平成13年6月1日

平成13年度 No.

 

           目   次

 

 

   厚生労働省と県との共同指導による社会保険医療担当者の個別指導の

実施結果について

 

  Ⅱ 社会保険事務局との打ち合わせ会報告(追加)

 


 

 厚生労働省と県との共同指導による社会保険医療担当者の個別指導の実施結果

について

 

昨年度、某診療所を対象に共同指導が実施されました。その際の指摘事項を掲載しますので、今後の診療の参考として下さい。

 

 

 1.診療に係る事項

 

(1)診療録 

① 必要事項の記載が乏しい診療録がある。診療録は保険請求の根拠となるものであり、医師は診療の都度、必要事項の記載を十分に行うこと。

② 医師は記録の都度、署名又は記名押印するなどにより、責任の所在を明確にすること。

③ 鉛筆による記載があるので、ペン書きとすること。

④ 診療録を訂正する場合は、塗りつぶして訂正することなく二本線で抹消して訂正すること。

 

(2)傷病名 

① 診療録の傷病名の「転帰」欄の中止年月日の記載漏れが多数ある。また、急性病名や疑い病名が長期にわたり継続することは不自然なので、傷病の転帰を適宜記載し、傷病名の整理に努めること。

② 傷病名を重複して付けている例がある。(慢性胃炎の重複、狭心症と虚血性心疾患、両腎のう胞と右腎のう胞)

③ その他不適切に付けられた傷病名がある。(レセプトと診療録の傷病名が異なる例、傷病名の記載漏れ)

 

(3)基本診療料等 

① 医師の適切な診察がなく、投薬が行われている例がある。

② 慢性疾患の患者で、1月以上受診間隔が空いたものについても明らかに継続した診療であるので、本来は再診とすべきところを初診としている例がある。

③ 他保険医療機関からの対診の場合は、依頼元の保険医療機関で包括となるものは算定できないので注意すること。

 

(4)指導管理・在宅医療 

① 指導・管理料、在宅患者診療指導料、在宅療養指導管理料については、患者の適応、診療録の記載等算定要件が定められているので注意すること。

② 次の項目で算定要件を満たしていない例がある。

イ)特定薬剤治療管理料

・薬剤の血中濃度が測定されていない。

ロ)薬剤情報提供料

・レセプトと診療録の回数に相違がある。

ハ)特定疾患療養指導料

・服薬、運動、栄養等、記載要件とされている療養上の指導内容の要点の記載がない。

・本人に対して診察をしていない場合にも算定されている。

・「指示せんによる」とした場合で、指示せんが診療録に貼付されていない。

③ 在宅酸素療法指導管理料について、携帯用酸素ボンベ加算の算定を誤っている例がある。

・携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算を算定している。

 

(5)検査・画像診断 

① 検査は、自覚症状・他覚所見から必要な検査項目を選択し、段階を踏んで実施すること。

② 検査回数は、必要最小限の回数で実施すること。

③ 結果が治療に反映されない検査は、研究的・健康診断的検査と見なされ、保険請求は認められない。

④ 算定要件(対象、回数、診療録の記載等)が規定されている検査に注意すること。

⑤ 血液生化学検査が一律17項目実施されているが、必要に応じて検査項目を選択すること。

⑥ 一連として撮影した体幹のCT撮影について、胸部と腹部を分けて算定している例がある。

 

(6)投薬・注射 

① 投薬・注射にあたっては、薬事法承認事項を遵守すること。

② 治療上1剤で足りる場合には、1剤を投与し、必要があると認められる場合に2剤以上を投与すること。

③ 抗生物質は抗菌スペクトルを十分考慮し、適宜薬剤感受性検査を行い、漫然と投与することのないよう注意すること。

④ 以下のような不適切な投薬例がある。

イ)強力ネオミノファーゲンを蕁麻疹の患者に対して、20mlを超えて40mlを投与。

ロ)ビタミン製剤(B群)投与の必要性が診療録及びレセプトに記載されていない。

ハ)クラビットの極量(1日6錠)の35日間投与。

⑤ トリガーポイント注射を行ったものについて、トリガーポイント注射だけでなく筋肉注射も重複算定している例がある。

 

(7)リハビリテーション 

① 訓練の開始時刻及び終了時刻の記載がされていない。

 

(8)処置・手術 

① 不適切に請求された手術の例がある。

イ)一連の輸血につき、輸血の必要性・危険性について、患者等に対する文書による説明と同意がなされていない。

ロ)皮膚腫瘍切除術を行ったものを皮膚切開術として算定。(過少請求)

 

 

 2.請求事務等に係る事項

 

(1)総論的事項 

① 診療内容のコンピューターへの入力にあたっては、入力内容と各種帳票との突合を適切に行い、入力ミスのないよう万全を期すこと。

② レセプトの記載のみでは診療内容の説明が足りないと思われる場合には、傷病詳記(病状説明)を添付すること。

③ レセプトは審査支払機関への提出前に必ず主治医自らが診療録等と照合し、記載事項に誤りや不備がないか、等について十分に点検を行うこと。

④ 受給資格の確認は、初診時のほか少なくとも毎月1回以上は行い、確認した旨を診療録の余白等を利用して記載すること。

 

(2)基本診察料等 

① レセプトの再診回数及び休日加算の回数と、診療録の記載内容が相違している例がある。

 

(3)一部負担金等 

① 日計点数と一部負担金等の徴収金額が相違している例がある。

 3.自主返還に係る事項

 

今般の指導によって明らかとなった不適切事項のうち、以下の事項に該当するものについては、この度指摘した事例を含め、さらに平成12年3月診療分から平成13年2月診療分の12か月間の全例につき自己点検の上、自主的に保険者に返還すること。

 また、患者から徴収した一部負担金についても差額の返還を行うこと。

 

(1)基本診療料等で指摘した事項 

① 医師の適切な診察なく診療が実施されたものについては、基本診療料及び特掲診療料の全額。

② 慢性疾患の患者で、1月以上受診間隔が空いたもので、再診とすべきものを初診として算定したものについては、初診料と再診料の差額。

 

(2)指導管理・在宅医療で指摘した事項 

① 算定要件を満たしていない例。

イ)特定薬剤治療管理料

ロ)薬剤情報提供料

ハ)特定疾患療養指導料

② 算定を誤った在宅療養指導管理料。

イ)在宅酸素療法指導管理料について、携帯用酸素ボンベ加算とすべきところを、携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算として算定したものについては、その差額。(審査支払機関で査定されたものを除く。)

 

(3)検査・画像診断で指摘した事項 

① 不適切に請求されたセット検査の実施例については、必要な項目のみを実施したものとの差額。

② 一連として撮影した体幹のCT撮影の誤請求については、正しい点数との差額。

 

(4)投薬・注射で指摘した事項 

「過量投与」と指摘した薬剤については、適正投与した場合の薬剤料を超過する分の薬剤料。

「長期漫然投与」と指摘した薬剤については、適正期間投与した場合を超過する分の薬剤料。

③ トリガーポイント注射と筋肉注射を重複算定したものについては、筋肉注射にかかる請求部分の全額。

 

(5)リハビリテーションで指摘した事項 

① 訓練の実施の記録が不備な例については、その全額。

 

(6)処置・手術で指摘した事項 

① 算定要件を満たしていない輸血については、それに係る手技料、特定保険医療材料及び薬剤費用の全額。

 

(7)請求事務等で指摘した事項 

① 再診回数、休日加算の誤算定については、正しいものとの差額。

      一部負担金について不適切に請求していた部分については、患者に返還すること。


Ⅱ 社会保険事務局との打ち合わせ会報告(追加)

 

今年度の保険医療機関指導計画打ち合わせ会の内容は、県医師会報(平成13年5月号)で報告済みですが、次の2点を追加報告致します。

 

 

(1)個別指導における自主返還に対する苦情について

 

個別指導には自主返還を伴うことがあります。自主返還の事項に関しては、指導の際に指摘がなされ、本人が納得済みの場合がほとんどですが、中には、実際に自主返還が申し渡された時点で、どうしても納得がいかない、という場合もあるようです。その場合、どこに申し出ればよいか、との問い合わせが会員からありました。

そこで、社会保険事務局との打ち合わせの際、事務局側に問い合わせました結果、自主返還の際には同意書を提出することになっていますが、「その同意書を提出する前に社会保険事務局まで申し出て頂く」ということになりました。その場合、事務局では、指導の際の立ち会い医師の意見を伺い、再検討することとなりました。

 

 

(2)有床診療所入院基本料を算定する保険医療機関の確認調査について

 

平成11~12年度は療養型病床を有する有床診療所を対象に、有床診療所看護実施状況確認調査が実施されました。今年度は、療養型病床で対象となった機関を除く有床診療所を対象に、確認調査が計画されております。今回は、病床数10床以上で、入院基本料1群の1または2を届け出ている21医療機関を対象に、8月か9月以降に予定されています。以下の事項等が調査される予定です。

・出勤簿、賃金台帳による看護婦(士)数

・看護計画

・夜間における看護婦(士)の配置状況

・入院診療計画

・院内感染防止対策