健康なんでも相談室

高血圧はサイレント・キラー

回答者:  鳥取県西部医師会員 面谷博紀

質問

 80歳台の叔母についての相談です。収縮期血圧が時に200mmHgを超えるような高血圧があり、病院に行くよう勧めますが病院嫌いで行こうとしません。特に体に不調を感じていなければ、お薬を服用しなくてもよいのでしょうか?

 

 

回答

 自覚症状がなくても治療を

 

 最近の統計によると、本邦の高血圧有病者数は約4300万人と推計されています。今後、人口の高齢化に伴い高血圧患者数はさらに増加することが予想されます。一方、平成26年度の厚生労働省のデータによると、通院している高血圧患者数は約1010万人といわれており、治療を受けていない方も多いことが推測されます。高血圧は、脳出血や脳梗塞、クモ膜下出血などの脳卒中や、狭心症、心筋梗塞、心不全などの心臓病、腎硬化症といった腎臓病の発症にかかわる大きな原因であることが知られており、高血圧に起因して亡くなられる方は年間約10万人にのぼると推定されています。 通常、血圧が高くても自覚症状はありませんが、日頃お元気な方でもひとたび脳卒中が発症すれば、それをきっかけに寝たきりになり、健康寿命を縮める大きな要因となります。命を失うことも稀ではありません。高血圧が“サイレント・キラー(静かなる殺人者)”といわれる所以です。 一般的に140/90mmHg以上の血圧レベルが治療の対象となります。減塩、運動、減量などの生活習慣の是正がまず大切ですが、降圧が不十分であれば薬物療法を考慮することとなります。75歳以上の高齢者の降圧目標は150/90mmHg未満、状況を見ながら140/90mmHg未満を目指すことで高血圧の合併症を抑制できると考えられますが、高齢になると血圧低下が内臓の働きに悪影響を及ぼし、また転倒・骨折の危険性を高める可能性もあるため、慎重に降圧を図る必要があります。 ご相談の方の血圧は非常に高く、高血圧の合併症を引き起こす高いリスクがあると考えられます。できるだけすみやかに受診されるよう、根気強く説得していただければと思います。