Joy!しろうさぎ通信『コロナ禍かかりつけ医外来報告』

鳥取市 野の花診療所 徳永志保

 私の外来の仕事は、慢性疾患の経過観察、発熱や腹痛など急な症状の対応と必要に応じた病院へ
の紹介、検診、ワクチン、かかりつけ医と言われる役割です。診るべき疾患は幅広く、さまざまな分野
での知識を必要とされ、送るべき人を送るべき場所へ送る大変さ、責任の重い仕事だと日々実感してい
ます。そこへコロナ問題が発生し、①コロナワクチン体制の構築②コロナを念頭に置いた診療が必要に
なりました。

①コロナワクチン体制の構築
 次々変わるワクチン対応に苦労していますが、今回は割愛いたします。

②コロナを念頭に置いた診療
 当院ではいつもと違う症状がある方は感染対策の対象としています。通院中の方には「症状がある時
は、まず電話をして下さい」と案内を配り、それでも来てしまった方のために「中に入らないでここか
ら電話して下さい」と張り紙をしています。事前に電話さえもらえれば、あまり問題は起こりません。
電話問診→指定時間に外で抗原検査→陽性ならコロナ陽性者としての対応、薬局と連携し事前に薬も用
意できます。しかし、実際はそう簡単にはいきません。

○82歳女性。めまい。直接来院されたので別室に案内すると、「なぜこんなところに入れられるのか、
私はコロナじゃない」と憤慨。

○85歳男性。一人暮らし。「だんだんと力が落ちて、数日前から立てなくなった」と本人からケアマネに
SOSがあり、ケアマネが受付まで連れてきた。当院初めて。発熱なし。自宅に一人帰すのは危うい感じ、
入院できる病気がないかと撮影したCTで多発する広範な肺炎像を認めた。CT室でそっと行ったコロナ抗
原検査は陰性で胸を撫で下ろす。病院紹介し、細菌性急性肺炎として入院となる。

○92歳男性。「夜中に足が立たなくなったので、タクシーで向かわせました」同居の長男からの電話はす
ぐ切れ、状況把握不十分。個室待機中に、長男から2回目の電話「自分はコロナで療養中だけど、親父は
大丈夫でしょうか」。コロナ抗原検査陽性。

○89歳男性。特定健診の予約時間通りに来院。待ち時間に「喉が痛いけえ、ついでにその薬ももらおうか」
と。健診を中止し一旦帰宅してもらい、指定の時間に行ったコロナ抗原検査陽性。

○70歳女性。混雑する外来時間に直接来院、「ちょっと喉が痛いだけ」と受付で訴える。外来の合間に外
で行ったコロナ抗原検査陽性。結果を説明し、帰宅されたと思っていたら、院内で発見。「トイレに行き
たい」と。家まで我慢しろと言えず、慌ててトイレに押し込め、その間に他の患者さんの誘導、換気、消
毒、トイレはしばらく使用禁止へ。

○84歳男性。37.6℃、咽頭痛、咳。事前の電話あり「近いから歩いて行きます」声は元気そう。約束の時間
に外で待機していると、ふらつき倒れ込みそうになっているのを発見。「思うように歩けなかった」と。コ
ロナ抗原検査陽性。帰りは車椅子で送る。

○90歳男性。発熱のみ。かかりつけが発熱外来をしていないので、と施設Nsから電話相談あり。外でのコロ
ナ抗原検査陰性、解熱剤のみ処方し触診せず。2日後、微熱が続き食欲がないと電話あり、病院に丸投げ紹
介すると虫垂炎と判明。

○高度認知症のある71歳男性。38.9℃の発熱があり電話相談あるも、休日だったため抗生剤と解熱剤の処方
のみ行う。翌日電話すると昨日より良い、血尿かもしれないと。腎盂腎炎なら改善するかと診察や検査せず。
3日目37.7℃、動きが悪いとの報告あり、来院してもらう。コロナ抗原検査陰性、CT撮影すると胆嚢炎の所
見。緊急手術となった。

 高齢者が多い外来での感染対策に試行錯誤の毎日です。マスクは最近になってようやく定着しました。暑
くても、寒くても、窓を開け、換気を心がけます。根気強く、調子が悪い時は電話してと伝えます。電話さ
えあれば、時間をずらし、空間を分け、防護体制を整えられるのですが、これが今一番の難題です。
 体調が悪い人の診療に悪戦苦闘しています。これまで当たり前だった対面診察を避け、『とりあえず今日
は電話診察』となりがちです。距離を取るために触診やバイタル測定、検査を省略し、診断が遅れる事もあ
るし、検討不十分なまま病院に丸投げ紹介してしまう事もあり、申し訳なく思っています。今後の課題です。
 毎日外来でヒヤヒヤ、ドキドキ、ガックリしています。以上、外来報告でした。