平成12年3月1日
平成11年度 No.3

目 次

I健康保険法による個別指導の指摘事項について



I健康保険法による個別指導の指摘事項について

 平成11年度に実施された健保個別指導において指摘された項目をまとめました。
古くから指摘され続けている項目もあります。今一度熟読していただき、今後の保険診療の参考にして下さい。

【事務的事項】

(1) 一部負担金について、日計欄の記載が事務担当者によって不十分な例が見受けられたので、適正な事務処理を図るよう留意すること。

(2) 診療録の様式は、保険医療機関及び保険医療養担当規則に基づく様式第1号とすること。

(3) 診療時間等、保険医療機関の届出事項に変更があった場合は、速やかに県保険課に変更届を提出すること。

(4) 患者負担金徴収欄については、受領済の表示を行うとともに月計をした際には請求済等の表示を行い重複請求の防止に努めること。

(5) 患者の支払った金額の領収書は必ず発行すること。

(6) 診療報酬明細書請求後は、請求済診療報酬明細書と符合しなくなるような転帰事由、被保険者証の番号の訂正は行わないこと。

(7) 常勤はもとより、非常勤であっても保険医に異動があった場合は、その都度速やかに県保険課に変更・異動届を提出すること。

【診療録の記載】

(1) 「労務不能に関する意見」欄に記載漏れが散見されたので、必要な事項の記載を的確に行うこと。

(2) 診療録の第1面の記載(終了、転帰の記載)が不十分であるので、必要な事項の記載を徹底すること。

(3) 傷病名が重複して記載されているので留意すること。

(4) 所定欄以外に傷病名が記載されているので留意すること。

(5) 診療根拠が不十分な例が見受けられるので留意すること。

(6) 疑病名が多く、多病化傾向が顕著となっているので留意すること。

(7) 症状経過の記載が不十分な例が見受けられる。また、診療録の更新時に主要な症状、経過所見等の転記がなされていないので留意すること。

(8) 悪性腫瘍特異物質治療管理料の治療計画、在宅成分栄養経管栄養法指導管理料の指導根拠、指示事項、呼吸心拍監視の監視記録の要点は、更に詳細に記載するよう留意すること。

(9) 特定疾患療養指導料は、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の指導を行った要点を、更に具体的に記載するよう留意すること。

(10)診療録の記載内容に判読困難な例が見受けられたので、診療録は、保険請求の根拠であることを認識し、誤請求を招くことにもなるので、第三者にも判読出来るよう丁寧に記載すること。

(11)同一の患者を複数の医師が診察した時に、担当医の記載がないので、責任の所在を明確にするため、診療を行った医師がその都度、記名を行うこと。

(12)特定疾患療養指導料、老人慢性疾患生活指導料は、主病に対し服薬、運動、栄養、日常生活、その他療養上必要な指導を行い、要点を診療録に記載した場合に算定できることになっている。指導の要点の記載が不十分な例が散見されたので、もう少し詳細に要点を記載すること。

(13)診療録への記載は、ペン等を使用し、訂正する場合は修正液等を用いず、二本線で訂正すること。

(14)受給資格の確認は、初診時のほか、毎月の初回初診時には必ず行い、その証として所定欄に記録すること。

(15)老人薬剤情報提供料については、薬剤情報提供した旨を診療録に記載した場合に算定できるので、留意すること。

(16)保険の種類が変わったにも関わらず(継続療養)、非該当の傷病名が記載されていたので留意すること。

(17)糖尿病と糖尿病性腎症等、病名が同時に記載されている。

(18)傷病名の記載について、肝炎(慢性)、胃炎(慢性)の記載を慢性肝炎、慢性胃炎に改めるとともに、(難症)の病名は不要であるので記載しないこと。

(19)「診療の点数等」欄に、再診料と外来管理加算料とが区別なく記載されていたので留意すること。

(20)慢性疾患の経過を「変わりなし」との簡単な記載ではなく、治療による症状、検査の変化の要点の記載をすること。

(21)傷病名の「終了年月日」及び「転帰」欄の記載漏れが散見されるので、その都度、整理をすること。

(22)外傷性疾患については、業務災害、通勤災害、第三者行為等、負傷の原因を詳細に聴取し、初診時所見欄の記載を充実することともに、保険給付の適正化に留意すること。

(23)理学療法については、実施した時間を記載するのではなく、開始時刻と終了時刻を記載すること。

(24)診療点数の月計が作成されていないので、各月毎に集計し、診療報酬の請求時には、レセプトとの突合を必ず行うこと。

(25)レセプト請求点数と、診療録の診療点数の相違しているものが多数見受けられた。診療報酬に訂正があったときは、診療録の診療点数を訂正し、レセプト作成を行うこと。

(26)薬剤名を略語で記載しないこと。

(27)レセプト病名で保険請求しないこと。

(28)算定要件を満たしていない時間外加算が算定されていたので留意すること。

(29)前病名の中止日に初診料の算定があったので留意すること。

(30)傷病名に部位(左右別)の記載がない例が見受けられたので留意すること。

(31)眼底検査、生体染色検査等を実施した場合に、所見の記載のないものが見受けられたので留意すること。

(32)症状経過の記載において、全体的に記載が簡略されている傾向が見受けられた。特に、入院精神療法(I)に係る記載については、患者の症状、所見等詳細な記載について留意すること。

(33)傷病手当金の意見書を交付した場合は、診療録の所定欄にその旨記載するよう留意すること。

【診療内容】

(1) 長期漫然と注射回数の多い例が見受けられたので留意すること。

(2) 過剰な検査が見受けられたので留意すること。

(3) 適応外投与の院外処方せんが発行されていたので、薬事法承認事項を守り、適正な処方せんの発行に留意すること。(背部白鮮性肉芽腫瘍にジフルカン内服薬の使用)

(4) 同一患者に対し、同一内容の院外処方せんの発行回数が多いものが見受けられたので、療養担当規則等を守り、適正な処方せんの発行に留意すること。

(5) 画一的又は必要性の乏しい検査が実施されていた例が見受けられたので、セット検査を見直し、必要な検査のみ実施すること。(例、CPK検査)

(6) 抗生物質の長期投与が必要な例では、菌の検査、炎症反応などの客観的な指標も参考にすることが望ましいこと。

(7) 適用外投与が見受けられたので留意すること。(メダバスカプセル)

(8) 頓服は1日2回を限度として臨時的に投与するものをいい、1日2回以上にわたり時間的、量的に一定の方針である場合は内服薬とするものである。頓服を頻回に投与して、その都度の処方せん料の算定は認められないので留意すること。

(9) 内服薬は、1回14日分を限度とし、厚生大臣の定める内服薬及び厚生大臣の定める疾患に罹患している者については30日を限度とするが、陳旧性の疾患の患者に際して7日分ずつの投与で処方せん料5回を算定している例が見受けられたので十分留意すること。

(10)高脂血症における生化学検査は、検査結果が正常域値ならば、3か月に1回程度とすること。

(11)抗生剤が注射と投薬の併用で長期に投与されている例が見受けられたので、疾患により対応するよう留意すること。(ブロアクト静注1gとフロモックス内服)

(12)傷病名に適応しない検査が実施されている例が見受けられたので留意すること。(リウマチ因子スクリーニング検査)

(13)トリガーポイント注射の頻回な実施が見受けられたが、急性期、陳旧性を考慮した医学的判断に基づき実施するよう留意すること。

(14)局所麻酔による手術において、手術前医学管理料が算定されている例が見受けられたので留意すること。

(15)検査、投薬等に過剰傾向があるので、患者の症状に応じた適正量等に再考すること。

(16)薬剤の処方については、日本医薬品集等を参考とし、用法・用量に留意すること。

(17)検体検査判断料については、月1回の算定とし、初回の検査を実施する日に算定すること。

(18)静注注射と点滴注射が同一日に施行されたと誤解を受ける例があったので留意すること。

(19)プロトンポンプ阻害薬の使用に際しては、画像診断などを優先して実施してから行うこと。また、病院からの依頼があった場合は、そのコメントを記入すること。

(20)手術をした場合は、左右の別を明記すること。

(21)薬剤は定められた用法・用量により投薬を行うこと。長期投与が認められていない内服薬は1回14日分、外用薬は1回7日分を限度として投与すること。

(22)トリガーポイント注射は圧痛点に薬剤を注射する手技であり、施行した回数及び部位にかかわらず1日につき1回算定できるとなっているので留意すること。

(23)超音波検査で必要性の乏しいものや、回数の多いものが見受けられたので、必要性を確認して実施するよう留意すること。

(24)疑病名で初回からHCV抗体価精密検査は認められないので留意すること。

(25)適応症がない不要な検査は認められないので留意すること。

【診療報酬請求】

(1) レセプトと診療録の傷病名の不一致が見受けられたので、レセプトの点検を十分に行う等の改善を図ること。

(2) 特定疾患療養指導料、老人慢性疾患生活指導料は、その指導を行った要点を診療録に記載した場合に算定して請求すること。

(3) 老人慢性疾患外来総合診療料の届出保険医療機関における外来総合診療料の算定については、個々の老人慢性疾患患者について、外来総合診療料を算定するか否かを選択することはできないので留意すること。

(4) 特定疾患療養指導料は、厚生大臣が定める疾患を主病とする患者に対して指導を行った場合に算定できるものであるので、請求にあたり留意すること。

(5) 一部負担金の徴収について、計算誤りが散見されたので適正に徴収するよう留意すること。

(6) 特定疾患処方管理加算の算定漏れが散見された。

(7) 特定疾患療養指導料、老人慢性疾患生活指導料の算定漏れが散見された。

(8) 従業員等で一部負担金を徴収していない例が見受けられたので改善を図ること。

(9) 一部負担金の徴収について、退職被保険者の負担率20%を30%で徴収している例が見受けられたので改善を図ること。

(10)診療報酬明細書に症状の注釈書きが多過ぎるので、注釈が必要な場合のみ記載すること。

(11)診療録には継続中の傷病名が、診療等がなかった月は診療報酬明細書に記載されていない例が見受けられたので、診療等の有無にかかわらず継続中の傷病名については記載すること。

(12)患者の一部負担金の算定について、端数処理の計算誤りが見受けられたので適正処理に留意すること。

(13)小児特定疾患カウンセリング料について、診療録に診療計画及び指導内容の要点等、カウンセリングに係る概要をより詳細に記載すること。

(14)未収の一部負担金については、随時納入督励を行い、徴収した場合はその旨を所定欄に記載すること。

(15)診療録では治癒となっている傷病名が診療報酬明細書に散見されるので、診療報酬明細書の点検を十分に行い、医師の確認後、請求するよう改善を図ること。

(16)診療報酬明細書と診療録の被保険者証の番号の不一致例が見受けられたので、診療報酬明細書の点検を十分に行い、医師の確認後、請求するよう改善を図ること。

(17)外来管理加算は、別に厚生大臣が定める検査並びに麻酔等を行わず計画的な医学管理を行った場合に算定出来るものであり、神経ブロックの項のトリガーポイント注射がある場合は算定できないので留意すること。

(18)支払基金、国保連合会からの返戻、査定分は内容を十分精査し、以後の診療やレセプト請求に反映させるなどその活用に役立てること。

(19)保険医療機関でない診療所で撮影された画像診断は保険給付の対象外である。

(20)入院診療計画書の作成にあたっては、医師、看護婦等が共同して診療計画を策定することとなっていることから、計画書各欄の記載については、共同して診療計画を策定した者が記載するよう留意すること。

(21)入院時スクリーニングとしてHCV抗体検査が傾向的に実施されていると見受けられたので、医学的判断に基づき実施するよう留意すること。