平成15年3月1日

平成14年度 No.4

 

目   次

 

 

 「社会保険審査委員会の先生に対する要望事項」の結果について

 

 

 

 

 

 

 「社会保険審査委員会の先生に対する要望事項」の結果について

 

 

平成14年12月、県内の全医療機関を対象に「社会保険審査委員会の先生に対する要望事項」のアンケート調査を実施しました。

会員から22件の要望事項が寄せられ、1月18日開催の社会保障部委員会総会において協議、意見交換を行いました。

その議論を以下のとおりまとめましたので、お知らせ致します。

日常診療の参考にして下さい。

 

 

 

 

一般

1(西部)

1年近くも前に溯って審査の対象になった例があります。医師会と審査委員会との申し合せで、半年以上前のものは審査の対象にしないとの紳士協定()があったとの事ですが如何でしょうか。

【答】

申し合わせでは6か月以内ということになっていますが、保険者による縦覧点検で再審査請求してくるケースがあり、物理的に6か月以上経過する場合もあります。拒否することは出来ず、受け付けていますが、保険者へは申し入れしています。

 

 

 

2(西部)

審査される先生方には心よりお礼を申し上げたい。毎月、診療を犠牲にされて審査会に行かれている。御苦労様と言いたい。

査定された内容をみると医者だったら絶対にしないであろうと思われる査定がみられる。ベテランの社会保険事務員の仕業と考えているがどんなものでしょうか?事務員の査定は法律でも禁じられているはずですので審査会の名のもとに抗議して欲しいものです。

【答】

事務員が査定することはありません。事務員が事前に事務共助し、チェックしたものを審査委員会が審査した結果、査定することがあります。

 

 

3(中部)

再審査を請求して返事をいただいた時、「原審通り」としか書いていない事が多く、今後どのようにして良いのか分らない事があります。今後の勉強のためにも理由等御教示願えませんでしょうか。

【答】

できるだけ理由を書くよう努力しています。今のところ、全例は物理的に無理な面もあります。

 

 

4(東部)

減点を受けたレセプトについて、再審査の為コメントを入れ依頼するも、納得のいく説明もなく“原審通り”との返事のみです。以後のこともありますので詳しい説明があればありがたい限りです。再審査の件数も減るのでは…と思います。

【答】

(議題3の回答に同じ)

 

 

5(西部)

増減点事由のDではなく、具体的な事由で査定すべきです。

前記号のほか、不適当(疑義解釈通知に照らして不適当なものを含む)又は不必要と認められるもの

これは、交通警官に停められた理由を尋ねたとして、「とにかく、道路交通法の安全運転義務違反だ」とだけ言われたのと同じです。事後の請求改善に役立ちません。

,B,Cなどの具体的な事由での審査をすべきだと考えます。

【答】

(議題3の回答に同じ)

 

6(東部)

一次審査を少し厳重にやれば、保険者からの再審査が少し減量するのでは?同時に保険者からの再審査に厳しく対応する姿勢が必要ではないでしょうか。

一次審査で返戻を多くすべきではないでしょうか。審査委員のコメントをつけて…

【答】

○ 充分な時間をとって、一次審査を重点的に実施したい。

○ 保険者からの再審査請求に対しては、厳正に審査を行っています。

○ 返戻できるものは返戻しますが、適正な明細書の提出にご協力願います。

 

 

7(中部)

委員の裁量権の幅が広すぎる。(個人差がひどい)と思いますが、何とかなりませんか。今までフリー・パスであったのが、ある月から突然査定される。何の通達、返戻もなく。如何なる理由でしょうか?

審査委員も人間だから間違いもありましょう。誤りあれば率直に認め訂正して欲しい。

【答】

担当する審査委員は一定間隔で交替していますので、審査委員の交替による現象と思われます。多少の個人差は避けられないですが、審査委員間の格差是正に努めます。

 

 

8(西部)

私は、診療担当規則を尊重し、患者さんの希望もあって私自身の納得出来る医療行為を行っています。

○ 過剰診療査定の場合の根拠を併記して下さい。

○ 適応外、あるいは不適当の査定の場合、診療担当規則のどの項に抵触するのか教えて下さい。

○ 原審査定の場合、レセプトの流れから判断しているような内容が見られますが、時には患者さん自身と面談してみて下さい。

審査は、犯罪者に対してでは無く、市民、勤労者に対して行われます。いわば上意下達の審査には相当の責任が伴うものと思います。従って、常々言われているように懇切丁寧な指導を要望致します。また集団審査と聞き及びますが、結果の責任はすべて委員長にあるのかお教え下さい。

【答】

○ できるだけ書くよう努力しています。(議題3の回答参照)

○ 患者との面談は現実的には困難と思われます。支払基金では疑問な点にお答えする医療機関向けの「面接懇談」の制度がありますので、活用してください。

○ 審査は「合議制」で行われており、審査委員個々の責任は問われないことになっています。最終責任は委員長ではなく、基金又は国保連合会にあります。

9(西部)

○ 審査結果がもう少し早く主治医に返却されるようにしてほしい。

○ 保険上のしばり、まるめ方式も理解出来ない訳ではないが、医学的及び臨床の立場に立った上での審査も配慮する必要があると思われる。

○ 意見書を書き再審査を提出し、その上で点数削減の場合も理由がわかるようにしてほしい。

【答】

○ 審査結果が遅いのは、保険者からの再審査請求があって、再審査の結果によるものと思われます。(議題1の回答参照)

○ 医師の裁量権は十分配慮しています。

○ (議題の3の回答参照)

 

 

10(西部)

疾病に対しての処置あるいは使用した薬剤等を査定していただき、大変御苦労様です。しかし、思いあまって使用したものを査定されてしまいます。できれば、それに対する対案を御示し願えれば幸いに思います。

【答】

そのような特殊な例の場合、レセプトに注釈をつけて頂くと審査委員も理解し易いと思います。また、納得のいかない場合は再審査請求をしてください。

 

 

11(西部)

医療経済学上保険のうえに成り立っていることは十分に承知しており、恐らく80~90%の患者さんの治療は保険内で治療出来ると思っており、その努力はしてゆく所存です。ただ、われわれ消化器外科で悩むことは、合併症が起きた場合、病名と病態がなかなか合わないことも多く、高価な薬剤(抗生剤、グロブリン製剤、アルブミン製剤)も適用範囲を超すこともあります。このような場合、ついどこまで治療をやるべきなのか、癌末期とは違いますので救命の可能性は少なからず存在しています。審査の先生方では、治療の妥当性などはどこで判断されているのか、御教授下さい。

もう一つ、このような時どのような形で薬剤、病名を注釈書に書くと一番読みやすく、理解しやすいと思われますか。

2点お願い致します。

【答】

このような例は高額であることが多く、高額のレセプトは専門部会で合議制で審査しています。(内科系15万点以上、外科系20万点以上) 使用の必要性などの状況がわかるようにレセプトに注釈を記載してください。

注釈を記載する場合は、読みやすい文字、できればワープロでの記載をお願いします。

皮膚科

12(西部)

SLEを疑って抗核抗体の検査をしましたが査定されました。LEテストなら良いとの事ですが、初期のSLEこそ敏感な抗核抗体、抗DNA抗体が必要であろうと思いますし、LEテストのみでSLEの診断材料にしますと多くの症例を見逃したり、誤診の原因となります。現在では、ただし書にもSLEの診断には抗核抗体、抗DNA抗体検査必項と書かれています。SLEの疑いでも抗核抗体くらいは認めて欲しいと思います。

【答】

スクリーニング的には「簡易法」で行い、ある程度診断根拠が出たら、精密検査をしてください。診断の根拠等を注釈として記載して頂けるとよいでしょう。

 

 

13(西部)

○ 返戻の回答は、A―1などの略号ではなく、きちんとした(具体的な)言葉にして頂きたい。

○ 鶏眼・胼胝処置などに対して「一連」とはどのくらいなのか(期間、回数)を根拠をもって明確に示して欲しい。A先生には、終了としたら翌月でもOK、B先生には3ヶ月間を開けろ。いずれも根拠はなしでは困る。

○ 化膿性粉瘤を切開して内容物を出し、創が安定してから縫合した場合、切開と創処理とした。ところが、創処理時には局麻を明示してあるにもかかわらず、創処理は術後創処置とされたが、いかがなものか。

○ プレドニン眼軟膏をアトピー性皮膚炎に伴う眼瞼炎に対し処方したら、アトピー性皮膚炎では駄目とのこと。眼瞼炎とわざわざ保険病名がいるのか。

【答】

○ (議題3の回答参照)

○ 根拠をもって明確に示すことは困難です。中国四国ブロックの会議では「3か月程度」とされています。転帰をきちんとして、一度治癒となっていればよいでしょう。

○「術後創処置」で算定してください。

○ 返戻としています。病名がないと保険者から再審査請求されます。病名が必要でしょう。

 

 

泌尿器科

14(西部)

日頃の審査に敬服しています。レセプトの返戻のほとんどは当方のミスで申し訳ないと思っています。

小生の専門としている泌尿器科で最近、性風俗の乱れが著しく、青年が診療に来院することが多くなっています。淋病、クラミジア尿道が圧倒的に多く、今後の人口の減少が心配されます。不妊がふえるため。不妊の青年が増えないように充分な検査治療を行うよう努力していますが、どうしても医療費がアップしがちです。このあたりをご理解いただきたいと存じます。

【答】

了解しました。

 

 

整形外科

15(西部)

温シップと冷シップの両方必要な患者さんがおられます。温シップは腰部に、冷シップは肩に使用したいと考えております。この使用の方向は保険診療上問題でしょうか。

【答】

問題はありません。ただ、使用部位を記載してください。また、枚数が多くなるのでご注意ください。

 

 

16(中部)

○ 関節リウマチに対する関節形成術(Sanve ka pandji法)が単なる滑膜切除術に減点されますが、同手術は滑膜切除術と尺側偏位防止のための柵形成術を同時に行う術式であり、関節形成術で算定してほしい。

○ 人工股関節置換術に際し、高度臼蓋形成不全を有する患者に骨移植による臼蓋形成術を同時行う際、移植骨の生着を目的に使用するボルヒール(フィブリンの糊)が査定減となるが、使用可能としてほしい。

【答】

○ 議論の余地がありますので、基金・国保連合会間で協議したく思います。関節形成術では少し高く、現時点では滑膜切除術ということになります。

○ 不適当のことが多いと考えられ、習慣的あるいは生着目的に使用すると査定となっています。

 

 

内科

17(東部)

胃潰瘍で内視鏡がしてあって、ピロリ菌の検査が出ていて、除菌療法がしてあればヘリコバクタピロリ菌感染症の病名がなくても通してほしい。→査定された。

これで査定する必要はないと思うが。

【答】

やはり病名を記載してください。記載のないものは返戻としています。

 

 

18(西部)

強力ネオミノファーゲンC(SNMC)100ml/日投与に関する要望

わが国に多いウイルス性慢性肝炎(B型、C型)に対して、肝炎ウイルスを排除する目的で、B型慢性肝炎に対してはラミブジンの抗ウイルス療法、C型慢性肝炎に対してはインターフェロンやリバビリン療法が行われており、対症療法として、ウルソデオキシュール酸(ウルソ)の内服とSNMCの静注が最も一般的であります。

SNMCはGOT、GPTの上昇例に対して、炎症の沈静化、ならびにその結果生じる肝機能異常の改善と肝細胞癌発生抑制のために、通常SNMC40~60mlを連日静脈内に注射して経過を観察し、GOT、GPTの低下とともに、SNMC40ml3回/週に減量する治療が行われます。SNMC40~60mlの投与でトランスアミナーゼの低下が認められない難治性肝炎では、SNMCを100ml/日まで増量して4週間前後投与を続けたり、週3回の100ml/日投与で経過を観察する症例も存在します。特別な自覚症状がなければ、再来通院で100ml/日投与を続けるのが一般的で、医療費の低減にもなります。

難治性肝炎に対するSNMC100ml/日療法について御理解をお願い致します。

【答】

原則として外来で3アンプル、入院で5アンプルまでは「可」と考えます。レセプト1枚では判断できないものがありますので、注釈を記載してください。傾向的と考えられると問題となります。

 

 

19(中部)

難治性ネフローゼ症候群等にて高度の低アルブミン血症が頑固に続いて、四肢浮腫や胸腹水が利尿剤を併用すれど仲々改善しない場合には2週間以上続けるアルブミン製剤の投与も認めて欲しい。

【答】

原則として「アルブミン25mgを15日までは認める」と申し合わせしています。ネフローゼ、肝硬変はあまり制限していません。

 

 

眼科

20(西部)

両眼底疾患があり月2回来院、1回眼底検査56×2(両)2回で56×4を56×1のみ可で、56×3を削られましたが、1回に両眼検査も不可なのでしょうか、理解出来ません。理由を教えて下さい。

【答】

「56×2」で算定可と考えますが、レセプトに両眼底の病名が記載してあることが必要です。「56×4」はケースバイケースですので注釈を書いてください。

 

精神科

21(東部)

○ セロクエルやジプレキサ投与中の患者に対して現在、「○○○投与中の高血糖疑い」というただし書きを付けて血糖検査をしていますが、セロクエルやジプレキサ投与中であれば、ただし書きなしで血糖検査を認めていただきたい。また、HbA1Cも同様に認めていただきたい。

○ 入院時検査としてHBs抗原検査は認められていますが、現在問題となっているのは、むしろC型肝炎であるため、HCV抗体検査も入院時検査として認めていただきたい。

【答】

○ 血糖検査は認めています。HbA1Cは不可です。

○ HCV抗体検査は現在のところ統一見解がありません。今後、検討致します。

 

 

産婦人科

22(中部)

○ 切迫流産の超音波検査を4回/月に認めてもらいたい。

○ クロミット処方中の卵胞モニターも3回/周期は必要です。

○ 貧血の治療に処方する錠剤と併用して処方する安価な胃の粘膜保護剤に病名は必要でしょうか。

【答】

○ 入院の場合、週1回認めています。外来の場合、検査のみで治療のないものは週1回だと返戻されますが、2週間に1回は認めています。症状に変化があれば多少認めます。

○ 卵胞モニターは原則、保険適用外です。ただし、排卵誘発剤使用時は卵巣過剰刺激症候群発現の危険性が高く、超音波検査を認めています。(HMGは月3回程度まで、他の内服剤については月1回程度)

○ 診療内容からみて類推できれば可ですが、175円以下の低薬価のクスリであっても、トラブルを避ける意味から病名を記載した方が無難です。