平成12年8月1日
平成12年度 No.1

目 次

I厚生省と県との共同指導における指摘事項について



I厚生省と県との共同指導における指摘事項について

この程、厚生省と県との共同指導が県内の病院(1件)を対象に実施され、その指導結果について鳥取社会保険事務局より通知がありました。その指摘事項の概要をまとめましたので、お知らせ致します。古くから指摘され続けている項目もあります。今一度熟読していただき、今後の保険診療の参考にして下さい。

【総論的事項】

(1) 診療録の取り扱いが不適切と思われる。診療録には、医師自らが必要事項を記載し取り扱うこと。 また、診療録は、保険請求の根拠となるものであるから、医師は診療の都度、遅滞なく記載すること。

(2) 傷病名について、傷病名の記載漏れ、根拠に乏しい傷病名、いわゆるレセプト病名などが多数認められる。書面審査を基本とする現行の健康保険システムにおいて、レセプト病名を付けて保険請求することは、不適切なので改めること。また、傷病名の整理を適宜行うこと。

(3) 指導・管理料について、必要事項の記載がないなど算定要件を満たしていない例が多数認められるので改めること。

(4) 検査について、不適切に施行されたものが多数みられる。検査は、個々の患者の状況に応じて必要な項目を選択し、段階を踏んで実施すること。また、必要最小限の回数で実施すること。

(5) 薬剤の使用について、禁忌、適応外、過量など不適切な投与が認められる。保険診療において薬剤を使用するにあたっては、薬事法承認事項を遵守すること。

(6) 請求事務について、誤請求が認められる。診療部門と事務部門との十分な連携を図り、適正な保険請求に努められたい。また、提出前に主治医自らがレセプトの点検を行うこと。

【診療に係る事項】

1 診療録

(1) 必要事項の記載が乏しい診療録が認められる。診療録は、保険請求の根拠となるものであり、 診療の都度、必要事項の記載を十分に行うこと。

(2) 複数の医師が一人の患者の診療にあたっている場合は、記録の都度、署名又は記名押印するなどにより、責任の所在を明確にすること。

(3) 診療録を訂正する場合は、塗りつぶして訂正することなく、二本線で抹消して訂正すること。

2 傷病名

(1) 医師は医学的に妥当適切な傷病名を診療録に記載し、レセプトには診療録の傷病名を転記すること。

(2) 傷病名は、急性・慢性、部位、左右の区別を付けること。

(3) 疑い病名については、医学的根拠に基づいたものを付けること。また、疑い病名と確定病名との区別を明確にすること。

(4) 急性病名や疑い病名が長期にわたり継続することは不自然なので、傷病の転帰を適宜記載し、傷病名の整理に努めること。

(5) 実態のない、いわゆるレセプト病名は認められないので、直ちに改善を図ること。

(6) 以下のような不適切な傷病名が付けられている例が認められた。
検査、投薬目的のためにつけられた傷病名
・悪性腫瘍の疑い(前立腺癌)
・胃潰瘍(上部消化管出血)

長期に亘る疑い病名、急性病名(整理の悪い傷病名)
・扁桃腺炎 ・急性上気道炎
・高血圧性緊急症  ・急性気管支炎
・B型肝炎(疑い)  ・イレウス(疑い)
・C型肝炎(疑い)  ・血便(疑い)
・胆石症(疑い)  ・肺結核(疑い)
・慢性肝機能障害

重複して付けている病名
 ・慢性胃炎とびらん性胃炎
  ・慢性肝障害とルポイド肝炎
  ・急性心不全 2つ  ・両側胸水 2つ
  ・下血 2つ  ・腹水 2つ

その他不適切に付けられている病名
・非常に多数の傷病名が付けられている例
・傷病名の記載漏れが認められる例
・急性・慢性、左右の別、部位の記載のない例(気管支炎)
・安易に慢性肝機能障害と付けられている例

3 基本診療料等

(1) 入院診療計画加算について算定要件を満たしていない例が認められる。医師、看護婦等関係職種が共同して患者の診療計画を作成していない例が認められる。

(2) 医師の適切な診察無く投薬、リハビリが行われている例が認められる。

4 指導管理

(1) 算定要件を満たしていない例が認められる。
 ・ 悪性腫瘍特異物質治療管理料
 ・治療計画の診療録への記載が不十分である。

・ 入院栄養食事指導料
 ・特別食の適応がない患者に算定している。

・ 退院指導料
 ・関係職種が共同して退院後の療養計画を作成していない。

・ 特定疾患療養指導料
 ・治療計画の作成及び診療録への指導の要点の記載が不十分である。

5 検査・画像診断

(1) 検査は、自覚症状・他覚所見から必要な検査項目を選択し、段階を踏んで実施することとし、検査項目・回数は、治療方針に的確に反映される範囲内でなければならないこと。

(2) 算定要件(対象、回数、診療録の記載等)が規定されている検査に注意すること。

(3) 以下のような不適切な検査例が認められた。
・検査の重複
・炎症反応を調べるために画一的に併施しているCRP、ESR

・必要性のない、あるいは必要性の乏しい検査
・血液凝固線溶系検査(線維素分解産物測定 FDP)
・感染症検査(HCV抗体価精密測定)

・算定要件を満たさない検査
 ・尿沈査顕微鏡検査(尿中一般物質定性半定量検査もしくは、尿中特殊物質定性定量検査において異常所見が認められた場合、又は、診察の結果から実施の必要があると考える場合以外に算定されている。)
 ・呼吸心拍監視(観察結果の要点の記載のないもの)

6 投薬・注射

(1) 投薬・注射にあたっては、薬事法承認事項を遵守すること。

(2) 治療上1剤で足りる場合には、1剤を投与し、必要があると認められる場合に2剤以上投与すること。

(3) 同一の投薬を漫然と継続することなく、症状の経過や検査結果等に応じて投薬の内容を変更すること。

(4) 抗性物質は、抗菌スペクトルを十分考慮し、適宜薬剤感受性検査を行い、漫然と投与することのないよう注意すること。

(5) 手術後等の感染予防のために抗生物質を投与する場合は、症例毎に適切な抗生物質を選択し、投与すること。

(6) 以下のような不適切な投薬例が認められた。
・禁忌状態等における投与
 ・血液凝固障害のある患者に対するイントラリポスの投与

・適応外投与
・ザンタック注射液が経口摂取可能な患者あるいは、適応症以外の患者に投与
 ・アプレース錠を胃潰瘍、急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期以外の患者に投与
   ・強力ネオミノファーゲンCを薬剤性肝障害等の患者に対して投与
  ・インシュリン製剤(ヒューマリンR 40U)を糖尿病でない患者に対投与

・不適切な抗菌薬等の適応外、過量、多剤併用等投与
・バクタをMRSA肺炎患者に対して投与
・リファジンを結核のない患者に対して投与
・ユナシンS注を適応外の患者に対して投与
・感染予防目的で投与したスルペラゾンの常用量を超える投与
・多剤併用時のスルペラゾンの常用量を超える投与
・術後の感染予防目的でスルペラゾンとアミカシンの併用
・術後の感染予防目的でユナシンS注とフロモックスの併用
・感染予防目的で安易に第三世代、第四世代セフェム系抗生物質を使用
    (フルマリン注)

・その他
  ・院外処方せんの押印が医師によって行われていない等、院外処方せんの取り扱いが不適切な例が認められた。

7 リハビリテーション

(1) 理学療法(II)に相応する専任医師の責務を十分果たすこと。

(2) 訓練の実施計画あるいは、記録について不適切な例が認められる。
・訓練の実施計画の作成、記録が不十分である。
・訓練の開始時刻及び終了時刻の記載が、不適切である。
   ・具体的には、実質的な時刻が記載されていないものがある。
・効果判定が長期間行われていない。
・6ヶ月を超えて理学療法を実施する患者に対して、実施計画の説明の要点が診療録に記載されていない。

8 処置・手術・麻酔

(1) 術後創傷処置を実施した際には、処置した範囲を診療録等に記載しておくこと。

(2) 以下のような不適切に請求された例が認められた。
・術後創傷処置を実施した範囲と異なる点数で請求している例が認められた。

(3) 麻酔管理料について算定要件を満たしていない例が認められた。
・麻酔科標榜医による術前及び術後の診察等に関する記載が不十分なものやないものがある。
・手術記録上、術者が麻酔医を兼務しているものがある。
・手術記録の麻酔医と、麻酔記録上の麻酔医の記録が異なっているものがある。

9 診療に係るその他の事項

(1) 医師の自己診療が認められたので、改めること。


【食事・寝具・設備等に係る事項】

1 食事

(1) 特別食については、医師の発行する食事せんに基づき患者の病状等に応じた適切な食事提供を行うこと。

(2) 入院時食事療養費の算定
・入院時食事療養(I)の算定要件を満たしていない例
・検食簿の記載が不十分なものがある。
・特別食加算
・高血圧症のみで減塩食を提供している患者には、算定不可
・医師が、食事せんを発行していない場合は、算定不可

2 寝具・設備

(1) リネン庫に器具等が混在し、衛生管理上不適切であるので改善すること。

【請求事務等に係る事項】

1 総論的事項

(1) 診療内容のコンピューターへの入力にあたっては、入力内容と各種帳票との突合を適切に行い、入力ミスのないよう万全を期すこと。

(2) 特定保険医療材料の請求については、材料購入部門とレセプトの作成部門との連携を密にし、請求誤りのないよう努めること。

2 診療録

(1) 終了日の記載がないので、留意すること。

3 処置・手術・麻酔等

(1) 同一の診療で行われた星状神経節ブロックと同時に行われたトリガーポイント注射は、算定できないので留意すること。

4 特定保険医療材料等

(1) 請求が実際の購入価格でされていない例が、一部認められた。
・栄養チューブ
・アーガイルメディカットカテーテル

5 一部負担金等

(1) 徴収すべき者から徴収されていない。
 ・病院職員が外来受診の際、一部負担金をその者から徴収していない。

6 届出事項等

(1) 院内等掲示の場所、方法が不適切である。
・院外に診療日、診療時間に関する事項の掲示がない。
・病棟に看護に関する事項の掲示がない。
・病棟に届出(入院時食事療養の特別管理加算)に関する事項の掲示がない。
・受付に保険外負担に関する事項の掲示がない。
・受付に特定療養費に関する事項の掲示がない。

【県医注】指導結果に伴い、18項目について自主返還の措置がとられました。