Joy!しろうさぎ通信『卒業してから30年越え、少しの振り返り』
倉吉市 レディースクリニックひまわり小笹産婦人科 小笹貴子
先生方には日ごろから大変お世話になっております。倉吉市内の産婦人科クリニックで診療をし
ています。気が付けば卒後30年以上になり、院長である夫が現クリニックを始めてからは25年にな
ります。開所当時行っていた妊婦検診等の母体保護に関する業務は現在行っていない為、昨今の受
診者は自然と更年期老年期の方が多めです。スタッフ含め同年代のお悩みを実感できること、或い
はこれからの自分達に起こりうることとして関われることにささやかな幸せを感じつつ診療してい
ます。
さてこの度はいつもお世話になっている濱吉先生からお話を受け、今の女性医師の生活に何か参
考にしていただけそうなことがあるだろうか…と、昔の記憶を頼りに思い出してみています。日々
過ごすのが精一杯だった頃のことはあまり参考にならないように思いますが、周りに沢山お世話に
なりながら子育てしていた頃などを振り返ってみます。
二人目妊娠以降退職していた私は、クリニックが始まった頃は近くで健診等のアルバイト的な仕
事を主にさせてもらっていました。小学校入学前の長子続いて5歳2歳の子ども達と、比較的のん
びりした日常を送ってきた中、開業で日々診療に関わるようになりました。私は家のこと優先、仕
事は時間を区切って…という関わりのはずで始まりましたが、ワークライフバランスという言葉を
知らなかった頃、実際に仕事に入ってから時間が来たのでここまで…と切り替えることは非常に難
しく、任されていることへの気負いもあり、仕事は何とかやっていけたものの(とはいえ、院長は
じめスタッフのカバー、紹介先の先生のご理解も大きかったと思います)家のことは段々大変な状
態になっていました。子どもの延長保育終了間際での迎えは日常茶飯事、知り合いの伝手で紹介し
てもらった方に頼んで家に入って頂けるようになるまでは、未処理のものは見ないことにして今日
一日無事だったことだけに安心するような状態が続いていました。子どもや家族の我慢や半ば諦め、
子どもに関わる方々の助けもあって何とかやっていけたと思います。子どもが夏の下校途中に乾い
た喉を潤してもらったご縁から、まるで親戚のように付き合っていってくださった理容店の方、朝
の行き渋りに登校に誘ってくれた同級生や迎えにまで来てくださった先生方、窮状を引き受けてく
ださったご近所の方等々、親が探した縁ばかりでなく、子ども自身が見つけた縁も大切に考えてく
ださる周囲のお蔭で、どうにか育っていったなぁと、懐かしく思います。
開業の頃に産婦人科専門医に筆記試験導入が始まり、遅ればせながら受けた試験の準備ができた
のもサポートあってのお蔭でした。診療の傍ら大学病院に通い、指導医の先生にもお世話になりま
した。同じ時期から大きな学術集会は託児付で開催されるようになり、受付で子どもと参加手続き
する医師の姿を多く目にするようになりました。夏休みの子ども達を連れ参加した際には、年齢ご
とに考えられた小旅行体験プログラムや、その中の思い出の写真で写真立てを作って夏休みの工作
課題を済ませるものもあり、主催された方々の工夫に感謝、感激したことを覚えています。
クリニック始まった当時は近隣の婦人科開業医の中での最年少でしたが、子育て期を過ぎ、今や
年長1、2を夫と競っています。二人ともあちこち綻びが出てきました。健康なつもりだった私も
コロナ禍の頃に見つかった病気で初めて患者として大学病院にお世話になりました。先輩や知り合
いの先生方にも相談し教えて頂きながら治療を始め、不安や迷いを持つ患者さんの気持ちに以前よ
り近づけるようになったように思います。医療従事者の手を治療で煩わせてしまっていることに罪
悪感を持つ一方、今の万全の副作用対策の効果に感動しました。ポリクリや新米医師の頃に担当し
た、副作用で辛そうだった患者さん達を思い出し、そういった方一人一人のデータの積み重ねのお
蔭で今があることを思いました。
自分の経験やデータも、いつか次の方々に役立つことがあるかもしれません。医療DXの波の端で
右往左往しながらですが、一緒に子育てをしてくださった所に、今は今のできる形でお返ししてい
きたいと思っています。