平成11年11月1日
平成11年度 No.2

目次

生保個別指導における指摘事項
社会保障部常任委員会における地区医師会提出議題について




生保個別指導における指摘事項

 去る7月8日、鳥取県医師会館において「平成11年度生活保護法による指定医療機関の個別指導実施計画打合会」が開催されました。その席上、平成10年度の個別指導実施結果に係る指摘事項の概要について福祉保健課の嘱託医から説明がありました。 その概要をお知らせしますので、日常診療の参考にして下さい。


平成10年度生活保護法による指定医療機関の個別指導
実施結果に係る福祉保健課嘱託医の概要説明要旨

鳥取県福祉保健部福祉保健課

1 一般科の医療機関について
 平成10年度においては、一般病院8施設、一般・精神病院2施設の計10医療機関で個別指導を実施しました。その結果、「診療録の記載状況」及び「診療報酬の請求内容」について、次のような事例が見受けられました。

(1)「診療録の記載状況」について
   ア 病名が多く、病名整理を要する事例
   イ 診療開始日が古いのに疑いがとれていない事例
   ウ 鉛筆によって記載されている事例
   エ 所見、症状経過に記載不備のある事例
   オ カルテのぺージが変わった場合に処方内容が省略され、改めて記載されていない事例
   カ リハビリの要件に記載不備のある事例
   キ 入院時の主訴、現病歴に記載不備のある事例
(2)「診療報酬の請求内容」について
   ア 診療録とレセプトとの病名が一致していない事例
   イ 診療録及びレセプトに適応病名のない投薬がある事例

2 精神科の医療機関について
 平成10年度においては、一般病院の精神科2施設と精神病院4施設の計6精神科医療機関で個別指導を実施しました。その結果、各病院とも特に大きな問題は認められませんでしたが、次のような点について関係機関の方々に引き続きご理解とご協力を賜りたいと思います。

(1)生活保護制度の趣旨を理解した保険診療について
 精神保健福祉法第32条の通院医療費公費負担制度の適用が妥当と思われる症例で、申請がされていない事例が6件ありました。いずれも一般病院の精神科であり、全体としては、減ってきている傾向にありますが、通院早期からの申請についてよろしくお願いします。

(2)適正な診療報酬請求について
 通院精神療法の要点の記載がなされていない事例がありました。要点の記載が点数算定の要件となっておりますので、必ず記載して下さい。
 入院精神療法が算定されている患者の診療録の記載で、身体面のみに終始し、精神面や精神面と関係の深い生活面の記載が欠けている事例がありました。入院精神療法は、「精神面から効果ある心理的影響を与えること」が意図されている必要があるとご理解下さい。

(3)診療録の記載について
 診療録及びレセプトに適応病名のない投薬や実施された検査に適応する病名が見当たらない事例、身体的な検査が過去1年間実施されていない事例、長期にわたって電話再診が続き、本人受診も往診もない事例がありましたので、ご注意下さい。

(参考)平成10年度生活保護法による指定医療機関個別指導の実施状況
 13施設実施 病院  13施設(一般 8/精神 4/一般・精神 1)
          診療所 0施設


社会保障部常任委員会における地区医師会提出議題について

 去る10月14日開催されました社会保障部常任委員会において、地区医師会より提出された議題に対し、委員の先生より出された意見をもとに、編者の意見をまとめてみます。日常診療の参考にして頂ければと思います。

(1)問答無用の減点でなく、1回は返戻をお願いしたい。

検査は7~8割は返戻としているが、薬は返戻が少ない、との審査委員の先生のお話しであった。返戻は、お情けで救ってもらったようなもので、病名と一致しないものは査定される覚悟で、レセプト提出前の点検を十分に行うことが大切でしょう。

(2)脂質検査について、T-chol HDL-chol LDL-chol のうち、LDL-chol がよく査定される。

LDL-cholは、T-chol、HDL-chol、TGを測定していれば計算によって求めることもできる故、ルーチンに測定するのはどうか、とか、T-cholとLDL-cholを同時に測定するのもどうか、などの意見があった。

(3)保険指導について、対話と相談のムードが欲しい。

特に意見は出ず。指導に当たられる審査委員の先生には、会員の希望として受け止めて頂きたい。

(4)糖尿病と高コレステロール血症で加療中(インスリン使用)の患者で、左肩甲部ないし前胸部に不快感あり、EKG検査施行。 150点の査定あり。上記診断名の他に症状の詳記が必要でしょうか。
糖尿病と高コレステロール血症の病名で、冠状動脈の状態を見るため、年1~2回の検査は不可でしょうか。

このような症状があってEKGをとったのなら病名をつけるべきではないか、との意見であった。後者の質問に対しては、高脂血症の病名のみでEKGを認めるかどうか、という点で各県の実情を調べたデータによれば、24県で“認めている”、18県で“認めていない”、5県で“決めていない”との現状が紹介された。

(5)薬は、適応病名が全てで、薬効は全く無視されるのか。

ある程度、薬効を加味して柔軟に対処しておられる先生と、適応病名だけで審査すべきものと考えていた、との先生とがあった。この点に関しては“審査”をテーマとして開催された都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会で、“医師の裁量権を認める審査をすべき”との日医の意見が示されています。(県医師会報第532号=平成11年10月号=に掲載)

(6)同じ理由で多数例の査定の場合、連名再審査請求書は駄目か。

本県の場合、駄目である。保険者がそれぞれ別であるので、それぞれ別々に出すべきである、とのことであった。他県で“可”のところがあるらしく、照会してみることとなった。

(7)ニューメディア電話再診は駄目か。

FAXやEメールを使った場合の再診は電話再診として算定できるか、との質問であるが、結論としては“算定できない”とのことであった。前例が無いことがその理由のようであるが、他県でも同様に“算定できない”らしい。

(8)尿沈渣の施行には、尿路系疾患病名の記載が必須か。

検尿はルーチン検査であり、蛋白や潜血が陽性なら沈渣が必要であることより、病名が無くても認めて欲しいものであるが、病名を記載した方が無難、とのことであった。

(9骨塩測定には、前回の検査日の記載が求められている。数年前に測定し、1年以上の受診中断があった患者では、初診前の検査日を記載せざるを得ないが、このようなケースの正しい取り扱いはいかがか。

ここまで正直者である必要は無く、初診とすれば何ら問題ない、とのことであった。

(10)厳重な審査となると、従来レセプト病名として蔑まれた病名を活用せざるを得なくなるが、お考えを伺いたい。

病名が多くなると重複病名があったりすることが多い、との指摘があった。適応病名で厳重な審査となると病名が多くならざるを得ないが、保険診療である以上、ある程度仕方ないと言えよう。とはいえ、医師の裁量権を認める審査を期待したい。