患者に対するソル・コーテフ500mg注及びサクシゾン500mg注 【返還】
 
(8)適応外投与の例が認められた。投薬に当たっては、薬事法承認事項を遵守するともに、症状の経過や検査結果等に応じてその内容を変更すること。 【返還】
・ 抗生物質が投与されていないにもかかわらず投与されたビオフェルミンR錠
・ 慢性肝疾患以外の患者に対して投与されたラエンネック注
・ 対象となる疾患―状態に対する鎮痛以外の目的で投与されたソセゴン注及びレペタン注
・ 対象となる疾患―状態における不安等の軽減以外の目的で投与されたセルシン注
・ 高血圧症、狭心症以外の患者に対して投与されたアムロジン錠 
・ 整形外科的疾患に対して投与された筋注によるリンデロン注2mg 
 
(9)不適切なビタミン剤投与の例が認められたので留意すること。
・ 食事摂取可能な患者に対するビタミン剤
・ 食事摂取可能な患者に対するシーパラ注 【返還】

(10)薬剤の投与に当たっては、症状の経過に応じてその内容を検討すること。
・ 経口摂取可能な患者に対する静注用鉄剤
・ 心筋梗塞に対するニトロダームTTS
(11)検査による確認が殆どないまま、薬剤が継続投与されている糖尿病患者の例が認められたので留意すること。
 
(12)画一的、傾向的に行われている静脈注射及び点滴注射の例が認められたので留意すること。
 
(13)成分、作用機序がほぼ同一なものが併用投与されている例が認められたので留意すること。
・ デパス錠とセルシン錠
・ ミグシス錠とツムラ呉茱萸湯エキス顆粒

(14)不適切な点滴注射が認められた。
・ ザルソロン又はメイロンを静脈注射で使用することが適当な患者に対して、ソリタT液を補液として実施した点滴注射 【返還】
・ ノイロトロピン特号3ccを静脈注射で使用することが適当な患者に対して、ソルデム
3A200mlを補液として実施した点滴注射 【返還】
・ メイロンを静脈注射で使用することが適当な患者に対して、ブドウ糖液及びソリタT
液を補液として実施した点滴注射 【返還】
 
(15)不適切なブドウ糖注射の例が認められた。
・ ブドウ糖注射の必要性が診療録及びレセプトに記載されていない 【返還】
 
(16)必要以上の多剤投与の例が認められた。
・ パリエット錠又はプロテカジン錠、セルベックスカプセル、ムコスタ錠及びマーズレンS顆粒の4剤同時投与 【返還】

(17)手術後等の感染予防のために抗生物質を投与する場合は、症例毎に適切な抗生物質を選択し、投与すること。
 
(18)同一の注射を漫然と継続することなく、症状の経過や検査結果等に応じて薬剤の内容を変更すること。
    
4 検 査
(1)必要以上に実施回数が多い例が認められた。
・ 生化学検査(Ⅰ) 【返還】
 
(2)算定要件を満たしていない例が認められた。
・ クラミジアトラコマチス抗原検出不能又は検体採取困難な疾患以外に実施されたグロ
ブリンクラス別クラミジアトラコマチス抗体価精密測定 【返還】
 
(3)副作用の有無の確認のための血液検査については、その実施時期に留意すること。
 
(4)必要性の乏しい実施例が認められたので留意すること。
・ 血糖値及びHbA1Cの値が正常にもかかわらず実施されたインスリン精密測定及    び1.5AG測定 【返還】
・ 末梢血液一般検査時において画一的に実施された末梢血液像検査 【返還】
・ 超音波検査

(5)不適切な例が認められた。
・ 鉄欠乏性貧血(疑)に対するフェリチン精密測定 【返還】

(6)検査は、自覚症状・他覚所見から必要な検査項目を選択し、段階を踏んで実施すること。
・ 肝炎ウィルス関連検査

(7)検査は、自覚症状・他覚所見から必要な検査項目を選択して実施すること。
・ 血液学的検査
・ 胃内視鏡検査 
・ 生化学的検査
・ 細胞診検査(婦人科材料)

(8)健康診断として実施された検査を保険請求している例が認められた。
・ 胃透視 【返還】

5 指導管理
(1)痴呆患者在宅療養指導管理料について、指導内容の要点の記載が乏しいものが認められたので留意すること。

(2)特定疾患療養指導料及び老人慢性疾患生活指導料について、指導内容の要点の記載が乏しいものが認められたので留意すること。

(3)悪性腫瘍特異物質治療管理料について、治療計画の要点の記載が乏しい例が認められたので留意すること。

(4)算定要件を満たしていない例が認められた。
・ 指導内容の要点の記載がないにもかかわらず算定された特定疾患療養指導料及び老人慢性疾患生活指導料 【返還】

6 基本診療料等
  患者の症状に応じた受診指導に留意すること。
 
7 処  置
理学療法と消炎鎮痛等処置について、区別が不明確なものが認められたので留意すること。
8 麻  酔
  神経ブロックに当たっては、症例毎に適切な方法を選択し、実施すること。


Ⅱ 請求事務に係る事項

1 診 療 録
診療録の様式が定められた様式(第1号(1)の3)に準じていないので改めること。

2 検 査
(1)算定が誤っている例が認められた。
・1回が限度であるにもかかわらず2回算定されたCEA精密測定 【返還】
・1回が限度であるにもかかわらず2回以上算定されたPIVKAⅡ精密測定 【返還】

(2)算定要件を満たしていない加算の例が認められた。
・ 外部委託検査であるにもかかわらず算定された時間外緊急院内検査加算 【返還】

3 投 薬
 (1)算定要件を満たしていない加算の例が認められた。
・ 厚生労働大臣が定めた疾患以外の疾患(過敏性腸症候群)であるにもかかわらず算定された特定疾患処方管理加算 【返還】
・ 精神科疾患が主病であるにもかかわらず、実態として治療が行われていない厚生労働大臣が定める疾患を主病として算定された特定疾患処方管理加算 【返還】
 
(2)算定要件を満たしていない例が認められた。
・ 厚生労働大臣が定める疾患を主病とした疾患に対する診療実態がないにもかかわらず
算定された特定疾患処方管理加算 【返還】

4 注 射
   算定要件を満たしていない加算の例が認められた。
・ 処方料又は処方せん料が算定されていないにもかかわらず特定疾患処方管理加算を算定 【返還】

5 基本診療料等 
 (1)算定が誤っている例が認められた。
・ 継続受診中の患者に対して算定された初診料 【返還】
・ 健康診断後の精密検査にもかかわらず初診料を算定 【返還】
・ 入院診療計画が未作成にもかかわらず減算せずに算定された入院基本料 【返還】
 
(2)算定要件を満たしていない例が認められた。
・ 診療所であるにもかかわらず算定された紹介患者加算6 【返還】

(3)算定要件を満たしていない加算の例が認められた。
・ 痴呆患者在宅療養指導管理料を算定しているにもかかわらず老人外来管理加算を算定  【返還】
 
(4)受診回数により逓減される再診料について、算定が誤っている例が認められた。 【返還】

(5)診療録とレセプトの傷病名が異なる例、及びレセプトの傷病名が月毎に相違している例が認められた。レセプトは、審査支払機関への提出前に診療録等と照合し、記載事項に誤りや不備がないか等について、十分に点検を行うこと。
 
(6)電話等による再診における再診料の算定について、理解が十分でない例が認められたので留意すること。

 6 届出事項等
(1)施設基準に関する院内掲示がなされていないので、院内の見やすい場所に掲示をすること。
・ 小児科外来診療料 

(2)施設基準の院内掲示について、一部掲示もれ認められたので留意すること。
・ 寝たきり老人在宅総合診療料
・ 24時間連携体制加算(Ⅰ)
 
(3)施設基準等について未掲示のものが認められたので留意すること。
・ 有床診療所Ⅰ群入院基本料1 加算
・ 在宅時医学管理料
・ 在宅末期医療総合診療料
・ 特別の療養環境の提供
・ 保険外負担

(4)届出事項等
   施設基準について未掲示のものが認められた。
・ 有床診療所Ⅰ群入院基本料3 

(5)届出事項等
保険医療機関の届出事項の変更が速やかに行われていない。
・ 標榜診療時間の変更
・ 保険医の異動


7 傷 病 名
レセプトに転帰が記載されていない例が認められた。また、レセプトへの傷病名の記載もれが認められた。レセプトは、審査支払機関への提出前に診療録等と照合し、記載事項に誤りや不備がないか等について、十分に点検を行うこと。

8 指導管理料
  算定要件を満たしていない例が認められた。
・ 診療録に訪問診療の計画及び指導内容の要点の記載がないにもかかわらず算定された寝たきり老人訪問指導管理料 【返還】
・ 検査及び画像診断が手術日前1週間より前に実施されているにもかかわらず算定された手術前医学管理料 【返還】
・ 診療録に指導を実施した旨の記録がないにもかかわらず算定された老人慢性疾患生活指導料 【返還】
・ 在宅維持陽圧呼吸法指導管理料を算定しているにもかかわらず老人慢性疾患生活指導料を算定 【返還】
・ 月2回が限度であるにもかかわらず月3回算定された老人慢性疾患生活指導料 【返還】

9 出来高請求
   算定要件を満たしていない例が認められた。
・ レセプトに急性憎悪等の付記がないにもかかわらず、老人慢性疾患外来総合診療料算定患者に対して行った治療に係る出来高請求
 【返還】

10 処 置
   膀胱洗浄に使用した注射用水の使用量の算定に誤りが認められた。
・ 0.02瓶使用を1瓶で請求 【返還】

11 一部負担金
   徴収もれが認められたので、適正に徴収すること。

12 傷病名等
診療録とレセプトの傷病名が異なる例及び診療録とレセプトの診療開始日が異なる例が認められた。レセプトは、審査支払機関への提出前に診療録等と照合し、記載事項に誤りや不備がないか等について、十分に点検を行うこと。

13 精神科専門療法
   算定要件を満たしていない例が認められた。
・ 退院から4週間経過した後の算定は週1回が限度であるにもかかわらず、週2回算定された通院精神療法 【返還】