健康なんでも相談室

認知症治療薬の効果

回答者:  鳥取県東部医師会会員 渡辺 憲

質問

 72歳の母です。昨年秋より物忘れが目立ち、アルツハイマー型認知症(以下、DAT)の初期と診断され、セカンドオピニオンで専門医を受診したところ、軽度認知障害(以下、MCI)の診断でした。12月よりドネペジル(一般名)3㎎、1月より5㎎を服用しましたが、徐々に悪化しているようです。日常生活はできていますが、午前中やったことを忘れてまた同じことをやろうとしたり、昨日話したことを忘れたりするようになりました。ドネペジルで物忘れが悪化することはありますか? 泣くことが少し多くなりましたが、精神的には普段は安定しています。この場合薬を変更した方が良いでしょうか? 遺伝子治療やiPS細胞などでDATは将来完治出来る病気になるでしょうか?

 

 

回答

 今の治療を継続の方向で

 お母様の最近のご様子について大変ご心配のことと存じます。まず、病状としては、認知機能の衰えがあるが日常生活には支障が出ていないMCIのレベルから、認知症の症状が少しずつ目立ってきている時期と思われます。したがって、認知機能改善薬であるドネペジルの服用は有用と考えます。ただし、これらの薬は、病状の進行を完全に止める働きまではもっておりませんので、服薬を続けていても徐々に病状が進むことはあります。もちろんドネペジルで記憶力が低下することはありません。また、意思を明確に表現されるようになってやや怒りっぽく見える方が時におられますが、明らかな情緒不安定さにつながることもありません。同効の他の薬剤(ガランタミン等)を試みるかどうかについては、主治医の先生とよくご相談下さい。

DATの根治療法については、現在はまだ完成しておりませんが、いくつかの有望な治療法について研究が進んでいます。将来必ず克服できる病気と思います。