平成13年12月1日
平成13年度 No.2
目 次
Ⅰ 社会保障部常任委員会での提出議題について
Ⅱ 施設入所者に係る保険診療の取扱いについて
Ⅰ 社会保障部常任委員会での提出議題について
平成13年11月1日、社会保障部常任委員会を開催しましたが、その際の各委員提出の議題を掲載し、当日の議論を踏まえて【県医注】として簡単な注釈を加えました。今後の診療の参考として下さい。
1.理解に苦しむ査定について(東部)
先回の査定で、アスパラCaを骨粗鬆症に使用した件で、“骨粗鬆症の病名があるのになぜ使用したのか”という全く理解に苦しむ返戻があった。
とかく、時々、理解に苦しむことがある。
【県医注】背景が分からないので、何とも言えない。
2.再審査の返事について(東部)
今まで何度も高血圧、高脂血症の病名をつけている患者さんの薬剤(高圧剤、高脂血症の薬剤)が査定・減額されました。何度、再審査願を出しても「原審通り」としか返事がありません。
今のような保険審査のやり方は一方的です。改めるべきと思います。
【県医注】詳細が不明で、何とも言えない。量が多いのか?
3.減点の理由を知らせてほしい(東部)
在宅患者において在総診を採用しているが、急性増悪の場合、週3回を超えて訪問したが、その超えた分を減点された。病名の不備があるかもしれないが、減点したはっきりした理由を知らせてほしい。
【県医注】訪問日、訪問の理由が付記されていなかったのか? 査定理由のDはいずれの理由でもこれに入る。ABCDの記号でなく、理由を付記して欲しいものである。
4.健診と保険診療の初診料・再診料の取扱い(東部)
いつも鳥取市の胃検診で胃内視鏡を同時にして、胃生検を保険で行なった場合、再診料・初診料の請求は認められません。
しかし、2000年5月の東京高裁における裁判で、健(検)診時に引き続き保険診療に移行した患者に、初診料や再診料を請求できるということが問われました。
判決は、昭和25年の厚生省課長通知(2821号)は、「かかる場合、初診料を請求してはならぬという根拠とならない」という旨のことが明言されました。つまり、健診と保険診療を同時にした時、初診料・再診料をとった医師が勝訴しました。
よって、鳥取県でこの判例に従うと、健(検)診時に、初診料・再診料を請求しても合法と考えます。
私1人の力ではこういうことを言っても力になりません。何卒、医師会としての団体としての立場で、こういうことが認められるようでしたらよろしくお願いします。
【県医注】平成12年4月版「医科点数表の解釈」で、初診料は算定不可と明記されているが、再診料についての記載がない。中国四国医師会社会保険研究会での議論では、再診料は認めている県が多い。本県でも認めるべきと考える。(平成13年10月発行の県医師会報第556号19頁を参照。)
5.NSAIDとPPIの併用投与について(基金)
【県医注】NSAIDの副作用としての潰瘍に対し、PPIが必要になる。「RA、膠原病に対するNSAIDとPPIの併用は必要であり、査定しないように」との働きかけが、消化器学会より医師会を通して基金になされ、基金では認める方向にある。
他の疾患ではNSAIDの方が査定されるようである。
6.審査員間、審査機関間、他都道府県間の審査格差是正努力の有無(西部)
【県医注】是正しようとすると厳しい方になる故、格差はそのままにしておいた方がよい、とする意見もあった。格差はある程度、やむを得ないが、出来るだけ是正に努める、とのことであった。
7.禁忌薬剤の処方の可否とその査定の基準(西部)
【県医注】医師の裁量を認めるべきであるが、原則禁忌となるであろう。
8.疑い病名での投薬の査定、その理由(西部)
【県医注】九州各県では、まず認めていないのが大部分とのこと。検査は認めても治療は認めないのが原則といえるようだ。
9.具体的細菌性感染症病名の無い、急性上気道炎症病名での抗生剤の注射と内服の併用の是非(西部)
【県医注】内科以外の科でよく行われているらしい。
10.外来における複合ビタミン剤注射の点滴混注の是非(西部)
【県医注】安いものならよいが、活性型の高いものが使われている場合が問題とされている。
11.特定疾患療養指導料や老人慢性疾患生活指導料算定中の患者が、短期手術(例えば白内障)で入院した場合、その月は両指導料が算定出来ない。知らずに請求して数ヵ月後に査定される。(西部)
【県医注】1日入院の場合等、本人は入院との意識がなく、主治医にも伝えない。規則が改正されない限り解決しないであろう。
12.強ミノCの量的制限、本県の対応(西部)
【県医注】最高量の100mlは入院では認められるが、外来では20~60 mlとの意見や、入院・外来の区別なく100mlは3週間まで、との意見があった。
13.降圧剤の多剤併用の是非、その薬剤数制限の存否(西部)
【県医注】九州地区では、3剤以上はコメントが必要で、4剤まで認める、との意見があったらしい。
14.介護保険における各種併算禁止(西部)
【県医注】制度改正を求めるしかない。
15.集団的個別指導における類型区分について(県医)
形成外科の取り扱いについて。
【県医注】形成外科は現在、皮膚科に区分されているが、外科に区分して欲しいとの要望が出されている。外科に入れることになった県もあるようであるが、本委員会では積極的な意見は出ず、標榜科目に外科を加えればよい、とする意見が出された。
16.保険者からの再審査請求による査定について(県医)
保険者からの再審査請求によって査定される場合、同一項目で長期間にわたって査定されることがある。この場合、明らかに不適切な例は別として、解釈の仕方によっては認められるような例の場合、一次審査で通した審査会側に責任はないか。
【県医注】確かに問題であり、助けてあげる方向で対処したい、との審査委員の言葉であった。
17.インスリン治療者のレセプト記載事項について(県医)
支給日数(30日分等)の記載が求められているが、記載内容によっては査定があり得るか。あまり意味の無いことのように思われるが。
【県医注】レセプト点検センターから指摘されたことで、そのような規定になっているのであればやむを得ないこと、とされた。
18.インスリン製剤の使用“禁忌”について(県医)
本年8月、インスリン製剤の“禁忌”として、「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」が新たに加えられた。局所のインスリンアレルギーに対しては、抗ヒスタミン剤を使用しながらインスリンを継続すべきであり、全身性のアレルギーに対しては、脱感作してインスリン使用を可能にしてインスリンを継続すべきであって、“禁忌”は不適切と思われる。審査にあたって配慮して頂きたい。
【県医注】審査委員に対する要望である。
Ⅱ 施設入所者に係る保険診療の取扱いについて
平成13年6月、会計検査院会計実地検査が県内の各市町村で行われ、特別養護老人ホーム等に入所中の患者に対する保険診療について、不適正な事例が指摘されました。
その改善方について、以下のとおり鳥取県福祉保健部長から会員への周知方依頼がありましたのでお知らせ致します。
特に、特別養護老人ホーム等の配置医師、あるいは施設入所中の患者を診察される先生方は、保険診療の取扱いについてご留意願います。
施設入所者に係る保険診療の取扱いについて
平成13年12月12日
鳥取県福祉保健部長
1 平成13年6月に実施されました県内市町村に対する会計検査院会計実地検査において、特別養護老人ホーム等(以下「施設」という。)に入所中の患者(以下「入所者」という。)に対する保険診療について、不適切な事例が見受けられました。
【会計検査院指摘事項】
(1)施設の配置医師が入所者に対し行った診療について、保険医療機関が算定できない初診料、再診料等を保険請求している。 (2)施設の配置医師以外の医師が、定期的に入所者に対して診療を行い、保険医療機関が算定できない再診料等を保険請求している。 (3)健康診断を保険診療として請求している。 |
2 施設における保険診療の取扱いについての留意点は、次のとおりです。なお、詳細については、「特別養護老人ホーム等における療養の給付(医療)の取扱いについて」(「医科点数表の解釈 平成12年4月版(社会保険研究所刊)」1045頁)を参考にして下さい。
(1)保険請求できない項目
【保険医が配置医師の場合】
ア 初診料、再診料、老人初診料、老人再診料、小児科外来診療料、往診料 イ 「指導管理等」及び「在宅医療」の一部 |
【保険医が配置医師以外の場合】
ア「緊急の場合」又は「患者の傷病が配置医師の専門外の場合」に限って、保険請求できますが、それ以外の場合には、保険請求できません。 ※ 定期的に診療を行った場合は、配置医師と同様の取扱いをします。 イ「指導管理等」及び「在宅医療」の一部 ※ 保険請求できない項目は、保険医が配置医師の場合の取扱いより少ない。 |
(2)施設の職員が行った医療行為については、保険請求できません。
3 診療報酬明細書の記載方法
施設入所者に係る診療報酬明細書の記載については、次の点に留意してください。
(1)診療報酬明細書の「特記事項」欄に次の事項を記載すること。
施:保険医が施設に赴き、診療を行った場合
(2)診療診療報酬明細書の「摘要」欄に次の事項を記載すること。
配:配置医師が当該施設の入所者に対し、診療を行った場合
※ なお、この場合には、配の横に回数を記載してください。
4 御不明な点がありましたら、次のところまで御連絡ください。
鳥取県福祉保健部 長寿社会課 国保医療係
電話 0857-26-7165・7166