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第26回 勤改センター通信「コロナの影響で業績悪化、賃金の引き下げや賞与不支給は可能か?」

新型コロナウイルスの影響が長引く中、病院勤務の医療従事者が賞与を削られるといった報道がされていました。現実に多くの医療機関が昨夏より賞与を引き下げると回答しており、それに伴いストライキに踏み切る医療従事者も現れ、待遇悪化による離職者の続出が懸念される事態となっています。

そこで賃金の引き下げや賞与の減額(不支給)は法的に可能かという問題が出てきます。今回は、この件について取り上げてみたいと思います。

そもそも、賃金は、労働の提供があれば必ず支給されるもので、支給金額は労働契約で決まっていますので、契約上の金額を下回ることは許されないというのが大前提です。したがって、雇い主側が賃金を下げる場合は、労働者の自由意思による同意がなければならず、同意なしの賃金引下げは違法性が高くなります。

労使の交渉においては、雇い主側が有利になりやすいところから、労働者の自由な意思が尊重されなければなりません。賃金引下げでなによりも重要なのは、賃金引下げの必要性、引き下げられた賃金の水準・内容、代償措置などです。雇い主側は、労働者に対し、これらの情報を総合的に情報提供したうえで交渉しているのかどうかがポイントになります。つまり、労働者が一方的に不利にならないような賃金引き下げ交渉が行われたかどうかということです。

それでは賞与を会社の業績悪化などを理由に減額または不支給とすることは可能なのでしょうか。これについては、就業規則等での定め方によると言えます。たとえば「賞与は会社の業績および従業員の業務評価等を考慮して支給する場合がある」といった定め方をしている場合は業績悪化による減額や不支給も可能と言えます。しかしより具体的に「賞与は基本給の3ヶ月分を支給する」といった断定的な定め方をしていた場合には就業規則の変更などをしなければ、業績が悪化していても支給する義務が生じるものと考えられます。

賞与を支払うことは法的には義務付けられておらず、原則として会社(雇用主側)の任意となりますが、就業規則の定め方によっては自動的に支払い義務が発生する場合もありますので、今一度就業規則を見直しておくことが重要であると思います。ただし、賞与を減額または不支給せざるを得ない場合は、賃金引き下げと同様に、労使の交渉が必要となります。

(今回の担当:医療労務管理アドバイザー 田中 伸一 社会保険労務士)

 

▶鳥取県医師会報2020年8月号(No.782)掲載記事はこちら