健康なんでも相談室

PSAの上下変化

回答者:  鳥取県東部医師会会員 大畠 領

 

質問

 75歳男性です。PSAが人間ドックで一昨年3月に1.71だったのが昨年3月に4.46になり、すぐ泌尿器科のクリニックに行った所、2.49に下がっていて癌ではなく前立腺肥大と言われました。6ヶ月後の検査で2.23、さらに今年の3月のドックでも2.31と正常でした。ところが今回5.49で癌の疑いがあるので4ヶ月後に再検査しPSAが上がっていたら生検と言われました。たった7ヶ月で2倍以上になったとは、こんなに上昇下降が激しいものでしょうか?

癌ではないと言ったのに1年位で癌の疑いがあるとは、前立腺癌がそんなに急に現れるものでしょうか?



回答

 前立腺癌とPSA

 

 前立腺癌は近年最も増加している癌の一つで、2020年頃には日本人男性の罹患率1位になるとの予想すらあります。PSAは早期診断に役立ちますが、時に振り回されることもあります。PSAは和訳を前立腺特異抗原という前立腺から分泌される蛋白で、精液中に多く含まれ受精に必要なものです。他臓器の異常では変化せず前立腺の異常に反応して血液中に増加します。その異常は癌であったり、炎症であったり、物理的な刺激などであり癌でのみ上昇するわけではありません。射精や長時間の自転車でもPSAは変動すると言われています。ですので癌であってもそうでなくても7ヶ月で倍になることもそれ以上になることもあり得ます。

またPSAの基準値は4.0がよく用いられますが、実際には4.0未満でも癌が発見される可能性は10%ほどあります。PSAが4から10では30%程度の癌検出率と言われています。4を超えたら癌であるというわけでもありません。

以上のようにPSAの値だけで診断はできません。そのためPSAの推移や年齢、前立腺の大きさなども考慮してMRIや生検などの精密検査の必要性が判断されます。